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第1部 目覚め

色々あって書いたものが友人に高評価されたので調子に乗って投稿です。拙い文章ですがお暇があれば是非是非。

目が覚めると、全く知らない所にいた

いや、全く知らないなんてもんじゃない、前も、後ろも、上も、下も、全部全部真っ白。自分の体と服以外が全て真っ白な空間。ここはどこだろう。

確か私は今日から新学期で学校に行って、でもって始業式とか色々終えたあと家に帰って…。家に帰ってどうしたっけ。そうだ、そこからの記憶がひとつもない。

「とりあえずどうにかしないと…」

確認がてら行ってみたがどうやら声は出るらしい、自分の身体機能に異常は見られない。

となるとまずはこの場所がなんなのかを知ることからだろう。


…ダメだ、ホントに全く何も無い。歩けど歩けど景色が変わる予感は一向にない。むしろ変わらな過ぎて自分が歩いているのかどうかすら分からなくなってくる。その上こういう所では疲れとか感じないもんかと思えば、全然疲れる。身体は本当にいつもと何も変わらないらしい。

「なんだよ…クソッ…」

それでも歩くしかない。というかこれはホントに歩けているのだろうか。それすら疑わしくなってきた。


「ハァ…なんなんだよ…畜生…ハァ…」

あれからまたどれくらい歩いたろうか。体感時間だが5時間くらい歩いたような気がする。そうなのにも関わらず本ッ当に変化が見られない、ありえない。なんなんだここは…

流石に足が疲れて言うことを聞かない。ここらでしばらく休憩にしよう。地面(かどうかは定かではないがとりあえず地面だと思われるところ)はコンクリートの用に硬い感じだが、この上でも少し眠れば体力は回復してくれるだろうか…


おかしい、眠気が一向にこない。今が何時かとかそんなのは全く分からないが、それでも5時間近く歩いたあとだ。少しくらい眠くなってもおかしくはないだろう。そういえばあれだけ歩いたにも関わらず暑いとも思わない。逆に寒さも全く感じない。自分の身体はいつもと何も変わらないと言ったが、もしかするといくつか違う点もあるのかもしれない。それにしてもここまでで歩いて考えて分かったのが自分の身体についてだけとは…。いつ家に帰れるか分かったもんじゃない。



「いやホントになんなんだよ…」

多分丸1日はたったんじゃないだろうか。歩いて休んでを繰り返してきて、色々身体について分かってきたがそれどころじゃない。今目の前に広がる世界は今まで通り白い、真っ白だ。それを確認した上で目をつぶって1歩踏み出してみる。そして恐る恐る目を開ける。黒い、真っ黒だ。今度は目を開けて1歩下がってみる。その瞬間みるみる黒が抜けていきもとの白色に戻っていく。世界に変化が見られたのはありがたいと言えばありがたいのだが、あまりにも唐突かつ謎の変化過ぎる。この見えない境界線はなんなんだ。それに変わるにしても黒ってなんだ。正直もっと明るい色が良かったところだ。

「はぁ…でもこれこっちに進んだ方がまだ何かありそうだしなぁ…」

独り言は響くこともなく虚しく消えていく。白から黒。初めからもしかしたらとは思っていたがここはあの世だったりするんだろうか…。もしそうだとしたらもっとなにか用意しておけと神様に言ってやりたいところだ。


黒をしばらく歩いていて気がついたことがある。こちらの方が暖かい。さっきまで無かったはずの温度の感覚がある。また少し眠気も出てきた。あと、残念なことに少し催しても来たのでしばらくしたらこんなところだが致さなければならないかもしれない。まぁ何にせよ、人間的感覚が強くなったということはきっと現世に近づいている証拠だろう。…いや、ここがあの世と決まった訳では無いのだが。だがもしあの世だとしたら自分はなんで死んだのだろうか。

「わっかんねーなぁ…」



建物があった。レンガ造りの小さな小屋。何故かその周りだけは草原が広がり、家の横では小川が水車を回していた。やっと見つけたまともな物だ。しかし何がいるか分かったものではない。もしかしたらここに私をここへ連れ込んだ張本人がいるのかもしれない。進捗に小屋へと近づき、覚悟を決めて勢いよく扉を開けた。

「うわぁ!?」

声を上げた同年代だと思われる少年は、驚いた拍子に座っていた椅子から転げ落ちてしまった。どうも警戒すべき相手ではなさそうだ。ひとまずは安心だがここからどうすべきか。転げ落ちたままのマヌケな姿勢で少年は固まっている。もしかすると恥ずかしくて動けないのでは…。そんな考えを巡らせていると少年は唐突にガタッと立ち上がり、淡々と椅子を直してそこに座った。

「やぁこんにちは、来客なんて久々だなぁ!!」

あ、これは無かったことにしようとしてるやつだ。盛大にコケたことの弁明が思いつかなかったんだな…。まぁ色々聞きたいことがあるし、ここはスルーすべきか。

「えぇと…いきなりで悪いんだが、ここはなんなんだ?」

とりあえず来た時から気になっていたことを聞いてみる。

「いや、いいよいいよ、そりゃあここまで来るのは長かったろうし、いきなり質問したくなるのも分かるよ。」

あ、こりゃ意外とお調子者のタイプかもしれない。コケたことについてもっと言及すべきだったか。

「信じてくれるかどうかは分からないんだけど…ここって僕の作った世界なんだよね。」

…作った…世界?どういうことだろう、世界を作った?この目の前の少年が…?

「まぁ、いきなりこんなこと言われても信じられるかって話だよね…1つ1つゆっくり話していこうか、まずは座って座って。」

勧められるままに机を挟んだもう1つの椅子に座る。…あれ、椅子2つあったっけ。

「んーまぁ初めに説明するとしたら…うん、ちょっと言いにくいことになるんだけど…。」

言葉に詰まる彼を見て、薄々感じていた予感がどうも現実であるという確信が高まった。

「もしかしてここ、死後の世界だったりする?」

彼は少し驚いたように目を見開いたが、すぐに続けた。

「気づいてた…かぁ…まぁここに来るまでに分かると言えば分かるものなぁ………それで君…死因は覚えてたり、する?」

「いいや、さっぱりさ。1番新しい記憶は家に帰ったところ。」

「思い当たることとかも…」

「ないね、ホントになんで死んだのか。」

肩をすくめ答える私を見て、彼は安心したように見えた。彼も覚えていないのだろうか。


それからこの世界についていくつか教えて貰った。どうもここは死んだ彼の心を反映して出来たもの…であるらしい。しかし実際彼もどう死んだかとか、なんでこの世界が出来たのかについてはよく分かっていないらしい。気づいたらここにいて、そして何故かここが自分の世界であるという確信だけがあったという。正直彼の話もあやふやな部分があったため、信じ難いことではあるが、この状況を考えると大分信憑性があるように思われる。

「それで…この家の付近だと君が欲しいと思ったものは手に入るわけだ。」

「うん、そういうことだね。」

なるほど、さっき椅子が増えたのはそういうことか。あ、そういえば…

「さっき来客が久々って言ってたけど、私以外にも人が来たことがあるのかい?」

「あ、そうだよ。君は4人目だったかな?」

「なるほどなるほど…」

あれ?

「じゃあ残りの3人どうしたのさ?」

聞いた瞬間彼の顔が一瞬だけ酷く悲しげに見えた。しかし次の瞬間には彼は先程までと同じ笑顔で話を続けていた。見間違いか。

「いやーまぁ死後の世界だけにふとした時に居なくなっちゃったりもするんだよね〜。」

「…君が殺ったとかではなくて…?」

「いやいやいや!?止めてよ!!僕そんな物騒な男に見えるかい!?」

まぁ反応を見る限り彼の話が本当だと見てよさそうだ。…というかふとした時に消えるのかよ、怖いなこの世界。

「そういえば君名前は覚えてるかい?あぁちなみに僕は"オズキ"って名乗ってるよ。」

「"オズキ"?変な名前だなぁ。まぁいいや私の名前は……あれ?」

名前…えっと名前だよな…私の名前は確か…

「…やっぱり覚えてないんだね。」

その通りだ。今まで全く気にしてなかったが、自分の名前がさっぱり出てこない。

「気にしなくてもいいよ、ここに来た人は皆そうだった。」

あぁそうなのかと少し納得するが、それでも慣れ親しんだ名を忘れてしまうとは、なかなかこの世界は恐ろしいものだ。

「…と言っても仮にでも名前はがあった方が良いよねぇ…そうだ、こんなのはどう?」

名前を思い出せない不安感にかられる私をよそに、彼はその名を告げた。

「"アイビー"」

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