初任務:準備
「ん、シュウ、お前も準備か?」
「え、あ、はい。鳴葉さんは…解毒薬買わないんですか?」
市場にユーと解毒薬を買うため出向いて来た俺は、市場の八百屋で買い物をしている鳴葉さんに遭遇した。
「ん? あ、之か?」
鳴葉さんは自分の抱えて居る、よくわからない草やら果物やらが入った紙袋を一瞥し、ひょい、と小さく上に上げる。
「んー…林檎? みたいなにおいだね~」
ユーが鼻をすんすんさせて言う。ん、確かに紙袋の中から林檎のような臭いがする。
「嗚呼、ヘスペリデスの林檎はペクチンが豊富だから、解毒効果を増強させるのに使うからな。」
「あ、鳴葉さん、薬草学も齧ってたんですか?」
「いや、専門だ」
あれ? なんかイメージと違うぞ…
「えー…っと、鳴葉さんって弓が専門じゃないんですか?」
「弓も専門だ」
「あー…っと、万能なんですね」
「嗚呼、刀もある程度なら振るえる。」
イメージ通りではあったが、本当になんでも出来る人だった。
「まぁ、実際、解毒薬買うより解毒草とミルリ草買って製薬したほうが安いですしね」
「うむ、何より既成品には追加合成は出来ないが、自己流なら出来るからな。美味しく解毒薬を飲める。」
「嗚呼、苦いですもんね、解毒薬。」
「ん、そういえばこのあと明日の戦闘に備えての会議があったんだったな。」
「あ、そなんですか?」
まぁシュウは苦い薬で頑張りたまえ、と鳴葉さんは言って、行ってしまった。
「…ったく…あ、俺も薬買わないと」
苦い薬買わないと…、と独りつぶやいて、
俺はユーの手を引いて、露店を回るのだった。