膝枕
大学入学後、買い物から柚子葉が帰ってくると深夜は・・・
Change The Relation 深夜×柚子葉
深夜と柚子葉が大学に入学して数週間がたった。
今日柚子葉は、大学でできた友人と共に街に買い物に来ている。
この友人は大学入学を機にこの街にやってきたのだ。
柚子葉が普段買い物で使っている店を紹介してほしいということで、今日は街に繰り出した。
彼氏である深夜は今日は家で新作の小説を読んでいるはずだ。
買い物も終わり友人と別れ柚子葉は一人家路についた。
そういえば…せっかく街に出たのだし何か深夜も欲しいものがあるかもしれない。
とりあえず深夜にメールをして、どこかで時間を潰そう。
『今日何か欲しいものある?』
メールを出した柚子葉は近くにあった喫茶店に入り、時間を潰すことにした。
いつも早めに深夜は返信をしてくるが、30分待っても今日は返信がなかった。
気付いていないのだろう、だけどこれ以上待っていると帰るのも遅くなってしまう。
柚子葉は返信を待つのを諦めて、家に帰ることにした。
途中でスーパーにも寄り夕飯の買い物を済ませマンションへの道を歩く。
だが、その間にも深夜からメールの返信がないので、やはりメールに気付いていないのだろう。
高校卒業と共に深夜からもらった合いカギを手に取り、オートロックのエントランスを通り抜ける。
エレベータを降り、部屋へと向かう途中に街を見ると夕日に照らされオレンジ色になり始めていた。
玄関のドアを開けると深夜の靴があるので部屋の中にいることは間違いないだろう。
「ただいま~」
声を出してみるが深夜からの返答はない。
音楽でも聞いているのだろうか…。
さらにリビングにも続くドアを開ける。
カーテンが風にゆっくりと揺れていて、その前のソファには横になっている深夜の姿が見えた。
机の上に買った袋を置きゆっくりと深夜に近づくと寝息が聞こえる。
深夜の姿を改めてみると、お腹の上には読みかけを思われる小説がありそれがゆっくりと上下している。
やはり眠っているようだ。深夜が頭を置いている近くに座り、その寝顔を覗きこむ。
少しあいた口からは規則正しい寝息が零れ、開けっぱなしの窓から入ってくる風に少し伸びた髪がゆっくりと揺れる。
深夜の顔をじっと見ていた柚子葉は数秒考えると深夜の頭を起こさないようにゆっくりと持ち上げる。
そして、少しだけ横にずれると深夜の頭を自分の膝の上に置く。
「ん…」
深夜の口から声が零れる。
起こしてしまったかと思ったが、まだ深夜は寝ているようだ。
「膝枕…初めてしたなぁ」
自分の膝の上にある深夜の寝顔を見ながら呟く。
深夜と付き合いだしてもうすぐ二年になる。だけど、思い返してみても膝枕をしたのは初めてだ。
一度…偶然に深夜の頭が自分の膝に乗ったことはあった。だけど、まだ付き合いだして間もなくて…驚いて膝を引いてしまった。
その後…初めて深夜とキスをしたんだっけ。
その時を思い出してしまい柚子葉の顔が少し赤くなる。
自分の膝の上の深夜の顔を見て、ゆっくりと寝息が零れる唇に自分の唇をそっと近付ける。
数秒触れてから離れると深夜の目がバチッと開いているではないか。
「…随分と積極的だな」
「なっ…、起きてたの?」
「柚子が俺を膝枕したときからな。帰ってきたのは気付かなかった」
深夜に起き上がる気配は一向にない。
「…ねぇ、深夜。起きたなら膝から頭上げてくれない?」
「ん~、せっかくだしもうちょい」
「せっかくってなに…」
「いや、俺も初めて膝枕してもらったけど結構気持ちいいんだよ。悪いんだけど、もう少し」
「もう…」
深夜の言葉に柚子葉はふぅ~と一つ溜息をついて頷く。
すると深夜も笑顔になってまた目を瞑る。
手持無沙汰になった柚子葉は笑顔で目を瞑っている深夜の頭をゆっくりと撫でる。
深夜はうっすら目を開け、柚子葉に分からないように顔を見る。
何と言って表現すればいいのか分からないが、穏やかな顔を柚子葉がしている。
こういった顔を見るのは初めてだ。この顔を初めて見るが、自分も何だか穏やかな気持ちになってくる。
そして、頭を撫でられているが、これも気持ち良くて何だかまたウトウトしてきてしまう。
頭を撫でていた柚子葉がふと気付くとまた深夜の口から穏やかな寝息が聞こえて来た。
クスッと笑い、柚子葉は呟く。
「おやすみ…、深夜」
また深夜が目を覚ますまで柚子葉はずっと深夜の頭を撫でていた。




