岡目
今日は、岡目君に会うために隣の大学までやってきた。確かココでよかったよね。岡目君はいないので、少し早く来すぎてしまったようだ。
「ねえ君、一人?」
「……え?はい?」
声をかけられ振り向くと、知らない男が立っている。
「ボクさー、約束してたんだけどすっぽかされてさー。」
「……はあ……。」
「ねえねえ、この学校の人?もしかしてお隣?」
「えっと…隣の大学で…」
「やっぱり~!見たことないと思った~!君みたいな可愛い子、一度見たら忘れられないよ~~」
「えっと……あの……」
全く知らない人に突如絡まれて困惑する私を、男は逃がすまいとまくし立てて、更に混乱してしまう。男は肯定ととったのか、機嫌よくぺらぺらと喋ってきた。まあ多分あれだ、ナンパだ。
(ちょっと早く来過ぎた~~~!!!早く来て~~!でも私って分かってるのかな!?あーーーそれに、ちゃんと助けてもらえるかな!?)
「ココじゃなくてさ、大通り出たところにいいお店知ってるからさ~ソッチの方がゆっくりできるじゃん?行こうよ。」
「ちょ、ちょっと!」
腕を掴まれて強引に連れて行かれそうになる。
「すいません。」
「ん?誰?」
「俺のツレなんで。ホラ、行くぞ。」
「えっ?あっちょっと……ひっぱらないで……!」
目の前の男に気を取られていて人が近くに来ている事に気がつかなかった。私の腕を強く掴んで歩く。怒っている、という表情ではない、力の加減を知らないそんな感じだ。
ナンパ男も状況を理解できず、その場にポツンと取り残されていた。
「もしかして、岡目くん!?」
「……岡目だけど。」
「はじめまして!私、カナです。えっと、た、助けてくれてありがとう?」
「助けられたって自覚あるなら、そんな短いスカート履くんじゃねーよ。」
「スカートじゃないよ!キュロットだよ!」
「……うっせーな。別におれはお前とカラスが何の約束したかしらねーし、興味ねーし、俺には関係ねーって事を言いに来た。」
「約束っていうか……普通に友達になろうってだけだよ。」
「……興味ない。」
「私は興味あるよ。」
「無い。」
「ねえ、立ち話もなんだしどこかでお茶しよう?」
「人の話聞いてんのか。」
「学校のカフェテラスはセイの時に行ったし……ねえ、近場で岡目君のオススメの店とか行きたいところある?」
「おいコラ、人の話きけ。」
「大丈夫、大丈夫…ほら、怖くない。」
岡目君が、なんとなくかわいらしく感じてしまった。
「人を犬みたいな扱いすんな。」
「そんな可愛い物じゃなくて、手負いの魔物のイメージで。」
「おい!お前ケンカ売ってるよな!?俺に!」
「キャー、襲われるー!あ、ちょっと離れるんだけど2駅くらいの所に新しくできたカフェがあってせっかくだし其処とかどうかな?」
「~~~~っっっ!!!」
岡目君をどうにか丸め込み、私たちはカフェにやってきた。
「お前さ、他の誰かに俺の事なんか聞いたりしたのか。」
「セイに聞いたよ。こんな感じの人だから、こんな風に付き合うといいよ、って。」
「はああああ!?あいつなんて言った!?」
「うん。セイの前情報なかったら、萎縮してたかも。ほら、岡目君ちょっと目つき悪いし。本当に怒ってるように見えるし。」
「めっちゃ怒ってるしめっちゃイラついてるけどな!?」
「でも、カフェついてきてくれる。優しい。」
「…………これはあれ、敵情視察。」
照れているのか、岡目君は耳まで赤くしている。
「カフェが?」
「バイトしてんだよ。」
「カフェで?」
私が聞くと、彼はまた頬を染めてポツリと言った。
「……カフェで。」
「似合わないね!」
「ケンカ売ってるよな?お前。」
「岡目君は優しいから、ケンカ買わないよ、大丈夫。」
「お前さ、本当何なんだよ!」
「友達?」
「ならねえ!」
セイに、何を言われてもポジティブに返せばいいよと言われていたけれど、少しやりすぎただろうか。そろそろ普通のコミュニケーションに戻った方がいいかもしれない。
「バイトしてるんだ?何でカフェ?」
「別に。働くのに理由なんているのかよ。」
「どこでバイトしてるの?」
「何でそこまで言う必要があるんだよ。」
「えー。じゃあ普段は何してるの?」
「バイト。」
「ニート?」
「バイトだっつってんだろ。」
「フリーターか!……えーっと、好きなものとかは?」
「はあ?何で言わなきゃならないわけ。」
「私と岡目君は、友達じゃない。」
「多分、俺、お前が嫌いな物、全部好きな自信あるわ。」
岡目君に色々と質問を投げかけてみたが、会話にならない。
「おいしいね、ここのコーヒー。」
「んー。」
岡目君は微妙な顔をする。あまり口に合わなかったのだろうか。
「また会えるかな?」
「なんでだよ。」
「友達だし!」
「お前本当アレ……。はやく他の奴のところ行け。」
「そうだね。でも、岡目君にも会いに行くよ。」
「いい本当にいい結構です。」
「セイにバイト先、聞こうっと。」
「うわ、ちょ、本当やめろ!」
「えっと…あと会ってないのは”木場君”だけかな。ねえねえどんな人?」
「あーーー。なんか…変なやつ。」
「ざっくりしてるね。」
「会えば分かんだろ。」
「確かに。」
「んー……俺から連絡しとくわ。」
「ありがとう!岡目君、今日は会えて楽しかったよ。」
「んー。」
「また岡目君にも連絡するね。」
「んー…。」
岡目君は目をそらし、曖昧な返事をした。
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岡目:@セイ お前何吹き込んだマジしね!!!!
セイ:@岡目 岡目君って照れ屋さんなんだね!
岡目:@セイ しねしねしねしねしね
岡目:俺はしにます
木場:@岡目 どんまい。
文太:どうでもいいけどちゃんと報告して。
岡目:@木場 あ、次お前だし。連絡しとけよ。
木場:@岡目 分かった。今週は早めに図書館行きたいんだけど大丈夫かな。
木場:@岡目 今、月9でやってるさ恋愛ドラマが原作と全然違うらしいんだよ。20年前はやった原作を今風にアレンジしてあるらしんだけど、それがうまく消化してるって評判で興味でたっていうか。
木場:@岡目 どこの本屋いっても品切れでさ。当たり前なんだけど。だめでもとで検索かけたら図書館にあるみたいなんだよね。
木場:@岡目 で、取り置きしてもらってて早めに行きたいんだ。
セイ:図書館で待ち合わせしたら?(´ε`;)