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プロローグ

 世界を救った勇者のその(・・・)を考えたことがあるだろうか。

 小説やアニメでは大抵の場合、苦しい戦いの末、勇者はお姫様と結ばれ幸せな人生を送るように描かれている。そうでなくとも、恋人や仲間たちと一緒に何かしらの幸せを掴んでいる。

 けれど、私のそんな想像はとある少年との出会いによって変わった。

 世界を救っても勇者は救われない。

 身に余る力を得たがゆえに迫害され、軽蔑され、信じた者にすら裏切られる。

 自分の全てを(なげう)ち、苦悩や葛藤を超克(ちょうこく)した先に待っていたものは、ただの差別だった。

 そんなことがあっていいのだろうか。

 勇者として祀り上げられ、実際に超常的な力を奮った優しい人に対してそれはあまりにも――。

 私ははっきりと断言できる。

 あっていいはずがない、と。

 見返りを求めないことは美徳かもしれない。ううん、そもそも彼は見返りなんて求めていなかった。ただただどこまでも純粋に、家族を――仲間を――大切な人達を守りたかった。救いたかった。

 触れた掌は傷だらけで、腕は簡単に折れそうな程か細く、背中は今にも吹けば倒れるほど心細い。

 それでも彼は自分の足でしっかりと立ち上がり、世界中の人々の願いと思いを背負い、平和を現実にした。

 それだけの『奇跡』ともいえる行いを成したのだから、世界が彼に何かしらの見返りを与えるのは当然のことだと思う。

 けれど、何度も話すように世界が救われたとたん人々は掌を返したかのように、勇者の力を異端視しだした。挙句の果てには、本当に異教徒だと罵りはじめ、彼の信じたものにすら裏切られた。

 現実はどこまでも非常で、冷淡で、残酷で世界を救ってくれたという恩義すら忘れ、異常な力を持つというだけで迫害する。

 飛翔ための願いと思いの翼はもがれ、希望という剣も砕かれた。

 そんな勇者である彼――ベル=スカイドラムと、その勇者に出会った私――望月詩乃(もちづきしの)の行く末はまだ誰も知らない。

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