不安と希望
第1章
はじまる前夜
いつになく鼓動を感じていた。
名前は髙野 悠弥19才。
身長は170センチで茶髪のフリーター。
高校中退し、ふらふらしていたが流石に周りも就職し落ち着いてきた。
夜の溜まり場だった駅前のゲーセンに仲間の合流も乏しくなってしまった。
今夜はバイクに乗って当てもなく走っている。
愛車はHONDAのNS-1で50cc原付バイクだ。
ただ、悠弥にしてみれば相棒であり何処にでも連れて行ってくれるマシンだ。
ネイキットタイプのマシンを街乗り仕様に改造し最高速度は法定速度を優にオーバーしてしまう。
アップハンドル化し考えられる改造を施した相棒だ。
そんな相棒と夜の街風を駆け抜けていた。
どれだけ相棒と走っただろうか。
喉の渇きを覚えた悠弥はコンビニの駐車場に相棒と入った。
「ふぅ~。」
エンジンを切ってフルフェイスを取り足早に店内へ入りお茶を買った。
早々に退店し、乾いた喉を潤した。
「19時22分かぁ。ここらで折り返しかな。」
「幹線道路からだいぶ外れて走ったから全然現在地が分からねなぁ。」
スマホを取り出し地図アプリで現在地を確認してみる事にした。
「えっと、現在地は・・・。」
「ときがわ町??」
クスっと笑った。
「暗くてあんまり分からないけど、山っすか。」
1人ツッコミとボケのような状態だ。
おもむろにタバコに火をつけた。
星が綺麗に見えた。
しばらくの間何も考えず星を眺めていた。
「そっか、明日は面接かぁ。警備員って立ってりゃ良いんだろ?」
「楽勝じゃね?余裕だな。」
なんともお気楽な思考で高まる緊張感を払拭するかの様だった。
喉を潤した悠弥はフルフェイスに付けたインカムの電源を入れた。
「じゃ、ぼちぼちと帰るかな。」
飲みかけのペットボトルをメットインに入れた。
面接の緊張感が揺れる様にペットボトルの中身と心が交錯する様だった。
インカムを操作してローカルラジオに設定してバイクに乗った。
ヘルメットの中にはスピーカーが内蔵されていて心地良い音楽が流れていた。
ラジオからラジオDJが軽快なトークで揺れる気持ちにそっと寄り添ってくれている様な気持ちにさせてくれた。
「なんとなく聴いてるラジオだけど、結構好きなんだよな。このラジオ...。」
ボソッと呟いた。
「山が近いせいか少しノイズが入ってるか?」
しかし、そのノイズも悠弥にとって心地よいノイズだった。
何となくだが緊張感が緩和した気がしていた。