4.
橘君は何やらわめきながら突っ走ってくるがよく聞き取れない。とにかく菜ノ花に気付かれる前に排除せねば。
「行くよ、伊奈!」
「え? 私も?」
菜ノ花に聞かれないようスマホの通話を切って、橘君の方へ走っていく。
「待ちな! 橘君!」
怒れる金髪娘の前に両手を広げて立ち塞がる。右に左に私をかわそうとする橘君だがうまくいかない。
「どけや! 森田!」
人形のように整った顔を歪めて吠える。
「何しに来たのさ、橘君」
「なのちゃんが男とデートしてんねやろ? オノレの手引きでなぁっ!」
普段お上品な関西弁の橘君が、「オノレ」と言うのは激怒している証拠。
「とにかく落ち着こう、橘さん」
「乗倉! ワレ、きっちりこのド阿保の手綱引き締めとかんかいっ!」
「まずは落ち着いて。ここじゃゆっくり話もできないから」
「オノレらとする話なんかないわっ! なのちゃんはどこや! なのちゃん今すぐ助けな!」
キョロキョロと視線を彷徨わせた橘君の隙を突いて彼女に飛びかかる。
「大人しくしろっての!」
後ろに回り込み、羽交い締めにして華奢な身体を持ち上げた。
「やめぇや! 何すんねん!」
「咲乃! 人が集まってくる」
騒ぎになってしまって近くの店から店員が出てきた。マズい。
「どうした? サキちゃん」
「大丈夫、ちょっとした青春の発露だから。すぐ連れてくよ」
「お、おう、でも泣いてるよ、その子」
「青春の汗、青春の汗」
「離せや! なのちゃ~ん、なのちゃ~ん!」
泣き叫ぶ橘君を引きずって、とにかく商店街の外を目指す。
「諦めな! 菜ノ花は別の道を歩き始めたんだ。もう君の所有物じゃないんだ!」
「なんでやっ! 一緒のガッコ行くん我慢したやんっ! 好き同士になるんも我慢したやんっ! これ以上うちから、なのちゃん取らんとってぇやっ!」
「でもまだ好きなんでしょ? 菜ノ花が好きなんでしょ? そんなんで菜ノ花の側にいて欲しくないんだよ。君は絶対、あの子を不幸にする! そんなの私は許さない!」
「なのちゃんと毎日電話でお話しすんねんっ! 休みの日は一緒に遊ぶねんっ! そんで我慢すんねんっ! そう決めてんっ! それだけやねんっ! それだけやから、邪魔せんとってぇっ!」
「嘘付け! 君も菜ノ花の親友なんだったら、あの子の幸せ考えなよ! あの子はね、あの子は君が邪魔で恋もできなかったんだ! 君はあの子の邪魔ばっかしてるんだっ!」
「そんなんちゃうもん、そんなんちゃうもんっ! 邪魔してんのはオノレや! いっつもうちとなのちゃんの仲、邪魔してんのはオノレなんやっ!」
「邪魔するに決まってるでしょ? 菜ノ花をガチ百合の毒牙にかけるわけにはいかないのっ! あの子はフツーの恋するのっ! 君は君で仲間を探せばいいんだっ!」
「うちはガチ百合ちゃうっ! なのちゃんが好きなんやっ! なのちゃんだけが好きなんやっ! 会わせろや! なのちゃんに会わせてぇやぁ~!」
「もう手遅れだから。菜ノ花はもう、新しい恋を探し始めたんだ。君なんて放っておいて、男子とフツーの恋をするんだから」
「嘘やっ! なのちゃんがうち置いてくわけないもんっ!」
「もう終わりなんだよ。菜ノ花は学生生活を終えてしまった。今までみたいな関係は、もう終わりなんだよ」
「終わりなわけないやん……終わりなわけない……」
どうにか商店街の入口脇まで引っ張ってこれた。ようやく暴れるのをやめた橘君は、ぶつぶつと何かを呟き続けている。手を離すとその場にへたり込んでしまう。
人目を引く整った顔は涙にまみれ、薄桃色のかわいらしい服は土にまみれ、無残な有様になっている橘君は見ているだけで同情心をかき立ててくる。だけどここは心を鬼にして、彼女が抱いている妙な恋心なんてものに徹底した追撃を加えないといけなかった。そうして菜ノ花から身を引かせるのだ。
私が声を出そうとすると、前にいた伊奈が片手を上げて制してきた。そして伊奈はしゃがみ込み、ヒザを抱えてうつむいている橘君と向かい合う。
「ねぇ、橘さん」
「……何? 伊奈さん」
正面にいる伊奈の方は見ずに、声だけ出す。
「橘さんって、下の名前何だっけ?」
「……縁」
「縁さん。私の話を、ちょっとだけ聞いて欲しいんだ」
橘君が顔を上げる。伊奈が私以外の人間を下の名前で呼ぶのを初めて聞いた。
「ゴメンね、縁さん。咲乃が酷いこと言っちゃった」
「うん、ホンマ酷い」
「こいつにそんなこと言う資格はないんだよ。こいつだってずっと私にべったりなんだから。今朝なんて私に彼氏ができたからってバカみたいにわめき出したしね」
「ち、ちょっと伊奈、そんな話橘君に……」
橘君が呆けた顔でこっちを見ている。
「縁さんは偉いよね、佐伯さんと違う進路になっても我慢したんだ?」
「そや、うち我慢してん。なのちゃんがお花屋さんになりたいって言うたから、同じ大学行くん我慢してん」
「私達も違う大学にしたけど、こいつは受験当日までごね続けたんだよ? 大概苦労させられた」
「森田も全然あかんやん」
「そう、全然あかん奴やねん。こいつには縁さんに酷いことを言う資格なんてないんだ」
「いや、あのさぁ、私の話はさぁ」
「ワレ、全然あかんやん」
「うるさいよ、橘君」
口を尖られた私を、橘君が鼻で笑った。顔に少し生気が出てきている。
「今、私達は違う大学に行って、月に一度くらいしか会わないけど、私はそれでいいと思ってる。それでも私達は変わらず親友だから。咲乃の奴は不満みたいだけど」
「不満ていうかさぁ」
「縁さんは佐伯さんが好きなんだよね? 本気で好きなんだ?」
「そや、うちは……なのちゃんが好き。本気で好き」
「その想いは、とても美しいものだと思うよ」
「ありがと」
橘君が微笑みを浮かべる。
「でも、その想いを佐伯さんは受け止められない」
そう言われて橘君がうつむく。
「そや、うちの気持ちをぶつけたら、なのちゃんは困ってまうねん」
「だから我慢したんだ?」
「そや、うちは我慢した。これからも我慢すんねん……」
「そうやって我慢するって決めたことは、とても尊いことだと私は思うんだ」
その声に橘君は顔を上げて相手の目を見た。人見知りのはずの伊奈も視線を外さない。
私は口出しせずにはいられなかった。
「でもそんなの長続きするわけないよ。そのうちまた、好きだなんだって菜ノ花を困らせるんだ」
「我慢するのは大変だよ? 縁さん」
静かに語りかける伊奈。
「でもうちは我慢すんねん。ずっとずっと我慢すんねん」
「私はずっと我慢する必要はないと思うよ」
「伊奈、何言ってるんだよ」
「でも、我慢せな、なのちゃんは困んねん」
「縁さんの想いはそのうち変わると思うんだ」
「そんなことあらへんっ! うちはなのちゃんのことがずっとずっと好きなんやっ!」
橘君の叫びは悲痛なものだった。
「縁さんの想いはもっといい方に変わるはずだよ。佐伯さんが大事って想いだけが残るんだ」
「好きって気持ちはなくなんの?」
「かもね」
「そんなん、嫌や……」
悲しげな橘君の目を見ているうち、私の胸も痛くなってきた。
「佐伯さんが大事って想いは変わらないから。我慢なんてしなくていい。代わりに今を受け入れてみようよ。それで変わってしまうところもあるけれど、君がしっかり掴んでいれば、一番大事なものは絶対に変わったりなくなったりしない。だから、今を受け入れてみようよ」
橘君がまたうつむく。伊奈の言葉は届いているのだろうか。
「うち、我慢するんは結構キツいねん」
「我慢せず、受け入れてみようよ。すぐには無理だとしても」
「うん……なのちゃんが大事なんだけは変われへんもんな?」
「じゃあさ、菜ノ花が男子の彼氏作るとかオッケー?」
私の声に顔を上げた橘君は、まだまだつらそうな表情をしていた。私は目を逸らさず彼女の言葉を待つ。
「うん、うち……」
「縁! 縁、どうした?」
いきなり現われた菜ノ花が、前のめり気味に橘君の前に跪いた。
「なのちゃん……」
「泣いてんじゃん! また咲乃先輩?」
橘君が正直にうなずいた途端、菜ノ花は立ち上がって私を睨み付けてきた。向こうの方が五センチ背が高い。
「ドウドウ、落ち着け、菜ノ花」
「何でいっつもそうなんですか? 先輩は!」
目を見開いて怒鳴りつけてきた。
ヤバい、いつになくキレている。
「いや、だってさ……」
「かわいそうに目が真っ赤じゃないですか! 髪だってボサボサじゃないですか! どんだけ泣かしたらああなるんですか!」
「いや、橘君がガン泣きするのはいつものことじゃん」
「そうですよね! いっつも先輩、縁のことガン泣きさせますもんね! 今まで先輩だからってはっきり言いませんでしたけど、縁を悲しませるようなことはやめてくださいよ! ホントはすっごく嫌なんですよ、縁が悲しむとこ見るのっ!」
「でもさ、誰かがこの子を止めないといけないんだよ。菜ノ花をガチ百合の毒牙にかけるわけには……」
「私の心配なんて結構です! 上等ですよ! ガチ百合上等ですよ!」
「落ち着け、落ち着けって、菜ノ花」
私に対しては万事気弱な菜ノ花が、ものすごい怒気をぶつけてくる。マズい、どうしよう……。
「縁、立って!」
「う、うん……」
菜ノ花が橘君を引っ張り起こす。
「ガチ百合なんて上等ですから、先輩」
私をひと睨みした菜ノ花が、橘君の両頬に手を添えて顔を近付けた。そして私に見せつけるようにキス。
「あぁ……」
まだしゃがみ込んでいた伊奈が息を吐く。私はいますぐ泣きたくなってきた。これで全部がご破算だ。
二人のキスはなかなか終わろうとしなかった。橘君は菜ノ花の背中に腕を回し、もう離れないようにぎゅっとしがみついている。
「おお、すげぇ」
呑気に言うのは後藤だった。
「あ、後藤。あんた、もう帰れ」
「え? デートは?」
「あれ見て分かんないのか? 今度私がデートしたげるから、それで手を打ってよ」
「マジっすか! ラッキー! じゃ、お先失礼しまっす!」
ご機嫌でどっかへ行った。あの脳天気が今はひたすら腹立たしい。
「いい仕事するねぇ、サキちゃん」
私の肩に腕を置き、意地悪げな笑みを浮かべたのは文香の姐御。
長い長いキスを終えた菜ノ花と橘君は、二人連れ立って駅へと消えた。そのまま駅向こうの橘君の家に行くんだろうけど、今のテンションで一気に突っ走ったりとか大丈夫だろうな?
「ま、縁ちゃんが相手ならオッケーかな」
「あなた、ホントに母親ですか?」
がちゃんとジョッキをぶつけ合う。
ここは商店街の端近くにある串カツ屋。まだ真っ昼間ですが、飲まないとやってらんないっすよ。
姐御と伊奈は前にも引き合わせている。人見知りの伊奈は押しの強い姐御が苦手なようで、この残念会への参加も渋ったのだがどうにか連れ込んだ。
「君のせっかくの説得も台無しにしちゃってゴメンね」
と、テーブルを挟んで斜め向かいに座る伊奈へ軽く手を上げる姐御。どうも詫びが軽い。
「まぁ、それでも橘さんは分かってくれたと思いますよ?」
「だよね、君の思いやりは伝わったはずだよ」
「そうなのかなぁ~」
あのキスの破壊力を二人は甘く見ていないだろうか? あれで橘君はメロメロのデレデレ、全部リセットになってしまったとしか思えない。
「それにしても、咲乃相手にあんなけマジギレした佐伯さんは初めて見たよ。土下座でもしないと許してもらえないんじゃない?」
「まったくもってそれですよ。今回だってあの子のために頑張ったのに、全部裏目で終わっちゃいましたからね。しかもあんなけ怒られて。何なの? 私」
ぐいっと生ビールをあおる。
「先輩の心、後輩知らずだねぇ。でもそのうち分かってくれるって。サキちゃんは毎度悪気なしなんだもん」
「ていうか、橘君にチクったの姐御ですよね?」
「そうだよ」
しれっと言っちゃった。
「いやいやいや、手出ししないって約束してくれましたよね? 私がお店のお手伝いする代わりに」
「ん? サキちゃんの集客力は魅力だ、とは言ったけど、その条件でオッケーはしてないよ。サキちゃんが勝手に早とちりして話進めちゃったけど」
「えっ! そうでしたっけ?」
「初歩的なミスやっちゃったねぇ」
にやりと笑う姐御。してやられた、姐御はこういうのが大好きじゃないか……。
「はぁ……でもなんでなんすか? 黙っててくれれば、うまくいったかもしれないのに……」
「うーん、菜ノ花じゃないけど、縁ちゃんの悲しむ顔は見たくなかったってとこかなぁ」
「じゃあ、最初から止めてくださいよ」
「サキちゃんの言うことにも一理あるからねぇ。これでもどうしたもんだか割と悩んだんだよ?」
そうなのかなぁ、すごい涼しい顔してるんだけど……。
「はぁぁぁ……、でも姐御の裏切りがなくても結果は同じだったのかな? 何ていうか、すごい力不足を感じますよ。私って結構成長して周りのことも考えられる女になったはずなのに、全然あの子達の気持ちを分かってあげられてなかったんだ。あの菜ノ花の私を睨み付けた時の目……」
菜ノ花のためを思ったつもりだったのに、結局二人のお互いを思い合う気持ちを踏みにじってしまった。菜ノ花の怒りを受けて、ようやく私はそれに気付いた。
「咲乃の場合、ちょっと成長したとこで、まだまだ人並み以下だもんね」
「やめて伊奈、今マジでヘコんでるんだから。伊奈の方がよっぽど成長してるよ。すごい人見知りだったくせに、橘君とちゃんと向き合ったりしてさ」
「あの二人は私にとっても一応後輩だからね。ホントのところ、私は余計なお世話なんて焼く気はなかったけど」
「余計なお世話とか言わないで……」
テーブルに突っ伏してしまう。
「成長なんて言いながら、私にはべったりのままなんだから。ちゃんちゃらおかしいってのは、このことだ」
「ねぇ、伊奈。なんでそう追い打ちばっかかけてくんの?」
「ん? 反省が成長を促すんだよ」
顔を横向けて伊奈を見ると、底意地の悪い笑みなんて浮かべている。
この子、怒っちゃってる? そうかもしれない。いつものことと言えばいつものことなのだけど、散々彼女を振り回してしまったのだ。
まぁ、それでもすぐに許してくれるんだけどね。駅前のカフェのケーキとかそんなんで。私達はいっつもそんなかんじ。
「サキちゃんって、今年で二十一だっけ?」
「そうですよ」
どうにか上体を起こして姐御と向かい合った。
「じゃあ、まだまだじゃん。これからもっともっと成長してくよ。何回も何回も失敗しながらさ」
文香の姐御が、いつもの活力あふれる視線を私に向けてくれた。見てもらうだけで力が沸いてくるのを感じる。姐御はこうやって優しく私を見守ってくれているのだ。
「そうですね、姐御がそう言うんなら……」
「ここのどて焼きおいしいですね。咲乃も食べなよ」
伊奈が串カツ初体験の私に牛スジの煮込みを勧めてくる。なんか、見た目悪くて食べる気しないんだけど。でもせっかくの親友の勧めだし……。
「あ、おいしい」
「とりあえずおいしいもの食べて、もやもやを晴らしなよ。愚痴もいっぱい聞いたげるしさ」
「ありがとう、伊奈~」
隣に座る伊奈の首にしがみつく。ぐいぐいと頭を押し返されるが気にしない。
「あ、これ以上の愚痴は私がいないとこでしてね。うじうじしたの聞きたくないから」
「自分にも責任あるくせにっ!」
びしっと指さしても姐御は平気な顔をしてジョッキを傾ける。
「はいよ! 串カツ、豚カツ、なんこつ、キス、うずら、なすび、アスパラ、トマト!」
大将が串カツを持ってきた。さぁ、食べるか。
「ていうか、アスパラとかトマトとかおいしいの?」
「食べてみなよ」
伊奈が差し出してきた串をひとかじりする。お、意外にいけるね。
「なんか、君らも大概べったりだよね」
「私はうんざりなんですよ」
「またそういうこと言うでしょ~、伊奈~」
伊奈の身体に肩をぶつける。
「私の前でいちゃいちゃするな。まぁ、君らくらいが落としどこかなぁ」
姐御が背を伸ばしながら私達を見回す。その視線には温かいものを感じる。
「あれ? 今回でガチ百合サイドに落ちたんじゃないんですか、あの二人?」
実に不本意ながらもそんな結果に終わってしまったはずだけど。
「違うよ。今日のとこはまだまだ親友同士だから。ただちょっとスキンシップが過剰な」
「そうなんだ?」
私はあいかわらず人情の機微が分かっていない。
「橘さんの恋心も、そのうちうまく昇華できると思いますよ」
伊奈がうなずく。
「どんな形であれ、あの子達には幸せになって欲しいよ。私には、そう願いながら見守るくらいしかできないけどね」
「姐御ならいろいろできそうな気もしますけど」
「そうだねぇ、時に手助けするにしても、誰かさんみたいにやらかさないよう気を付けないとねぇ」
などと意地悪げに口の片端を上げる。
「マジで今回みたいなのはもうやめるですます」
深く頭を下げる。
「そんなこと言わないでって。やらかさないサキちゃんはサキちゃんじゃないよ。今回のことだって、娘のために頑張ってくれてすごくうれしいんだから」
「ホントですか?」
顔を上げると文香の姐御が柔らかな笑みを見せてくれた。
「ホント。そんなサキちゃんが、私は大好きなんだよ」
「姐御~!」
「やめろ、私には旦那がいるんだ」
感極まって姐御に抱き付こうとしたらひじ鉄を食らった。
そうか、そうだよね。私はまだまだ頑張れる。もっともっと成長して、これからいろんな人に幸せを振りまくんだ。
頭をさすっていると私のスマホからコール音。
「お、菜ノ花からだ」
「クレーム?」
と、伊奈。
「詫びでしょ?」
と、姐御。
「わ~、ドキドキする」
スマホを耳に当てると菜ノ花の声。この後輩は相変わらず不器用で、へどもどとクレームとも詫びともつかない言葉を延々聞かされた。
でも最後に。
『つまりその、何が言いたいかっていうと……。咲乃先輩、いつもありがとうございます』