猫拳:ユー、戦線までの道のり
「にゅぅ…なんで駄目なのぅ」
「そりゃあ…ユーはまだ子供なんだから戦線にでるなんて危ないだろ? だから駄目だ」
弱一時間程前からユーと俺はずっとこんな言い合いをしていた。
まぁ、事の発端は、某所でユーの出番が何故少ないかを話していた事なのだが…
「私だって私だってっ こんなのほほんとした生活を只々のほほんと生きてるだけじゃつまんないもんっ!」
「充分エキサイトしてるだろっ! こないだは銭湯で泳いでたって話じゃねーか!」
因みに一緒に行った鳴葉さんは銭湯の店員さんにも猫語でしっかり話していた。なんていうか…凄く偉いと思う。
ユー曰く、『戦場に出ればエキサイト出来る、というか出番が増える』とのこと。
まぁ主人公補正が付いてて何かと出番が少なくない俺が兎や角いえた事ではないのは自覚しているのだが、仮にも義妹的存在(妹だと攻略不可的な感じになるので『義妹』)だから、義兄ちゃんとして義妹を危険に晒すのは宜しくない。
「まぁ出番はほら、なんとか増やすっていうか…増えるだろうからさ? 我慢とか…」
「むぅー…でも戦闘に参加出来る様に成らないと幹部としての役割も果たして無いっていうか…」
あ、やっぱり幹部だったんですねセンパイ
「…なんの話をしているのだ?」
「にゃぁ、鳴葉さん」
「あ、鳴葉さん。いい天気ですね?」
時勢の挨拶は良いから。と鳴葉さん。
「え、嗚呼、いや、ユーがのほほんとした生活から抜けだして出番を増やす為に戦闘にさんかしたいって言ってるんですよ…」
「なにっ!?」
おお、いい反応ですよ鳴葉さん。さあ、一言ガツンと…!
「歓迎だぞっ ユー! 我がギルドも戦力は多いほうが良いからな」
うぉぉぉぉぉぅ………!!
「ぐぉぉぅぅ…ぐはっ…」
思わずうめき声が漏れる。おおぉ…鳴葉さん…なんてことを…
「やたっ! ほら~ シュウにぃ? いいでしょっ?」
「なっ…鳴葉さんっ、ユーは護身術すらなんにも身に付けてないんですよ?」
まさか鳴葉さんがここまで軽率な発言をするとは…
「そうか…そうだったな。ではそうだ…『蛇拳』など身に付けてみてはどうだ?」
『蛇拳』つまり某国に古来から伝わる『蛇の動きをモデルにした』と言われる護身、暗殺拳
子供や女性などの力の弱い者にも急所を突く為の武道なので出来るらしい。
「でも…大丈夫ですかね…?」
「ん…だがユーは中々土壇場の統率力もあって才能がありそうで少々ほおっておくには惜しいのだが… ん、そうだ」
そんな勝手な理由でユーを危険に晒されたら困る。
「シュウにぃ…だめ?」
「だめ」
何やらごにょごにょユーの耳元で鳴葉さんが言っているが、気にする程の事でも無いだろう。俺は駄目で押しとお
「シュウにぃっ! 大好きっ! シュウにぃっ! 愛してるっ!」
「嗚呼、おっけー、勿論おっけー。もう俺なんでも許しちゃうしユーの事全面的に信頼しちゃう」
あ、言っちゃった。
「シュウにぃありがとー!」
「よしっ! それでは早速蛇拳の練習を始めるぞっ」
おおお…始まっちゃった
「それではまず動きからだな…、手を蛇の頭の様に曲げて…」
どうやら俺の軽弾みなノリもあって、ユーと鳴葉さんの蛇拳の練習が始まったようだ。
はぁ…ユーに出来るのかな…そんな不安も抱えつつ、自分も一緒に、と、腕を蛇の頭の様に、鳴葉さんの姿真似をしている俺がいた。