表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/36

強さを求める村娘(4)

 それ以上は攻撃力要らなくね、と勇者に言われた村娘は、ぷっくりと頰を膨らませた。

「でも剣も扱えるようになりたいんだ」

「俺サマは暇じゃねェんだよ」

 相棒の刃を確認しながら、剣士が興味無さそうに言う。

「ま、まぁまぁ、剣士殿。自分の身を護れるくらい強いから、足手まといってわけじゃないんだし、さぁ」

「……テメェはしばらく前からヤケにソイツを連れて行きたがるなァ?」


 惚れたか? それとも裏があるか?


 にやにやと笑う口元に反し、その眼光は、射抜く程に鋭い。勇者は何か後ろ暗いことでもあるのか、見て分かる程に狼狽えている。

「……オレは何もしてないぞ」

 そいつと裏工作などしていない。と目を吊り上げた村娘は「オレはただ、あの女の子に“押して駄目なら、押し倒せ”って言われたから」と真面目な顔で言った。勇者の冷たい目が、何故か剣士に向けられる。

「阿呆か。こんなガキに押し倒されても食指が動かねェよ」

 ハッと鼻で笑う。ショクシ? きょとーん、とする村娘の前で、勇者が剣士に「うおおおおい、子供になんってこと言うんだよおおおおお!?」と詰め寄っている。


「っていうか、その相手の女の子もなんてことを……!」

「うん? いいやつだったぞ。綺麗な金色の髪でな、紅玉のような瞳をしてた。すごく綺麗で、可愛くて、あぁ、声もすごく透明感があったな」


 夢の中の出来事だったかもしれないけれども。

 ぽお、とその時のことを思い出しながら夢心地で話すと、何か気になることでもあったのか、首を傾げている勇者の手を振り払った剣士が、村娘の前にやって来た。


「おいテメェ、その女、スタイルはどうだった?」

「スタイル? うーん、ふわっとした白いワンピース着てたから分からん」

「押し倒せっつーのは、そいつが言ったのか?」

「いや」


 村娘はきょとんとしながら、口を開く。剣士はやに真剣な表現で、村娘の答えを待っている。そんなに重要なことなのだろうか。


「その子の兄の言葉だそうだ」


 剣士の表情は変わらなかった。

 ただそのまま立ち上がると、「仕方ねェな」と面倒そうに漏らす。


「俺サマは暇じゃねェ。だが勝手に盗むってンなら止めねェよ」

「ほ、本当か!」

 顔を明るくした村娘は、あまりに興奮していたので、未だに神妙な顔をしている勇者にも、意味ありげに目配せをしている剣士と賢者にも気付かなかった。

 押してみるもんだ。心の中で少女に感謝を述べる。



アレ(・・)がそう望むなら仕方ねェな。なんで()にいンのかも、何が目的かも知らねェが乗ってやるか」



 その言葉に応えるように、ひゅう、と風が吹いた。



◆強さを求める村娘 了




短めです。ごめんなさい。

さて、次回から魔女さんにバトンタッチです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ