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幻獣ぱれっと!  作者: 橘 猫音
旅立ち(顔見世的なとかいっちゃダメ)
3/26

移動中:俺と黒猫の話

ガチャり


鍵もかけた…っと


暫くはここには帰ってこないから戸締まりはしっかりしないとね。


さて…今は早朝三時、まだ日も昇ってない、嗚呼、寒くて凍え死にそうだ…


だが今出発しなければ、今日中に町まで到着出来ないだろう。


…それではさらば懐かしの我が家よ。


荷物は最小限に抑えたから、足取りも軽い。


そういえば昨日ギルドについて詳しく話す とか言っていたのだったな。


今日はどうせ歩くだけだ、少し詳しく話そうと思う。


俺が今から行こうとしている町、ルーザンマードルは俺の住んでるここ、カヌ村から約徒歩17時間の所にある。


ルーザンマードルは市場や最高クラスのレストラン、服屋など、商業が盛んで、観光でも人気のある町だ。


だが、勿論俺は、美味しい料理を食べたり、お洒落をするためにわざわざ行く訳じゃない(ちょっと観光もしようと思ってるのは秘密だ)。


俺がルーザンマードルに行くのは「ギャザリングギルド ルーザンマードル支部」に所属する為、申請を出しに行く為だ。


ギルドというのは、境獣の討伐依頼、転生依頼などを受け持つ町営施設(または村営施設)だ。


『転生』は嫌いだって昨日言ってたじゃないか と思う人も多いだろう。


ただギルドに所属したいだけなら、俺の村にもある。


だが、大抵のギルドは転生依頼を受け、境獣の転生を行った後の境獣人種は、奴隷として競りにだす。


更に、お偉いさんからの「幻獣を5~6匹転生して売ってくれ」という不正な依頼すら普通に受ける。


俺の村でもそうだった。


だがルーザンマードルのギルドは違う。怪我をした幻獣を保護、必要に応じて転生し、転生させた幻獣はルーザンマードルの住民として登録し、保護している。


さらに境獣の討伐依頼は一切受け付けず、境獣はすべて転生し、住民登録を行う。


更に、普通のギルドには転生人種の入団は許可されない。


だが、ルーザンマードル支部は、転生人種もギルドへの受け入れを許可し、依頼を与えている。


そのうえ、転生人種保護条例を作り、通常人種と対等の生活を約束している。


しかもギルドの受付はレッドドラゴン種(超ド級の幻獣)から転生した、龍の羽の残っている朱い髪の綺麗なお姉さんが担当しているそうだ(決してそれが目的ではない)。


他の地域から奴隷から解放されるため、亡命してきた転生人種に対しても受け入れ体制をとって、生活を保護している。


最高じゃないか、ルーザンマードル。 美しいじゃないか、ルーザンマードル。俺もルーザンマードルのギルドで…


って…ん? なにか… なんだ?


なにか黒い、黒い…布か? なにやら異質な物が草むらに落ちて(?)いる。


小型の魔式ナイフをとりだして、警戒しつつ、近付く。


一歩… 一歩…


黒い物体を上から見下ろす。


黒い猫の体に 黒い猫ミミ 黒い猫の尻尾が2本…


「なんだぁ…布じゃなくてケット・シー(猫の小型幻獣)かぁ…ってえぇ!?」


思わず声を出して自分にツッコんでしまった。


倒れてる? し…死んでるのか…? おーい…って声かけても解らないか…


そうかぁ…せめて埋めてあげるか…


持ち上げようと手がケット・シーに触れたとき


「にぅ…」


いっ…生きてるっ! 急いで…えーと… あー そーだ!


「神よ!この者の命尽きるのは余りにも早いとお思いになるのならば力を貸したまえ!」


ヒールの呪文が発動し、ケット・シーを澄んだエメラルドグリーンの帯状の光が取り巻く。


良かった…成功だ。


「にぇ…」


取り合えずこのケット・シーはギルドまで連れていこう。


振動を与えないよう、ケット・シーをそっと抱き上げる。


いやぁ…まさか行き道で幻獣を保護するとわなぁ


などと考えながら、森に差し掛かる前まできた。


幻獣を保護した達成感に浸りながらケット・シーを見る。


「それにしてもこのケット・シーよく眠ってるなぁ…ってえぇ!?」


思わず声をあげてしまった。


俺は気付いたら、11歳位のネコミミの付いている、黒いワンピースを着た幼い黒髪の白いのは肌位だろう、そんな容姿の女の子を…お姫様だっこしていた。


しかも目を擦って…お目覚め真っ最中の…


「ふぁぁ…にゃぁ…ここは…?」


固まる俺 どうすればいい。 なんでだ? 俺は転生魔術なんてかけてないぞ?


「にゃっ? なにこれ、にゃぁ、下ろしてよぉ!」


腕の中でじたばたする女の子 固まる俺 じゃなくて


「あっ ゴメン」


慌てて地面に下ろす俺。


「お兄さんがここまで連れてきてくれたのかにゃ?」


取り合えず訳を話そう。聞きたいことは沢山あるが、質問はそれからだな。


「あぁ、うん、ルーザンマードルまで行く途中に(以下略)」


ヒールを使ったこと、拾った時の状況 みんな話した。


「なるほどぉ、にゃぁ、お兄さんは命の恩人だね! ありがとにゃぁ お兄さん♪」


可愛い… 可愛いぞ…っとイカンイカン質問を忘れる所だった。 む、誰だロリコンだって言った奴は!


まずは…この質問からかな…。


「ところで…お嬢ちゃん、ケット・シーが倒れてると思ってここまで連れてきたんだけど、なんでその格好に成ったの?」


ケット・シーの女の子は顔を伏せ、ふぇ… くすん…といって目を潤ませる。


し、しまった… 地雷を踏んだか? まずは質問を変えろ! 名前は?身長は?なんでもいいから早く変えるんだ!


「じゃ…じゃあ、お嬢ちゃん、どんなぱんつ履いてるの?」


墓穴を掘った。焦った俺の口からとっさに出た質問は「どんなぱんつ履いてるの?」だった。 あぁ…終わった…


女の子が口を開く あぁ…叫ぶのかなぁ…俺は逮捕かなぁ… 南無三…運が悪かった…


「今日は私ぱんつ履いてないの…えへへ…」


「へ…?」


なにが起きたか解らず、ぽかんとしていると、ほら…と言ってネコミミの女の子はワンピースのスカートを捲り… 涙目で微笑み、スカートを捲る姿は…これじゃあ俺が幼女をなんかのプレイで虐めてるみたいじゃないか。 これはこれで…興奮する…! じゃなくて困る。 誰だ、「このロリコンが! その娘に触るな!」とか言った奴は。失礼な。


「解った!解ったから!まずスカートを下ろして!」


ずっと涙目でスカートを捲っている幼女を見ている訳にもいかないのでスカートを下ろさせる。


「う、うん…解った。」


といい、スカートを下ろす。 まず…なんだ…えっと… この娘ももう大丈夫みたいだ。これ以上に関わったらろくな事がないきがする。


「じゃあ、大丈夫みたいだし、俺はそろそろで行くけど…お嬢ちゃん、家まで一人で帰れるよね?」


じゃあね、といい、歩き始める。


だが…俺をあの娘が お兄さん! と呼び止める。


「お兄さん…以外と冷たいんだね…」


ぐっ… 時間がヤバいんだが…しかし流石に罪悪感が募る。


「じゃ…じゃあ…お家まで送っていく?」


「ねぇ、お兄さん、ルーザンマードルまで行くんでしょ?なら私も一緒に連れてってよ…?」


なにを言い出すんだこの娘は、一人で亡命したならそれは認められる。だが、俺がつれてきたと成れば…本来の彼女の主人に拉致罪で訴えられれば俺はギルドに所属出来ない。それこそ終わりだ。


「お、お嬢ちゃん?でも突然居なくなったらお家の人心配するよ?」


この娘は転生人類だ、奴隷として扱われる彼女を心配する人なんて… だが、なんとか回避しなければ。


「心配なんてしないよ…家族とはもう…もう会えないから…」


「…え?」


『もう会えない』この娘の言ったこの言葉には、「奴隷の私を心配する人は居ない」という意味は込められて居ないようだった。それには純粋に、「家族に会えない哀しみ」の気持ちしか入って居ないように感じられた。


「うん…さっきお兄さん、なんで私が人になったか…不思議がってたでしょ? 話せば信じてくれるかも…辛いけど…話すね」


彼女はうつむかず、涙を堪えて話し始めた。


「私はね、半転生異常種なの」


半転生異常種 それはたしか、バハムートとか魔力がとてつもなくを魔力が削りきれずに転生させたときに稀にできる、魔獣と人を自由に行き来できる、いわゆる「転生失敗」で出来る墜天種だったはず。


「私はね、ルク村の近くで転生魔術を受けたの、その時に、魔術士の人はめんどくさいからって私ともう一匹、2匹まとめて魔術をかけちゃったの。それで魔力の合計に足りなくて失敗して、私は半転生異常種になっちゃったの。使えないからって、人間からは捨てられて、森に帰ったら、転生魔術を受けたからって民族からも追放されたの。だから私は『失敗作』になったせいで家族とももう会えない…ふぇっ…」


そこまで言って話し終えた彼女は泣き出してしまった。


はたしてルーザンマードルで半魔(半転生異常種)の転生人種を受け入れてくれるかは解らない、でも…だとしても


「解った。一緒に行こう。お嬢ちゃんを一人にしない、約束する。ちゃんと守るから。」


どちらにせよ、弱者を見捨てるような男にどちらにしろギルドに入る資格はない。 彼女の頭を撫で、誓いをたてる。


「…ほんと?」


顔を上げた彼女と目があう。


「あぁほんとだ。さぁ、一緒に行こう。」


手を差し出し、彼女を立たせる。


「お兄さん…にゃぁ…有り難う…えへへ…やっぱりお兄さん…いい人だったね…♪」


彼女は涙を拭い、微笑み、立ち上がり、「さ、お兄さん、いこう」と言い、歩きだす。


おう、と反応し、小走りに追いかける。


横に並んで、歩く二人を、優しい木漏れ日が照らしていた。

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