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ある日の『上葛城商店街』  作者: いなばー
今日も、あの人に(縁)
18/60

今日も、あの人に

 うち、橘縁は今日も愛するなのちゃんのところへ。

 そしたら彼女は男子と出かけているというではないか。なのちゃんにそんなことをさせてはいけない。

 うちは彼女の帰りをじりじりと待つ。


 「ある日の『上葛城商店街』」の、「自分では光れない月だけれど(菜ノ花)」の続きです。だいたい二週間後くらいの話になります。


 なお、今回は縁視点ですが、地の文は標準語訳されております。全部が大阪弁だと読みにくいので……。


 その縁は百合なので、苦手な方はご注意ください……



●登場人物

・橘縁 : 登場作「ふくれっ面の跡取り娘」

・佐伯菜ノ花 : 登場作「ふくれっ面の跡取り娘」

・佐伯文香 : 登場作「ふくれっ面の跡取り娘」

・佐伯久秀 : 登場作「ふくれっ面の跡取り娘」

 じりりじりりと鳴る目覚まし時計に手を伸ばす。これを止めるスイッチは後ろにあって分かりにくい。

 その方が目も覚めていいだろ? あの人はそう言った。

 そもそも誕生日のプレゼントに目覚まし時計だなんて気が利いていない。あんまりにも寝坊が多いからって、気が利いていない。まぁ、あの人がロマンティックな思い出になるような品を寄こすだなんて、あり得ないけど……。

 今は……十一時。うーん、まだ寝ていたい。夜更かしして寝たのは朝なんだし、今日はバイトもないんだから。

 でも……そうだな、あの人の顔をもう三日も見ていない。会いたい……会いに行こう!

 掛け布団をはね除け身体を起こし、まずは目覚まし時計を止める。ロココ調なのにプラスティック製。ロココ調って何? あの人はそう言った。学校で習ったでしょ?

 顔を洗ってお昼ごはんを食べて。さて、今日はどんな服を着て出かけようか。あの人にどんな姿を見てもらいたい?

 たまにはボーイッシュ? ただのパンツじゃなくて少し短い丈のパンタクールなんてどうだろうか。いいや、やっぱりかわいらしさ重視! ひらりと広がるゴデットスカートがいいかも。いっそ、ショートパンツで足を見せたり? ……いいや、あの人は素足には興味がない。タイトスカートは……前に穿いたらげらげら笑われた。オトナぶってるだなんて。やっぱりラメ入りはやりすぎだったか。結局ワンピース? 暑くなってから多いんだけど。あ、これがいい! 膝上のジュップキュロット。パリのお祖母ちゃん(マミー)のお下がり。これにノースリーブのシャツを合わせて、やっぱりマミーのお下がりのベレー帽とポシェットを。

 よし、これで行こう!


「ほなお母はん、なのちゃんのとこ行ってくる!」


 勢いよく家を飛び出す。




 まずはうちの家から駅まで歩いていく。なのちゃんの家はそこから陸橋を渡った先の商店街にあった。

 田舎らしいセミの多重奏。日傘越しでも昼過ぎの日差しはきつい。この花柄の日傘はお気に入りだけど、効果は今ひとつかもしれない。かといって性能がよくてもかわいくなければ使いたくなかった。あ、そうだ、今度いいのがないか、なのちゃんと一緒に探しにいこう。おでかけのいい口実だ。

 制汗スプレーは性能重視だけど、それでもじんわりと汗がにじんでくる。汗まみれでなのちゃんに抱き付くのは憚られるな。まぁ、向こうもお仕事中だし大抵汗はかいているのだが。とても、いい匂いがする。

 商店街の中に入ると店員さんが「よう!」なんて声をかけてくる。ここには随分と入り浸っているので、名前はともかく顔はよく知られているのだ。見た目白人のうちは、こんな田舎ではことに目立つのかもしれない。

 うちは自分の見た目は割と好きだ。小さい頃はこれでいじめられもしたし、古い商家である母方の親戚は外人顔だなんて陰口を叩いたりもする。でも、なのちゃんはこの金髪を褒めてくれた。琥珀色の瞳がきれいだと言ってくれた。だから、うちは自分の見た目が好きだ。

 最近はファッションの研究を兼ねて大学の友達と都会に行くことが多いが、そうするとナンパだとかモデルのスカウトだとかに遭遇する。

 うちがキレイだとは昔から知っていたが、近頃はさらにキレイになっているらしい。

 でも、千人の男からキレイと言われようが、なのちゃんにかわいいと言われなくては意味がない。そしてなのちゃんはかわいいときっちり言ってくれる人だ。言われたうちは幸せでいっぱいになる。

 今日もまた、なのちゃんにかわいいと言ってもらうためにうちは頑張った。さて、なのちゃんはなんて言ってくれる?




 お花屋さんが見えてきた。逸る心を抑えながらゆっくりと歩いていく。

 なのちゃんの姿が見えない。お店の中かな?


「よう、縁ちゃん。菜ノ花はいないよ」


 なのちゃんのママンたる文香姐さんにそう言われた。


「こんにちは、文香姐さん。なのちゃん、どっか配達ですん?」

「ん? ちょっとしたデート」

「え?」


 文香姐さんはものすごく簡単に言ったが、うちにはその場にへたり込みたくなる程のショックだ。


「まぁ、ただの散歩だけど。お客の青年が菜ノ花に惚れちゃってねぇ。断ったらえらいヘコんじゃってさ。しゃあないからちょっとそこら辺を散歩させることにしたの」

「なんですん、それ?」


 うちの言葉はどうしてもきつくなる。


「まぁ、心配いらないよ。もうすぐ帰ってくるはずだし」


 呑気な調子でそう言う。全然危機感がない。


「そんなん、あきまへんやん! 男の人とデートとかお散歩とか、なのちゃんにそんなんさせたらあきまへんやんっ!」


 日傘の柄を両手でぎゅっと握りしめながら声を絞りだす。


「心配いらないって。あんまり過保護なのも考えものだよ?」


 文香姐さんがうちの方に近寄ってきて、肩へと手を伸ばしてきた。

 うちはそれを払い除ける。


「なのちゃんがどぉゆう人か分かったはるでしょ? 絶対ダメですって、 そぉゆうの! なのちゃん傷付いたらどぉしますんっ!」

「そんなことにはならないって。いいから中で待ってなよ。外は暑いし」

「うち、外で待っとく。文香姐さんの顔なんか、見たぁないっ!」

「嫌われたもんだ」


 頭をかきながら文香姐さんはお店の中に消えた。言いすぎたかもしれないが、ここでうちはきっちり怒らないといけなかった。

 こういうことは前にもある。森田の奴が策動して、なのちゃんにデートをさせたんだ。あれも文香姐さんは見逃した。後になって問い詰めても、あんなのただのお遊びだと取り合わない。あの人は本当に母親なのだろうか? あまりにも危機感がなさすぎる。

 お花屋さんに背を向け、うちはなのちゃんの帰りをじりじりと待った。何もありませんように……。




 どれくらい待ったか分からない。十分程度の気もするし、三十分以上の気もする。ようやくなのちゃんの姿が見えた。

 なのちゃんは一人だ。


「なのちゃん!」


 うちは日傘を放り捨て、汗まみれなのも構わず彼女に抱き付いた。


「おう、来てたんだ、縁」

「なんもなかった? なんもなかった?」

「なんもっていうか……、ただ散歩してきただけだよ?」

「相手の人は?」

「ああ、話はもう聞いてるんだ。その人とは途中で別れたよ」


 なのちゃんはいつも通りの様子だ。でも、途中で別れるなんておかしい。


「なんかあったんやろ?」

「なんも? 普通に川の方まで散歩しただけ」

「どんなお話したん?」

「ん? 大学生だったから、大学ってどんなふうなのか聞いてた。私高卒だし。向こうは奥手っぽくてこっちから話振らないと会話にならなかったね。苦労した」


 愛想のいいなのちゃんのことだから、あれこれと会話を盛り上げようとしたことだろう。でも、なにかがあったはずだ。


「それだけちゃうやろ?」

「うーん? ああ、河原で死にかけの野良猫見つけちゃったんだよ」

「野良猫……」

「そう。私は放っておこうって言ったんだけど、その人は見届けたいって言ってさ。まぁ、優しい人だよね」

「それで、見届けたんや?」

「うん、その人、死ぬまでずっと撫でてた。哀しそうな目で」


 イヤな予感がしてくる。なのちゃんから身体を離してしまう。


「……そん時、なのちゃんはどうしてた?」

「私? 彼が撫でてる間、死んだ後はどこへ持っていけばいいかスマホでググってた。役場に連絡したら処理してくれるんだってさ。結局はその場に埋めたんだけどね。そこで彼とは別れたよ」

「そっか……」


 やっぱりだ。なのちゃんは、またやってしまった。

 この子は人を愛せない。人を愛せないってことは、何も愛せないってことだ。だからこういう時、普通の人のように振る舞えない。

 お花屋さんで働くなのちゃんは、とても大事そうにお花の世話をする。お花が大好きなのだ。

 なのに期限が来て捨てることになったお花は、何のためらいもなしに踏み折ったりする。当然そういうお仕事なのだし、処分はしないといけないのだが、あまりにも冷たい態度だった。

 悪意は何もない。ただ、普通の人なら自然に沸いてくる愛情が、この子には欠けているのだ。

 なのちゃんのそういう面を垣間見てしまった相手の男の人は、二度とここには来ないだろう。


「はぁ、疲れた。ただの散歩とはいえ、男子と二人っきりとか大変だよね。私はやっぱり、縁といるのがいいよ」


 なのちゃんが笑いかけてきたので、うちも精一杯の笑顔を見せる。


「そやで、なのちゃんは、うちがおればそんでええねんで」

「でも、付き合ったり結婚したりはしないからね」


 私の頬に軽く触れたなのちゃんの手は、いつものように温かかった……。




 それからお店が閉まるまで、邪魔にならないよう気を付けながらなのちゃんにまとわりついた。どうしても今の彼女から離れたくない。


「よーし、もういいぞ。先に上がってな、菜ノ花」

「はいよ、お先に~。じゃあ、部屋に来なよ、縁」

「うん。今日お泊まりしてええ?」

「いいよ、泊まっていきな」


 文香姐さんが勝手に答えた。


「じゃあ、そうしようか、縁。明日バイトは?」

「お昼からやで」

「いいなぁ、夏休みの大学生。気楽なもんだよ」

「んなことあらへんて、失礼ひつれいな!」


 なのちゃんの背中を叩いてやる。

 上がり込んだお部屋は相変わらず殺風景。かろうじてあるぬいぐるみやクッションは、全部うちがプレゼントしたものだ。こういうのをちゃんと置いてくれているのを見るたびに、うちはうれしくなる。


「シャワーしてくるよ。縁もするでしょ?」

「うん、一緒に入ろ?」

「ダメだ。最近の縁は暴走しがちだからね。私の裸を見たら、ガチで襲ってくる」

「そんなんせぇへんもん。そもそもたいした身体やあらへんやん」

「あんたにだけは、言われたくない」


 と、うちの胸の辺りを手のひらで押してくる。どうせペタンコですよ。


「じゃあ、覗くなよ」


 などと失礼なことを言い残して、なのちゃんが消えた。うちを何だと思ってるんだ。

 しばらくして出てきたなのちゃんと交代でうちもシャワー。今日は随分と汗をかいてしまった。切羽詰まっていたとはいえ、こんな汗まみれでなのちゃんに抱き付いたのはマズかったか。どう思われた?

 しょっちゅう泊まっているうちの着替えは、寝間着も含めてこの家に常備されている。それを着てなのちゃんの部屋へ。

 なのちゃんはくったりと仰向けでベッドに横たわっていた。


「お疲れ? なのちゃん」

「まぁ、そうかもね。私、またやらかしたみたいだし」


 なのちゃんが顔だけ上げてこちらに向けてきた。うちは努力してつらい顔を見せないようにする。


大丈夫だいじょぶやて。なのちゃんはなんも悪いことしてへん」

「野良猫は、私も死ぬまで見守るべきだった?」

「……そやね。うちならその男の人と、一緒に撫でたげる」

「なんでそうしなかったんだろ? 後になって思い返したら、自分がマズいことしたって気付くんだよ。今日は縁が悲しい顔してたから気付いたんだけど」

「そっか……」


 気付いてしまったらこうやって後悔するのだから、気付かないように誤魔化すべきだった? でも、何も気付かないままだと同じ失敗を繰り返す。

 どうしたらいいのか、いつもうちは迷ってしまう。


「私は人を愛せない。つまりそれは、何も愛せないってこと。私の態度が時々おかしいのは昔からだ。普段やたら愛想がいい私のそういう冷たい面を見て、大抵の人はぎょっとする。それで離れていく場合も多い。今回もそうか。そんな私を、縁はずっとかばってくれたよね?」

「なのちゃんの悪口()う奴は、絶対に許さへんもん、うちは」

「ホントは縁にも気付かれたくなかった。ただ時々おかしな奴、程度で終わらせたかったんだよね」

「うちが……なのちゃんを愛してるから。そやから、なのちゃんは愛ってもんに向き合わなあかんよぉになった。……そっか、うちのせいなんや」


 うちはうなだれてしまう。


「違うよ」


 なのちゃんが身体を起こす。真剣な表情でうちを見つめてくる。


「縁が私のことを本気で好きだって言ってくれて、そこから私は自分と向き合うことにした。自分を誤魔化すなんて真似を続けないですんだ。縁のおかげだよ、ありがとう」

「うん、どういたしまして」


 うちは微笑んで、なのちゃんに抱き付いた。なのちゃんも優しくうちを受け止めてくれる。

 こうしていると、二人の気持ちが通じ合ったような気がしてくる。それは錯角かもしれないけど、うちは二人のつながりを信じていたい。


「おーい、ごはんだよ~」


 いきなり部屋の扉が叩かれた。文香姐さんだ。


「夕飯だってさ」

「あの人、もうちょお、空気読んでもええんちゃう?」

「そういう人だもん」


 うちが膨らませた頬を、なのちゃんが指で突いてくる。




 夕ごはんは焼き魚だった。前にうちがここで料理して失敗したのと同じもの。嫌がらせ?


「睨まないでよ、縁ちゃん。魚なのはたまたまだから」

「そやろか?」


 普段は好きな文香姐さんだけど、今日に限っては嫌いたくなってしまう。


「今日のことは悪かったって思ってるよ。うーん、ちょっと失敗したね」


 と、お箸を持ったまま頭をかく姐さん。行儀が悪い。

 でも、なのちゃんの失敗にはちゃんと気付いてくれているようだ。そういう点、この人は立派な母親だ。


「私もいつまでもデートひとつできないなんて、どうかと思うんだけどねぇ」

「いや、うち以外とデートとかしたからあかんねで? 分かってる?」


 なのちゃんを睨み付けてやると、向こうは肩をすくめる。


「でもさ、今日みたいなシチュエーションでデートとか、これからもあるかもしんないじゃん」

「商店街にはお節介が多いし、お見合いとか仕掛けてくるしね」

「え~」


 そんなお見合いだとか初耳だ。


「デートや見合いなんて、無理にする必要はないだろ?」

「そやそや、なのちゃんのパパのうとおりや」

「久秀君は子離れの時期だね。縁ちゃんのはただの独占欲だし」

「そんなんちゃいますよ。今日かて、なのちゃん後から傷付いたんでっせ? そぉゆうん、許せませんて」


 うちがそう言うと、なのちゃんはそっとうちの手を握りしめてくれた。思わず顔が赤くなってしまう。


「縁が私のことを一番想ってくれてる。それはよく分かってるよ」

「え? ちょっと待って、私は?」

「文香姐さんより、うちですわ。やっぱなのちゃん、うちと結婚すべきやって。結婚しよ?」

「ごめんね、縁。私は誰とも結婚しないんだよ」


 なのちゃんがうちの目をしっかりと見て言う。またダメか。


「あのさ、縁ちゃん。ひとんちの団らん中にプロポーズしないでよね」

「嫉妬でっか? 嫉妬でっか、文香姐さん?」


 うちは胸を反らせて立ち向かう。


「ちっ! 今日は負けてやるけど、いつまでも調子に乗るなよっ!」


 きつい目で睨んでくる。怖い怖い。


「ま、勝敗はともかくとしてさぁ……」


 文香姐さんが背筋を伸ばす。その視線は優しいものになっている。


「あんたら二人は、これからもいろんな障害にぶつかっていくはずだ。そん時、ふたりで力を合わせて乗り越えていって欲しいと私は願ってる。縁ちゃん」

「はい」

「これからも、菜ノ花をよろしくね」


 そう言って、深く頭を下げきた。


「はい、なのちゃんは、うちが絶対に幸せにします」


 うちも深いおじぎをする。

 なのちゃんが、うちの肩をぎゅっと抱いてくれた。




 そしていつも通りなのちゃんのベッドで二人並んで寝ることにする。

 なのちゃんがうちの顔をじっと見てきた。


「また、プロポーズ断っちゃったね」

「そやなぁ。でも、うちは全然平気やで?」

「そっか、じゃあ、また次も断るよ」

「うん、そんでええよ。うち、メチャ幸せやわ」

「断られるのにねぇ」

「この前のデートでいたいこと全部()えてよかった。開き直りってすごいわぁ……」


 一生言えないと思っていたプロポーズを言えたのだ。

 それだけじゃなく、二人の立場をはっきりと理解し合えた。これからは、うちは遠慮なくプロポーズが言えるし、なのちゃんは遠慮なくそれを断れる。うちもただの親友は拒否するけども。

 それもこれも、なのちゃんがうちの気持ちを吐き出すよう、言ってくれたからだ。

 なのちゃんはうちを愛せないのかもしれない。でも、とても大事に想ってくれている。

 それが今はうれしい。

 不意になのちゃんが涙をこぼし始めた。


「どおしたん? なのちゃん……」


 その頭を撫でてあげる。


「縁の……縁の願いなら、何でも叶えてあげたいのに……たったひとつ、一番の願いだけは叶えてあげられないんだよ、私って奴は……」


 なのちゃんの涙がぽたぽたと布団に落ちる。

 うちは身体をずらし、なのちゃん背中に手を回した。向こうも身体を寄せてくる。


「そこでゴメンてうたらあかんで、なのちゃん」

「うん、そうだったね。こんな私を好きでいてくれてありがとう、縁」

「どういたしまして」


 今、うちの腕の中でなのちゃんが震えている。この子がどんな目に遭おうとも、この子からどんな目に遭わされようとも、うちは、うちだけはこの子を愛し続けるんだ。

 義務感なんかではなく、庇護欲なんかではなく、当然独占欲なんかじゃない。うちがなのちゃんを愛するのは当たり前のこと。うちたちが生まれる遙か前から決まっていた運命なのだ。うちはそう思う。

 なのちゃんの嗚咽が徐々に収まってきた。このまま寝てしまいそうだ。

 穏やかな表情に移り変わる様を眺めていると、ふっと開いた目がこちらを向いた。


「どした? なのちゃん」

「縁に言うの忘れてた」

「何?」


 なのちゃんの口元が緩む。


「今日の服、かわいかったよ」

「ホンマ? ありがと!」


 心の中で、ガッツポーズ。


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