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幻獣ぱれっと!  作者: 橘 猫音
旅立ち(顔見世的なとかいっちゃダメ)
9/26

酒場にて:鳴葉さんと死神少年の因縁関係

確か、泥酔すると幻覚見えるようになるらしいな…幽霊が見えるとは、そろそろキツいか…


「ギョ…いや、ゴーストよ」


と、酔って頬の火照った鳴葉さんが言う。ろれつが回っていない。今連れ込めば鳴葉さんと、あんなことやこんなことが出来るよなぁ… いやいや、イカンイカン って…ゴーストぉ?


「は? ルーザンマードルにはゴーストなんて平気で居るんですか? 怖…」


それって普段から魂の抜き取りとか頻繁に起きてるって事なのかなぁ… 以外と物騒じゃねぇか。


「ほう? 鳴葉。コイツは男の癖にゴーストが怖いのか? 情けない男だな」


横を向いて話していた俺の横、テーブルのほうからムカつく台詞が飛んできた。 右を向くと、嘲るような冷笑を浮かべた、「少年」がリンゴをかじっていた。黒っぽいドクロのレリーフのついた、深緑のフードを被って…って、そんなことより、今はこのガキに馬鹿にされた事が非常に遺憾だ。


「お前っ! 今俺の事ガキだと思ったろ! これでも俺は1億7200万歳でお前より歳上なんだぞっ 多分!」


1億7200万歳だと? 俺より1億7199万9976歳上… このガキが? 不思議に思っていると、鳴葉さんが種明かしをしてくれた。


「死神年齢1億7200万歳、だけどね。人間年齢にすれば13歳ってとこかな? よちよち(笑)」


「なっ…鳴葉ぁ!」と顔を赤くして、怒る少年。 …って、死神年齢? 死神… こいつ死神なのか? じゃあなんで俺から見えるんだよ。 この疑問は少年がかってに解決してくれた。


「もっ…もとわと言えば俺が死神界から追放されて、冥門(冥界に続く門)を探してたときにお前が転生魔方をかけたんだろっ!」


と死神少年。 なるほど… いや、なるほどじゃねぇけど。


続いて「いやいや、規則を守らなかったお前の自己責任じゃないか。」と鳴葉さん。死神が怖くないんですか? っていうか、規則ってなんだよ。


「んっ! 今お前規則って何って思ったろ! よくぞ疑問を持ってくれた!」


うぉっ… 死神少年の顔が急にパアァッと明るくなる。


「あぁ、折角だから…ってお前、あれか?あの、読心術ってやつか? すげーな」


「おぉ、聞いてくれるのか? だけどな、その『お前』って呼び方やめてくれるか?あと『死神少年』も、俺はリリーム=バルシェンド、呼び方は、リリーでもバルさんでもリリムでも名前が入ってりゃなんでもいい。」


成る程…読心術、名前、死神だというのは本当らしい。 たしか『バル ~ ド』は死神につけられる名前だったはず。 とりあえず俺は「シェンド」と呼ぶことにしよう。


「シェンドか、いい呼び方を考えてくれた。 前だと名乗ってみれば『リリシェ』や『バルたん』などナンセンスな呼び方ばかりだった時期もあったからな…ブツブツ…」


鳴葉さんを横目で睨み、なにやらトラウマを話し始めるシェンド、ていうか心内が読まれてるって落ち着かねぇな… まぁ、とりあえず話をもどす。


「ま、まぁ、色々苦労したんだな…で、なんで追放されたんだ?」


そうだったな、といってシェンドが話し始める。


「まぁ簡潔に話せば、コイツの寿命を伸ばした。」


フッとシェンドの横に突然現れたゴーストを指差し、言う。


「ハァ?…って、うおっ!?」


ビビったぁ…ていうか死神は死んだ人間を冥界に連れてくのが仕事だろ? 寿命を伸ばすなんてできるのか?


「出来るんだよ。まぁ元々は人間の寿命を縮めるための術なんだけどな。 コイツ、今は俺のブラザーなんだけどさ、昔、住職やっててさ、なんか、結婚相手が事故って死んだんだけどさ。その次の日コイツも死ぬ予定だったんだよ んで、まぁその前から気に入ってたんだけどよ。 可哀想で、せめて彼女弔ってやれるよう、つい伸ばしちまった。そんで、原初神(カオス)のおっさんから見つかって追放だよ。 だから自力で帰ってやろうって、冥門探してたら、鳴葉に転生喰らったんだよ。 んで、元々魔力つえーんだからってギルド入れってよ。 マジコイツ死んだら地獄だわ。 寧ろ死ねバーカッ!」


と最後に暴言を吐いて終わりのシェンドの話、成る程…中々胸をつくいい話じゃないかっ… ていうか死神って転生できたんだ。


いい話と思ったんだが、気が立ったシェンドは「シャアーッ」と言い、隣のゴーストに「殺るぞブラザー!!」と言い、空中に飛び出し、くるりと回ったと思いったら、地面に足が着いた頃には、白い大鎌を握っていた。 まぁ、なんにせよ暴力はよくないよなぁ。


「鳴葉! 覚悟しろ!」と言って地面を蹴り、鎌を振りかざし、襲いかかる。(『襲いかかる』は勿論、鳴葉さんを押し倒した訳でも、鎌を使ったSMプレイの事でもない) 目を閉じてビールを飲んでいた鳴葉さんは「ん?」と横目使いでシェンドを見る。振りかざされた鎌を椅子から転がるように避け、ほうきに股がるように鎌の上に乗り、後ろに引くように鎌を奪って肩にのせ、「まだリリシェに私は早いなあ、もうちょっと大きくなってからね(笑)」と妖しく笑みを浮かべ、一言。鳴葉さんって酒飲むとエロくなるんだなぁ…という、知識をまた一つ得た。っていうかさっきの『リリシェ』って鳴葉さんの命名だったんだ…


ちいぃッと『白鎌(ブラザー)』をゴーストに戻し、悔しがり、「親父! 酒だ!」と俺に言う。


しょうがないので、ビールを酒樽から持ってきて、渡すと、シェンドは俺から奪い取るようにビールをとり、一気に飲み干した。シェンドが、余韻で伏せていた顔を上げると、顔は真っ赤で、目もとろんとしていた。 …コイツ酒に弱いのか…


子供の死神が酒盛りに加わって、俺達の夜は更に盛り上がっていく。

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