第零話 プロローグ
『密室』
探偵さん達がその灰色の脳細胞を駆使して解き明かす、アレ。
鍵がかかった部屋の中で起きた事件。
そのトリックは!!
・・・みたいな。
そんな事、実際にあるのかよ!?
どんだけ頭いい犯人なんだよ!?
とか思わずにいられない、アレ。
実際、学校の同級生が密室殺人犯したら、ある意味で尊敬しちゃうよね。
ちなみに僕は探偵でも天才でもない。
まして、『名探偵』なんてものは絶滅危惧種か未確認生物だと思っていた。
実際にはいるわけないと。
・・・いた。
しかも、超身近に。
あんま思い出したくない事だけど、思い出したくない事件だけど、思い出しちゃったから、聞いてみる?
☆★☆★☆★
「・・・・・眠ぃ」
超低血圧。
目覚まし時計の音が何よりも嫌い。
今月だけで、目覚まし何個だめにしたか・・・。
ま、学校なんて行ったってお金になるわけじゃないし、バイトまで寝ようかな。
ちなみに、今日はバイトは無い。
布団にもぐり直す。
と、
「ボケ。さっさと起きんかい!!!」
布団をはがされる。
まぁ、これも毎日恒例の行事だ。
気にしない。
ボカッ
・・・なんの防御もしてない人間の脇腹にパンチは反則だと思うのですが。
「い〜つ〜ま〜で〜寝てる!もう起きないと学校に間に合わないぞ!!!」
「姉貴、会社は?」
「昨日やめてきた。」
「おやすみなさい。」
ボカッ
・・・二発目が入った。
「学校くらい真面目に行けよ。別に苦があるわけじゃないだろう。お友達はいるし、授業中なんて寝てればいい。私だって真面目に勉強しろとはいわないよ。ただ、卒業だけはしろ。」
僕に両親はいない。
死んじゃったんだか、どっか行っちゃったんだか知らないけど。知ろうとも思わないけど。
そのかわり、姉貴がいる。
姉貴が、なんだかんだ言いながら育ててくれた。
・・・ん?
「姉貴、仕事やめたってまさか、ま・た・僕のバイトの給料あてにしてるわけじゃないよね?きっと貯金かなんかあるんだよね?」
「あるわけねーだろ。あんな安月給じゃ生きていくだけでやっとだ」
「じゃぁ、どうすんの?」
「・・・すぐに仕事みつけるから、それまでお前が大黒柱役な」
・・・なんだよ役って。
「あ〜あ〜、お水でもやるかな〜」
ちなみに、姉貴はスタイル・見てくれはとてもいい。
モデル並とはいかないまでも、美人と言って差し支えはない。
しかし、口は悪いし気が短い。
だから上司と喧嘩して仕事をやめてきたのは、これが初めてじゃない。
「・・・と、こんな話帰ってきてからだ。とりあえず、学校行け。」
「はいはい。」
姉貴が部屋を出て行くのを見届けて、着替え始める。
顔洗って歯磨いて髪型を整えて学ランを着て。
途中2度ほど睡魔に負けそうになったが、持ちこたえた。
「んじゃ、行ってくるよ。」
「おう、青春を謳歌して来い。」
学校までの道のりは大した事ない。
原付で15分ってところ。
この原付は姉貴が昔乗ってたのをもらったんだけど、とにかく音が派手。
見た目も派手。
だからたまぁにからまれるんだけど、みんな貼ってあるステッカーを見ると急に敬語になる。
・・・姉貴、昔なにやってたんだろう。
まぁ、特に知ろうとも思わないけど。
駐輪場に原付をとめて校舎に入ろうとすると、後ろから声が聞こえた。
「おや?そこにいるのは天堂くん?天堂秋羅くんじゃないか!!??むむむ!!十中八九天堂くんに違いない!」
振り向くと、伊達の片眼鏡をした、ショートカットの少女が立っている。
彼女の名前は星咲さしほ。
通称『ルパンさん』。
きっと誰かが彼女をからかって呼んだ呼称なのだが、彼女は気に入っていてみんなにそう呼ぶように仕向けている節がある。
「おは。」
「テンションがやけに低いね天堂くん。こんなに素晴らしい朝なのに。」
ちなみに、今日は絶好調に曇天模様だ。
「ほら、太陽だって笑っているじゃないか」
・・・クモノウエデミエマセンガ?
「ところで天堂くん。例の話は考えてくれたかい?」
「あぁ。姉貴とかさそって皆でお出かけしようって、あれ?」
「そうそう、それだよ天堂くん!!」
「あんまし乗り気じゃないんだよね。僕が」
「なぜ?なぜなぜなぜ?私の、この私の計画に何か落ち度でもあるかい???」
ちなみに、星咲は姉貴が大好き。
姉貴にゾッコンLOVEなのだ。
だから、ちょっと意地悪してみたくなる。
「落ち度じゃないんだけどさ、こうゆう旅行的なところにいくとロクな事が無いっていうのは、横溝正史大先生の書籍を紐解けばわかりそうな感じだよね」
「天堂くん。てんどうくんてんどうくんてんどうくん。君はとっても愉快だよね。君は個性的で楽しい事を言う。安心しなさい。もし万が一億が一兆が一、天堂くんが殺されたとしても、この私が必ずカタキをとってみせるから」
・・・カタキをとるというか、殺されないようにしてほしいものだ。
「まぁ、姉貴には了解とってあるよ。楽しみだってさ」
そうつたえた瞬間、星咲が石像のように固まる。
続いて真っ赤になる。
続いて規制しなければならないような奇声を発しながら、校舎に駆け込んでいった。
「・・・お前の方がよっぽど愉快じゃん」
笑いをかみ殺しながら、僕も校舎の中に向かった。




