第二十八話
幕間Ⅳ
時計の針が進む度、ピアノ線が肉に食い込んで切断していく感触を味わった。少し前に四宮はすごい悲鳴を上げていたが、確かにこれは耐え切るのは不可能に近い激痛である。四宮を殺したあと、私を誘惑していた広瀬が、布に染み込ませた睡眠薬を私に押し付けた。そこで私は気を失ってしまい、気が付けばこの有様だ。つまり、私は広瀬に裏切られということだ。いや、ここまでが彼女の計画だったのかもしれない。
針が進む音は、私の死へのカウントダウンだった。それでも、私には恐怖は無かった。藤崎朋、楢原明日香、四宮知花を殺し、それぞれの家族への復讐も遂げた私には、もう思い残すことがない。それに、魂の半分を亡くし、もう半分は自ら捨てた空っぽの私には、とてもお似合いの最後だと思ったからだ。
しばらくして、私の両腕が身体から離れた。これであと幾許もなく私は死ぬ。目の前には、ワープロで作成した遺書が置かれている。これで、私という狂人の死を持って、今回の連続殺人事件は終焉を迎えるのだ。
――いい気味よ。先に地獄で待っているわ。
私の側に転がって、こちらに顔を向けている四宮の死体が、そんなことを言った気がした。
「ええ、そうね」
私は、声が聞こえるはずもない四宮の死体に、そう返事をした。




