酒場にて:純白マシンと機械娘の話
「ふ~ 麦100%(ホップ)のビール、久しぶりに飲みましたよ~ やっぱり美味しいですね。」
大分酒場の雰囲気にも慣れてきて、ユーは楽しそうに笑いながら、周りの人達と話してる、俺もそろそろほろ酔いだな、楽しく酒を飲んでいると
ダッダッダッダッ! ガッ! ズザァ、プシュゥ…
大きな音を立て、レンガの街には似合わない、純白の足の長い、全長5~6m位の、近未来的な人型のマシンが酒場に駆け込み、止まった。純白のマシンの見た目からは想像も出来ない元気な女の子響くような声が聞こえる。
「ふぅ~間に合ったぁ あ、やっほー、鳴葉ねぇ! んん?このここらで見ない顔の人達が明日からうちに入るって言う、シュウとユーちゃん? よろしく~」
挨拶された。 しかもシュウって…もう伝わってるし…ていうかユーの名前って空音さんに教えたっけ?
「にゃぁっ… かっ… カッコいいんだよ! よろしくなんだよ~」
目をキラキラさせて、マシンに挨拶するユー 好奇心丸出しの女の子って可愛いよなぁ…
ていうか、「うち」?こいつもギルドのメンバーなのか?
「鳴葉さん? ルーザンマードルのギルドには転生人種と通常人種以外にも機械までいるんですか。すごいですね。」
「ええ、彼女はうちに一人しかいない貴重な『技術者』よ。」
…え? 「一人しかいない技術者」…? たしかこないだ「技術者は12歳だ」とか言っていたような。
「え、メカニックって12歳の『人間』じゃないんですか?」
という俺の質問に、返答の代わりにに鳴葉さんは人工生命体(仮)に向かっていう。
「アルエ、いつまでも入ってないで出てきなさい。」
はいはい~と言い、マシンがガションと音をたて、片膝をつく。
「いや~、入ったままじゃ酒も飲めないもんね~」
プシュぅと音をたてて、後ろに縮まるように伸びた頭部がゆっくりと上に開く。
よっと と言ってぴょんとコックピットから出てきたのは、明らかに季節外れの(因みに今は12月だ)灰色のタンクトップにハーフパンツ、その上に白衣一枚という服装の、薄灰色のショートカットヘアーの上にゴーグルを付けた、いたずらそうな顔の少女だった。
顔にはススが少しついているものの、充分肌の色が白い事が分かる。
「やっほー、シュウ、ユーちゃん、初めましてだね、此方アルエ=ルディアヴァルト、宜しくぅ!」
と左手を腰に当て、右手で敬礼をした後、ピッと指を少し前に動かし、にひっと笑うやいなや、身震いをして、「うへっ…寒ぅ、やっぱりボク着替えてくるね」といってコックピットに戻ってしまった。
「鳴葉さん、このマシン、あの娘が自分で作ったんですか?」
まぁ買ったんだろうけどな、もしそうだったらびっくりだ。
「はいそうです。」
マジで!?
「組み立ては勿論ですが、設計図の製作もアルエです。因みに部品は町工場から特注で作って貰ってます」
マジかよ…天才技術者ちゃんじゃねぇかよ… などと話していると
「ちょっ!? ユーちゃん? なんでコックピットに入ってんの!?」
噂の天才技術者アルエちゃんの声が聞こえる。
「えへへ~、にゃぁ♪ お着替え中失礼します~」
マシンからユーのいつもの能天気な声… いつのまに乗り込んだんだ…
「ちょっ!? どこさわってんの!! ダメだよぉ!!」
「ほよほよ、ユーのよりふにふにしてるのです~」
アルエの叫び声 こんなやり取り、中で何が…ちょっと気になるぜ…
突如コックピットがパカッと空き、ユーが転がり出てきて、しりもちをつき、「えへへ、怒られちゃった」と笑いながら一言。
立て続けに上半身裸で頬を染め、胸を右腕で隠しているのアルエがコックピットから顔を覗かせ一言
「シュッ…シュウ! その娘危険だよぉ! ちゃんと押さえててっ!」
そう言いコックピットの蓋を掴んでバタンと閉めた。
すまんアルエちゃん…ユーは悪気があった訳じゃないんだ、ただ天然なだけなんだ、許してくれ。
マシンから
「シュッ…シュウ! ちゃんと押さえててよ? 中からメインカメラの映像でちゃんと見えてるんだからね! ちゃんと押さえてないと、サイククロティクス02の255mmキャノン砲で酒場ごと爆破するからねっ!」
とアルエちゃんの脅し声が聞こえたので(酒場で飲んでいる人は気にせず楽しそうにしていた)、さすがにユーも大人しくしていたが、一応ユーを膝の上に乗せて押さえておく。
暫くすると、コックピットがゆっくりと開き、巫女服のような配色の袖口の広い、羽衣の様な服に、同じ配色のミニスカートに白のハイニーソという、上半身だけ中々温かそうな格好で、アルエちゃんが出てきて
「ぅ~ さっきはよくもボクの胸を揉んだねっ いつか仕返ししちゃうからねっ」
と一言、第一声がそれですか… ていうか胸揉んだって… まさかユーにはGLの才能が…いやいや、ユーからは大きくなったら「お兄ちゃん、私…初めての相手は…お兄ちゃんがいいな…♪」と言ってもらわねばならんのだからそんなことでは困る、いや、そんなハズは無い!(キリッ)
くふふ…と妄想を広げていると、鳴葉さんが「おや」と言い、
「アルエ、それは神聖な場でのみ着るはずの、グレムリンの正装では?」
と続けた。 ん…? アルエちゃんは通常人種に見えたのだが…
「ん?そーだよ。 だって酒盛りって充分神聖じゃん?」
と愉快そうに、アルエちゃん。はぁ…と呆れたように溜め息をつく鳴葉さん。
「ねぇ、アルエちゃんって転生人種だったの?」
と気になったので、つい質問。一瞬アルエちゃんの表情が変わったので、地雷を踏んだかと焦ったが、怒鳴り声の変わりに彼女の口からでたのは
「そうだよ! ボクは元々機械の民、グレムリンの族長の娘だったんだよ~ えへん。」
と自信満々に返答。「機械の民と言っても機械に悪戯してただけでしょう。」とちょっと酔っ払い、毒づく鳴葉さん。「そんな事いうと技術者辞めちゃうぞっ」とちょっと怒ったアルエちゃん。
「まぁまぁ、そんな碧のお姉さんも機械のお姉さんもケンカしないで、今日は皆で楽しむんじゃなかったの?」
ユーの発言に一瞬ぽかんと場は静まり、そのあとドッと笑いが起きる。
「こんなのいつものことだよ!(笑)」 「キャハハハ、お嬢ちゃん! 可愛いじゃねえか(笑)」 色々な人が口々に言う。
笑いの中でアルエちゃんが椅子の上に立ち、笑顔で声を張り上げて言う。
「アルエ=ルディアヴァルト12歳!! 今日は朝まで飲み明かしまぁす!! 皆さんお付き合い下さいッ!!」
イェェェッ!! と起こる歓声、その後、鳴葉さんが立ち上がり、グラスを高く持ち上げ、声をあげる。
「神よ! 今日もこうして幸せを頂けた事を感謝します! 乾杯っ!!」
かんぱーいっ!!と声が上がる。俺もユーも「乾杯!!」と叫ぶ。 さぁ、今宵の宴は始まったばかりだぜ