第壱話 竜宮島到着
星咲の計画とは。
竜宮島とよばれる孤島に僕と姉貴を招待してくれるらしい。
その島は、なんでも星咲の友達の持ち物らしく無理がきく、と。
簡単な宿泊施設みたいな事をやってるらしい。
変に顔が広いからな。星咲。
そこへ向かうバスの中。そして船の中。
星咲は、まるで僕が存在しないんじゃないかくらいの勢いで姉貴にくっついていた。
それこそ、一秒たりとも姉貴のそばを離れない。
「・・・星咲ちゃん」
「そんなお姉様。私の事は『さしほ』と呼んでください☆」
語尾を上げ、カワイコぶっている。
「・・・はじめてみたぞ。星咲のそんなキャラクター」
「ところでお姉様」
はいはい。
僕のことはシカトなのね。
「今向かっている竜宮島というところは、本当に孤島です。孤立してます。孤独です。バスは一日一度来る村はまだマシで、あの島への連絡は三日に一回の連絡船しかありません。もちろん、信号なんてありませんし、バーも喫茶もありません」
「・・・星咲が吉幾三さんを好きなのは良くわかったよ」
「それでお姉様」
はいはい。
やっぱり僕はシカトなのね。
「あの島には何故か変人があつまるんです。ちょっと常人とはちがう人たち。例に漏れず、今回もそういう人たちが宿泊してるみたいです。」
「・・・ふぅん?」
「自称『画家』。自称『科学者』。自称『音楽家』。そして、自称『名探偵』」
「ぶっ!」
姉貴は、飲みかけていたコーヒーをマンガのように吹いた。
「ゴホゴホ。・・・あ〜、さしほちゃん」
「なんですかぁ?☆」
「うん。あのね、『名探偵』って、この世に存在していたんだ?」
・・・まったく同感です。
つか、『名探偵』って、音楽家や科学者や画家と違って、自称するもんじゃないと思うんだけど。
「なんだか、その4人はお友達グループらしいです。みんなそれぞれに怪しいんですけど、実績が無いわけではないらしいですよ」
「・・・いや、だからって名探偵はないと思うよ。アタシ」
「うん。僕もそう思う」
「まぁ、会ってみれば意外と凡人かもしれませんけどね☆」
・・・・・・・
着いてみて驚いた。
「え?お城?」
って言うのが、僕の一番初めの感想である。
『簡単な宿泊施設』っていうのは、どのあたりを指しているのだろう。
島自体はそんなに大きな島じゃない。
徒歩でもすぐに一周できてしまいそうな感じだ。
しかし、このお城はデカイ。
きっと、誰もが『お城』と聞いて想像する類の、『お城の絵を描いてみて』といわれて誰もが描く類の、そんな建物だ。
「さぁ、入りますよお二方」
呆気に取られている僕と姉貴に、星咲が声をかける。
「あ・・・あぁ」
「おぅ」
姉貴と僕は同時に返事をする。
お城の中もやっぱり『お城』。
ココハドコノクニデスカ?
「さしほさん。お久しぶりです。お元気そうで何よりですね♪」
目の前に、真っ白なドレスのような服を着た女性が立っていた。
その女性の声は、透き通っていてまるで歌っているように話す。
「さしほさん。そちらがお友達の方ですか?」
「その通り。天堂秋羅くんと、お姉さんの天堂愛華さんだよ」
「はじめまして。紅子香楠と申します」
スカートのすそをちょっと持って、香楠さんは綺麗にお辞儀をした。
「はじめまして。天堂秋羅です」
「同じく愛華。よろしくね」
僕たちが自己紹介をしていると、
「あれ〜、その人たちはどなた様?」
と声が聞こえてきた。
「あら。皆様おそろいですね。それではあちらで飲み物でも飲みながらご紹介いたしましょう。さぁ、こちらへどうぞ」
香楠さんについて、僕たちはかなり広い談話室に通された。
椅子に座ると、香楠さんが紅茶を出してくれた。
そして、そこに座った面子を見ると・・・。
なるほど。
一癖も二癖もありそうな面々がそこに座っていた。
「ご紹介しましょう。こちら、私の友人の星咲さしほさん。そしてそのご友人の天堂秋羅さんとお姉様の愛華さんです」
僕たちは紹介されて、ペコッと頭をさげた。
「私の名前は皆色玖子。画家」
ショートカットでちょっと目が悪そうな眼鏡。
少し気難しそうな人っていう印象を人に与える口調をしている。
「俺は鈴灯深夜。科学者」
オールバックにサングラス。
・・・失礼だが、とても科学者には見えない。
ともすれば、チンピラにも見えてしまう。
「栖道着心。音楽家」
髪の長さは玖子さんくらいか。
ハンチングをかぶっているからよくわからないけど。
この人は本当に気難しそうだなぁ。
なんか、自己紹介もぶっきらぼうだし。
なんて思いながら、三人と軽く握手する。
・・・ってことは、この残る一人が『名探偵』か??
「私様が世界に誇る名探偵、威神桜さんさ!」
長い、腰まで届きそうな綺麗な髪。
『美人』というカテゴリーに入る綺麗な顔。
なのに・・・うわぁ。
ちょっとイタイ人っぽいよ。この女性。
自分で『名探偵』って名乗る人、初めてみた。
「さて、自己紹介も済みましたし、さしほさんたちをお部屋にご案内しましょう。皆色さんたちはどうぞおくつろぎになっていてください」
そう言うと、香楠さんは席を立つ。
僕たちもその後に続いて、談話室をでた。
案内された部屋は、超立派。
超超立派。
調度品から何から超一流。
なんか、傷とか付けたら弁償が怖い。
シャンデリアとか超落ち着かない。
部屋の隅に人間が一人丸まって入れるくらいの、それこそドラクエとかに出てきそうな宝箱がおいてあった。
ミミックか??
薬草でも入ってるのか???
香楠さんに尋ねると、
「一応ドアに鍵がかかりますが、気持ち程度のものです。なので、貴重品を入れるのに使ってください」
と、部屋の鍵と一緒にその箱の鍵も渡された。
そうだよなぁ。
この部屋に普通に金庫とかあっても絶対似合わない。
香楠さんが出て行った後、ベットにどっと倒れこんだ。
うぅ・・・。シャンデリアが落ち着かない。
「・・・つか、なんか奇人変人の集まりっぽいなぁ・・・。つか、あの威神とかいう女、胡散臭すぎ」
「胡散臭くて悪かったね!」
「おぁ!」
ドアを見ると、そこに自称『名探偵』威神桜が立っていた。
「・・・勝手に入ってこないでくださいよ」
「みんなまた談話室に来たんだけど、アナタだけこなくてね。あなたのお姉さんが『ははは。アイツ欲求だからさぁ。呼びに行くがてら、ちょっとかまってやってよ』だって」
・・・あのアマ。
「威神さんは、なんで名探偵なんですか??」
僕は、素朴な疑問を口にしてみた。
「あぁ。他のみんなのは職業だけど、私様のはあだ名みたいなものさ」
「へぇ?」
「私様たちは昔からの友達でね。ちょっとした事で香楠ちゃんと知り合って、今回旅行に来たのさ。とりあえず、なんか皆でゲームでもしようって盛り上がってるみたいだから、早く来るといいよ」
それだけ言って、名探偵は出て行った。
なんだ。そんなに悪い人っぽくないな。
僕は独り言のようにつぶやくと、ベットをおりて部屋を出た。




