脅威のネックレスパワーその3
『ガタガタッ』
という音を聞いて私は部屋に近づいたのだが、起きた音にしては大きいし、椅子を蹴飛ばした音にしては小さい。
そんなことを考えながら部屋に入ると、一瞬目を疑った。
テーブルの上に荷物が大量に乗っかっていたのである。
よくわからない物だらけだが服やら瓶の類からすると生活用品のようではあるが・・・。
「ど、どこにそんな荷物があったのかしら?」
とは言ってみたものの、どう考えても彼女は荷物を持っていなかった。そもそも寝巻きに裸足で登場しつつ荷物を持っているなんて不自然なことがあろうか、いやない。あって欲しくない。
『#%&$*☆○』
と、彼女が言っているがやはり聞き取れない。
不審すぎる。と思いながらも荷物は後回しにしてお昼には馬鹿のランシアが至らなかった部分を試してみようとした。
「あー。"はい"ならこのジェスチャー"いいえ"ならこのジェスチャー。わかるかい?」
そう言ってみると彼女は話がなんとなく通じる人と出会えて嬉しいのか、勢いよく頭を縦に振っていたがはたと気付いて"はい"のジェスチャー―\"前に親指を突き出す"を頬を若干赤くしながらしてくれた。
やはり言葉は判っていたのね。
と思いつつ尋問、もとい質問を再開したのである。
30分くらい、はいといいえでできる質問を散々した結果、
彼女はミヤだかミャだかと言うらしいが、もの凄く言いにくい。発音がどうもこちらとは違う使い方らしくて難しい。結局ミーアと呼ぶことにして解決した。
年は見た目より高くて驚いた。小さいから13才くらいかと思っていたら15歳だというのである。
髪の色は地毛―まぁ、染めててもいいわけだけど。
黒くて艶のある髪には少し憧れた時期もある。自分は明るい茶色に少し癖毛だから。
この地方では黒は少ない。ほとんどが茶色で、濃淡が様々である。
一部の家系では金色に近い茶髪や、黒に近い茶色の人も生まれるが色は一歩手前といったところ。
王族だからといってもみんな茶色である。
しかし、突然変異なのかどうなのかしらないが、稀に―それでも少し多くて1000人に1人くらい
金や黒、銀やはたまた赤やら凄い色の子供が生まれる。町に数人そういった人が居るのだ。
御伽噺や昔の英雄や美人で有名な姫には黒や金髪の人が多いのはその種族として優秀な証だ、とは言われているが、確かにその傾向はあるらしい。
だから高いお金をかけて脱色や染色をして誤魔化している人もいる。
とまぁ、そんな憧れの原色の髪の毛を見ていいなぁ、と思ってしまったのである。
その次に、どの血筋?と聞いてみたところいまいち理解できてなかった。どういうことなのだろう。
「さぁ、最後の質問よ。疲れてるかもしてないけど最後だから我慢しなさい。」
「ハイ」
途中で教えた"はい"と"いいえ"の発音はぎこちないながらもなんとか使えるレベルにはなっていて私は内心にんまりしている。
(教え甲斐がありそうでいいわぁ・・・うちに置いて看板娘にしたてあげようかしら。売り上げも上がってウフフフフ)
「サラ?」
おっと危ない。思考が危ない方向に移りそうになっていた。
「家出かしら?」
ミーアは少し考えつつ、少し怒りながら答えた。
(相当怒ってるわね・・・。家出娘か、どうするべきか。)
と考えつつ、次の質問をなんとなく言ってみたが・・・。
「ミーア、家に帰れる?」
と聞いてみた途端ミーアが泣きそうになってしまっている!
「あぁぁ!べ、別に追い出すつもりじゃなくてね。一応確認よ確認!そう!別にうちに置いてもらってもいいと思うし!お金は考えるとして、一応帰れるかどうか確認よ、うん。それにうちの母さんハッキリ言ってなんでもありだからいいと思うのよ。うん。」
慌てて一気に巻くしあげてしまったがミーアが持ち直したのを見てほっとした。
「あぁ、えーと。これで終わりね。あと荷物は・・・まぁ深い事考えないようにするかな。」
と、盛大に詰まれた荷物を見て溜息をついた。
どこに隠してたんだと。それか誰かが運んだのだろうか。
夜の休憩時間にミーアを連れて母の所に連れて行くと、母の好み―小動物とミーアが合致したのかどうかわからないが、大層気に入りミーアはあっさりと居候の権利を得、そしてサラの思惑通りに言葉の勉強プラス看板娘計画と居候代のための食堂のお手伝いが決定し、ベッドの中でニヤニヤが止まらないサラだった。