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幻獣ぱれっと!  作者: 橘 猫音
旅立ち(顔見世的なとかいっちゃダメ)
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移動中:碧髪の弓師と大蛇の話

彼女と色々な事を話しながら歩いた森を抜けた頃には、延々と続く彼女との問答のお陰もあって、俺も彼女もお互いの事を大分理解していた。


話しによると彼女の名前は人間の言葉に直すと「悠(果てしない、ゆっくりした)」という意味の言葉らしい。本名も名乗って貰ったが、難しくて覚えられそうにない。確か「ルティアメルラ…なんちゃら」だった気がする。まぁ到底覚えられないから、俺は彼女の事は「ユー(ゆぅ)」とよぶことにした。


ユーに俺の名前を教えたところ、必死に俺のあだ名を考えたあげく、結局名前の一部を取り「シュウにぃ」と呼ぶことにしたらしい。

やはりある程度転生後の見た目に年齢は関係あるらしく(1億2000万年生きた魔物境獣が妖艶なお姉さんに転生したこともある、そこら辺は謎なのだが)、彼女の年齢は動物年齢にして1.7歳、人間年齢にして11歳、だそうだ。


更に、人間と幻獣の姿はある程度、自由に行き来出来る事も解った。


そういえば、子供の頃は周りの人からは「シュウちゃん」なんてて呼ばれてたなぁ、なんてしみじみとしていると


「シュウにぃ! にゃぁ! 街だよ街! おっきい街がみえるよ!」


ユーが言った。


確かに3kmほど離れた所の草原の真ん中に低い壁に囲まれた街のようなものが見える。


「今は…夜の10時か。以外と早く着いて良かったな、ユー」


「うん! シュウにぃ速く! 遅いよっ」


いつの間にか黒猫の姿になり、ぴょんぴょん跳ねながらかなりのスピードで走るユー


「走るなよ、転んでもしらねーぞ? !! ユー! あれは… あッ!あぶねぇ!止まれ!」


「へへーん なにも無いところで転ぶほどバカじゃないよー」


あぁ、遅かったか


後ろを見ながら走っていたユーは… 前が見えず不意に野生のボーティス(巨大な蛇の境獣)にぶつかり、思わぬ衝撃によりユーは黒猫から、少女の姿に変わる。


ボーティスは猛毒のキバを持つ大蛇の境獣だ。それこそ…ケット・シーなどキバに触れるだけで死んでしまうような。


「逃げろ! 速く逃げるんだ!」


しかし、ユーが動くよりも速く、ユーは尻尾を巻かれ、締め上げられる。


「しゅ…シュウにぃッ…くぁっ…」


ユーが苦しそうな声で俺に助けを求める。俺は魔式ナイフをとりだし、拘束術を唱えようとする、だが、遅かった。


「ユーーーーッ!!」


俺は叫ぶことしか出来ない。


ボーティスは思わぬ獲物に、毒の滴るキバをむき、少女の姿になったユーに巨大なキバを振り下ろし、キバがユーを貫く。


守れなかった…目を瞑る。キバがユーを…貫く。いや、貫くはずだった。


カカカカンッ その時軽やかな音がした。俺が目を開けた頃にはボーティスの固い鱗に何本もの術式矢(一定時間すると消える矢)が刺さっている。


キュイィッと甲高い声で鳴き、ボーティスがグネグネと動き、ユーは尻尾から放り出され、地面に叩きつけられる。


それとほぼ同時に太いボーティスの胴体の反対側の少し離れた場所から「向こう側の貴方!速くその娘を連れてこっちに!」と、凛とした女性の声が聞こえる。


何が起きたか解らず固まる俺。いや、今は考えている暇はない!! 一気に飛び出し、俺の方に逃げてこようとするユーを抱き上げ、止まらず声のした方に走りだす。


人を抱き抱えたまま最も速く走れる格好、自分の足下だけを見て、前傾姿勢で走り続ける。


13秒程度走った所で人の影を前に確認し、止まる。


「はぁっ…はぁ… 助かりました… ありが…!?」


声の主をみて、述べている礼が一瞬止まる。


私を助けてくれたのは、「緑色のしなやかな髪の、揉み上げと後ろ髪を長く伸ばした、背中にエメラルドグリーンの身の丈程の大きさの翼を持つワイルドチャーム(緑とカーキの弓士用の服)を着た、銀の装飾の施されている弓を持つ、端麗な『美女』」だった。まぁ正確に言えば俺を助けたのは彼女率いる魔法弓士団なのだが。


「礼は良いですから、速く結界の外に出てください。」


俺の足に弓先をむけ、美女が言う。気付かなかった、ハッとして見ると、いつの間にかボーティスを中心に転生方陣が描かれ、ボーティスには拘束術により発生した鎖が絡み付き、動きを封じている。ハッとして方陣から出る。


「それでおーけーです。 では、コホン、神よ、哀れな獣に新たな身体と精神の反転を与えよ!」


美女が呪文を唱える。その瞬間、転生方陣の縁からマーカーグリーンの光がドーム型に広がり、ボーティスを囲う。


ん?なんだろうこの違和感…


光…そうだ、出ている光の色だ。普通の転生方陣から出る光は普通の光だった。それに…この転生、鳴き声も喘ぎ声もその他色々も聞こえない。


結局、何故なのが3分間考え通したが、結論にまでたどり着かなかった。


光が消え、方陣の中に倒れている人の姿が見える。


方陣の中心には、薄紫色のセミショートの髪の、鎧を着た、やや背の低い妖艶な女性が海賊の持つような剣を持って俯せで倒れていた。


「さぁ皆さん、お仕事お疲れ様でした。大物を仕留めたのですから街に帰って…今夜は飲みましょう♪」


美女の呼び掛けに


「いいねぇ! 今夜は飲み明かそうぜ!」


「姉さん(あねさん)が行くなら俺も行くぜ!」


「お疲れぇ!今日は美味い酒が飲めそうだ!」


弓士団の面々がそれぞれ別々にいう。


「それから、転生させた娘はギルドまで馬車で運んでおいて下さい。」


そういいルーザンマードルの方向を向き、歩き出そうとする美女を引き留める。


「あっ…あの! さっきはこいつの事…助けて頂いてありがとう御座いました。」


美女は礼には及びませんよ。といって歩きだす。


「あっ…あの、貴女はルーザンマードルのギルド所属の方ですよね? 話しとか聞かせて貰えませんか?」


更に引き留めた、が


「もし断ったら?」


真顔で放たれたその台詞に俺は、う… と息詰まる。


「ふふっ…冗談ですよ、貴方はルーザンマードルのギルドに所属するために移動していたのですか?付いてきて下さい。歩きながら話しましょう。」


ふふっ…と笑った美女に、はっ…はい! と言って俺はユーを抱いたまま弓士団の中に交ざり、ルーザンマードルまでの道、俺は歩きながら、緑髪の彼女と話し始めた。

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