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カナ  作者: みなみ
第一章 出会い
4/16

文太

 ……やばい遅刻する!!!

 ちょっとした勘違いでレポートの提出日を間違えていた。急いで対処した為、ギリギリなんとか間に合ったが、今度はコッチの約束にギリギリで間に合いそうにない。運にかけて全速力で約束の場所まで走っている。


 もう既に彼は到着して、壁を背に本を読んでいた。彼の名は《文太》。昨日会う為に数回メールのやり取りをしたが、淡白な印象だった。セイが人懐っこかったのと比べてしまうのもあるが。


「ご、ごめんなさい!お待たせしました!!」


 姿勢良く、静かに本をたたんでカバンの中に直す動作は綺麗で見惚れそうだったが目が合った瞬間に思いっきりにらみつけられた。


「遅い!!!!!!10分過ぎてんだけど!!!!!!!」

「すいません……ごめんなさい!!」

「普通さ、遅れるなら事前に連絡くらいしたら!?それだけで全然違うんだから!」

「ご、ごめんなさい……まったくもってその通りです……。」

「謝罪とかいらないから。今まで謝って許してもらえたかもしれないけど、謝って済む感覚でいるのがおかしいんじゃない?」

「は、はい……。次からは気をつけます……。」

「当たり前だろ!馬鹿じゃないの!!!未来永劫気をつけて。だらしないのって、周りが迷惑すんの。」

「は、はい……。」

「少し気をつけるだけでアンタも嫌な思いしないんだから。」

「はい……。」


(第一印象最悪になってしまった……。メール打ってる時間もおしくてぎりぎりいけるかもしれないという自惚れがありました!文太君が怒り狂うのも仕方ないよね……次から気をつけよう……。)


「ちょっと何ぐずぐずしてんの。」

「ハイイイ~……!!」


 私が1人反省している間、いつの間にか文太君は先を歩き始めていた。


「立ち話もなんだし、セイがオススメしてるあっちのカフェでいい?」

「あっ…」

「そっちのカバンかして。」

 有無を言わさず参考資料が入ったトートバッグを奪われた。かなり重たいはずなのに、特に気にしない様子は男の人なんだなって関心していたが

 歩くのがはやい……!!置いていかれそうになる!!

「ま、、待って……!」

「ダラダラしない。後で休ませてあげるから。」


 肌寒くなってそろそろコートを出す必要があるな、と思っていたくらいなのに冷たい飲み物がこんなに美味しく感じるなんて。

 カフェに入ってやっと一息つけた。首筋に汗が流れるのを感じながら、化粧が崩れていないといいなと思った。


「タオル貸そうか?」

「えっ」

「汗、たれてる。」

(ギャー!!!!首筋の汗に気をとられていたら額から汗が……!!)

「大丈夫です!!」

(と思ったけれど今日焦りすぎてタオル忘れてきてるー!!!不覚すぎ!!!)


「……はい。」

 ぐいっと目の前にハンドタオルを差し出され、思わず手に取った。早く使えと促され、しぶしぶ了承して汗を軽くぬぐう。深い緑色のチェックのハンドタオルは、柔軟剤のいい香りがする。

「女子力たりないんじゃないの。」

(あ、笑った……)

「使ってる柔軟剤、すごくいい香りだからかいでみて。」

「えっあ、うん!ちょっと思ってた!香り控えめで……バニラ?ううん?ムスクっぽい香りもするし……フローラルっぽい??」

「柔軟剤の香りと洗濯後と乾いた後で香りが若干変わるんだって。匂い控えめだし、カラスが見つけてきて愛用してるけど、おれも気に入ってるよ。」

「へえ……」

「はい、タオル返して。」

「えっ洗って返します!」

「はあ?この柔軟剤気に入ってるって言ってるでしょ。あんたに洗われたら違う匂いになって返ってくるじゃん。返して。」

 そう言ってタオルは強引に奪われてしまった。けれど、気を遣わせない為だったのだろうか。


「自己紹介まだだっけ。」

「あ、私カナです。」

「知ってる。おれは文太。M大学教育学部1年。えーっと、誕生日は4月4日の牡牛座、A型、趣味も特技もなし。」

「教育学部なんですね?」

「そうだけど。」

「へー……えっ!?文太君のところの教育学部って凄く偏差値高いですよね!?私でも覚えてるくらいだし!」

「まあ、低くはないんじゃない。」

「頭がいいんですね!!!」

「頭がいいわけじゃないだろ。受験勉強が出来ただけ。」

「うわー……。そんな台詞言ってみたい!」

「あんたは?」

「あ、心理学科です。」

「なるほど。」


「えーっと、じゃあ普段は何をしてるんですか?」

「大学で受講してレポート書いて提出してテスト受けてる。」

「真面目なんですね。」

「学生が勉強に励むのは当たり前だろ。馬鹿じゃないの!?」

「うっそのその通りです……。でも、ほら、他の事もちょっとしたいと思いません?」

「思わない。」


 文太君は勉強熱心な人のようだ。


「何か、好きなものはありますか?」

「ない。」

 ばっさり、即答されてしまった。

「えっないんですか!?」

「あんまり頓着ないだけ。おれは、勉強できる環境があればそれでいい。」

「勉強が好きなんですか?」

「あー……別に。でも、勉強する事によって色々変わったのは違いないから、じゃあそれでいいや。」


 暫く他愛もない話をしていると、文太君が時計を見て言った。

「あ、ごめん、時間やばい。次の授業あるから。」

「こっちこそ時間ないのにすいません……!」

「ん。あと、次から敬語ナシね。」

「えっ」

「返事は?」

「う、うん……。」

「ありがとう。……っと、次、誰に会うんだっけ?岡目と木場にはまだ会ってないよね。連絡しておくから、どっちから先に会う?」

「えっと、どっちから……文太君にとって二人ってどんな感じ?」

「うーん。まあ、みんな同じ事を思ってそうだけど。岡目は不器用で面倒くさい奴、木場はマイペースで面倒くさい奴、かな?」

 文太君含め、彼らはなんだか個性的なようだ。仲良くやっていけるだろうかと少し心配になる。

「うーん、次は岡目君かな。」

「じゃあ、おれから連絡しておく。少しだったけど楽しかったよ。また時間ある時に。」


 本当に楽しいと思ってもらえたのかは疑問に感じつつも、その日はそこで解散した。


 -------------------

文太:もっとクソ真面目な子が来るかと思ってたけど今時な子な印象。きょうは顔見せ程度で終わったから、今後随時報告してく。

セイ:@文太 ね~今風って感じでかわいい子だよね~~

岡目:@文太 なあなあお前の好きなフルーツオレ?また店長からもらったから冷蔵庫いれておく

セイ:@岡目 文太ばっかりずるいヽ(`Д´)ノ俺ももらいま~~す。

木場:@岡目 僕ももらいま~~す。ヽ(`Д´)ノ

文太:@岡目 ごめん。おれまでたどり着かなかった。

文太:@岡目 あと、本題。次、岡目に会いたいって。

岡目:@文太 了解。

岡目:@文太 フルーツオレさ、そいつ……カナ?に渡して文太に次会うときに渡してもらった方がいい?家の冷蔵庫入れてたらあいつらに飲まれるじゃん?

文太:@岡目 ごめん、そんな頑張らなくていい。気持ちだけもらっておく。あと気色が悪い。

セイ:@岡目 ケーキ買ってきて。

木場:@岡目 じゃあ僕も。

岡目:@セイ@木場 (--)凸

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