幸せな時間
同棲を始めて数日後の朝の出来事
春の陽気に包まれたある日。
深夜が朝、目が覚めると驚いてしまった。
数秒考えて、苦笑いを浮かべた。
「まだ慣れねぇ…」
深夜が驚いた理由は一つ。
深夜の隣に柚子葉が眠っているからだ。
二人が同棲を始めてまだ数日しかたっていない。
目を覚ますと目の前に柚子葉の寝顔があるということに深夜はまだ慣れていなかった。
柚子葉は良く眠っていて深夜が髪を撫でても起きる気配はない。
深夜は柚子葉の寝顔を見ながら今日の予定を思い出していた。
昼から秀太を預かって欲しいと恭子に頼まれていたがそれ以外は何の予定も入っていない。
まだ眠れると思い深夜は柚子葉を起こさないように体を抱きしめた。
そして、眠っている柚子葉のおでこにキスを落とし深夜も再び眠りに就いた。
深夜が眠りに就いて数十分後。
今度は柚子葉が目を覚まし、深夜と同じように驚いてしまった。
寝るときよりも深夜と密着しているからだ。
柚子葉が起きようとしても深夜の腕が回されていて動けなかった。
深夜がよく眠っているので起こすのもどうかと思い柚子葉はまた横になった。
そして、柚子葉は深夜の顔を見詰めた。
こうして近くで深夜の顔を見るという機会は今までもあったが、寝顔というのはあまり覚えがない。
普段は大人っぽい深夜だが寝顔は幼く見える。
柚子葉は寝ている深夜の左胸に耳を寄せた。
深夜が着ているTシャツの上からでも深夜の心臓の鼓動が聞こえる。
気がついたら鼓動を聞いていた柚子葉もまた眠りに就いてしまった。
柚子葉が眠って数時間後。
また深夜が目を覚ました。
そして、自分の体に密着している柚子葉に驚き、微笑んだ。
深夜が柚子葉の頭を撫でてると柚子葉が目を覚ましたのか深夜の腕の中で身じろいだ。
ゆっくりと目を開け、深夜を見詰めた。
深夜は髪を撫でながら口を開いた。
「おはよう」
「おはよう。今何時?」
「ん~と…もうすぐ11時」
柚子葉が聞くと深夜は近くのテーブルにおいてある携帯に手を伸ばし時間を確認した。
柚子葉は時間を聞くと起きようとしたが深夜が腕を回したままなので起きれなかった。
「…起きれないんだけど」
「もうちょい。…こういうのっていいよな」
「え?」
「目が覚めたらさ、好きな人が目の前にいるってこと」
「…うん。幸せだなって思う」
深夜と柚子葉は顔を見合わせて微笑みあった。
二人はそのままベッドで朝の有意義な時間を過ごした。
気がついたら二人は眠ってしまい、部屋に上がってきた忍にからかわれたのはそれから数時間後のことだった。