お正月:年明け花火『シーファ』
「やたー!! 鳴葉やったね~! ついに赤組が勝利を勝ち取ったよ~! 空音たちの勝利だよ~!」
「ここ数年負けっぱなしだったからな。だが正義は最後には必ずや勝つのだ!」
すっかり白組は悪者扱い。赤組の勝利のなにがそんなに嬉しいんだ。
「だが喜びに浸っている暇はないぞ、今から我が町のカウントダウンに間に合うように、今すぐ気付けをするぞ、ユーよ。」
現在時刻 11時45分
「うんっ! にゃぁ、でもそんな15分で着替えなんて出来るの?」
「ああ、私と空音にかかれば気付けなど5分やそこらで終わる。」
「ふっふっふ~…まっかせなさぁい!」
と自信満々の二人
さて…じゃあ俺は着替えが終わるまで『行く年来る年』でも見ていることに…
「シュウ、俺たちは先に移動してるぞ。」
「えっ、でもほら、場所とか鳴葉さんに聞かないと解んないし…」
「どうせいつもの公園だろ。」
「はぁ、じゃあ先に行くことにするか…」
とりあえず俺とシェンドは、ユーと、ユーの着付けをしている2人に先に行くと告げて家を出た。
いつもの公園は鳴葉さんの家から徒歩3分ほどのところにある。
ていうか…シェンドって何気に脚早いよな。っていうか…こいつやっぱり浮いてんじゃん。ドラ○もんじゃ
「青狸と一緒にするな。」
ぁ…さいですか…
ていうかあれって狸じゃなくて猫…
まぁなんにせよ5ミリより浮いてるし、シェンドは滑ってるみたいに動いてるんだからドラ○もんとは違うか。死神って転生しても魔力が有り余ってるんだなぁ…
「お、もう皆集まってるようだな。」
多くて分からないが、多文いつもの面々だろう。
和服姿の物が多いが、中には普段の洋服、アーマー姿のもの、挙げ句の果てには薄水色のドレスを着込み白いフリルのついた日傘をさしているものさえ…ってえぇ!?
場違いドレスの人物は、長く伸ばしたナチュラルな金髪、白い肌、見るからにお嬢様… うちのギルド関係者にあんな高貴なオーラを放つ方がいたとは…
ってナチュラルな金髪? まさかリボン…いや、服装が裸リボンじゃないから違うな。
「おいおい、もう11時53分だぞ、鳴葉たちは間に合うのか…?」
と心配そうにシェンド
「まぁ間に合うんじゃないか? 多分」
根拠はないけどね
11時57分
「…大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃ」
ヒュー ファサッファサッ と何かが羽ばたく音に台詞がかきけされる。
「なんだこ」
ファサッファサッファサッファサッ
かきけされる。台詞の途中なのに…なんてマナーのなってない音だ
上を見上げると、何やら奇妙な模様のタトゥー(?)の入った『ドラゴン』が飛んでいた。
「え…なんでこんなと」
ファサッファサッファサッファサッファサッファサッ
旋回する音にかきけされる。 嗚呼もう…
はぁ…と首を横に振り、もう一度見上げると
膝を曲げて落ちてくる人影が二つ
よく目を凝らすとどっちも下着をはいてない。
だが今は鼻血を吹き出している場合ではな
ガンッ☆
「いっ…たぁぁぁッ!!」
隣から悲鳴が上がる。落ちてきた人影は膝を曲げているので膝がシェンドの額に見事に激突した。
ハッとして上を見る。
そこには…女の子の又部があった。
むにっ…ズドン!!
「ん…むぐ…」
又部の肌で口を塞がれた俺の口から声が上がる。落ちてきた人影は膝を曲げているので、見事に又の間に顔面が激突。衝撃で倒れるが、又部は顔面についたまま、むにっとしてて温かい。
「…っー…ま…間に合ったか!?」
「んっ…にゃぁ…あ、只今11時58分!!間に合ったよ~!」
前者はシェンドのほうから聞こえ、後者は俺の真上から聞こえる。
「っ…てめぇ鳴葉ぁ!! 話してねぇでさっさと俺の上からどけ!!」
シェンドの声、おっとすまないといって起き上がる音。どうやらあっちは鳴葉さんだったらしい。
するとこっちは…
「にゃぁ、間に合ってよかったね~」
と嬉しそうな声…気付いてない様子…この残酷なボケ具合…ユーか…
てことはこれはユーのお○ん…えふんえふん
「むぐ…ユー…起きて…どいて…」
声がくすぶる。
「ふぇっ!?」
ビクッと体を反応させ、サッと立ち上がるユー
「えっ…あっ…シュウにぃ!? いつのまに私の下に居たの!?」
いや…お前が乗ったんだろ…
ユーがムッと目付きを鋭くする。
「それにシュウにぃ…いま私のあそこ…な…舐めったでしょ…!」
えっ…?と周りが反応する。
「えっ?それは余りにもあらぬ勘違い、的外れ極まりないぞそれは!!」
だ…だって舌が触ったもん…とユー、それはなんていうか…不可抗力だすまんッ
「鳴葉~! 後1分! 1分しかないよ~! 早く! 早く~!」
真上から声が…沸き上がる嫌な予感が
ドスッ
「うがぁッ!! あうっ…うぐ…」
顔を上げる暇もなく俺の腹部に声の主、両足バッチリつけて不時着。
上がる悲鳴。
「無事…着地っ! 鳴葉っ 鳴葉っ! 早くあれだしてっ!」
せかせかと焦っている声。足に力が入っているらしく腹が圧迫される。ヤバい、内容物がでそう…これ…確信犯じゃね?
「あの…空音さん? どいてもらえますか…?」
「へ?」
気付いていない様子。周りをくるくる見回している。足にもっと体重がかかって痛い。
「下です…下…俺ですよ…」
「おっ? シュウ~! いつのまに空音の下にいたの?」
そう言って空音さんが降りる…なんか釈然としないな…
「それより鳴葉っ! 時間をっ!!」
「解ってるわ。」
そういってパチンッと鳴葉さんが指を鳴らすと、パチパチ…バチン!! と音がして、空中に12時59分32秒と光で文字が刻まれる。
比較的消費魔力は少ないとはいえ空中電飾を指鳴らし一つで詠唱もせずに打ち上げるとは…鳴葉さん凄いな…
「32秒…空音! 急いで準備して!!」
「了解~ 文明を司りし焔の精よ、華と混ざりて我が瞳の糧となれ。シーファ!」
空音さんが呪文を詠唱し終わると、地面から80、90程の植物の芽が一斉に発芽、5秒ほどで成長し、花を咲かせ、直径2~3センチ程の種を付けた。
みるみる枯れていった植物の茎が絡み合い、篭を造る。どうしたらそうなるのか分からないが、中にはついた種がひとつ残らず入っていた。
おぉ~!! と上がる歓声。
それにしても『シーファ』…聞いたことのない魔法だな…
空中電飾の時計は刻々と動き続ける。
12時59分48秒
「にゃぁ! それじゃあ皆! カウントダウン…行くよ~!!」
ユーの呼び掛けにうぉぉぉぉ!!と反応が帰ってくる。
「10!」 「9!」 「8!」 「7!」 「6!」
空音さんが指の間に「種」を挟んで腕の前でクロスさせ、はにかんでいる。
「5!」 「4!」 「3!!」
声が大きくなる。
「2!!」 「1…」
声が一瞬小さくなり…
「HAPPY NEW YARY!! あけましておめでとー!!!」
わぁぁぁぁ!! というざわめきと共に、花火が上がる。
隣を見ると、空音さんが指に挟んだ種を上空に投げている。
赤や黄色、色々な花火が上がり、おぉぉ…と感嘆の声も上がる。
成る程…『花火の呪文』ね。そりゃあ聞いたことない訳だ。
さて…なんにせよ、新しい一年の始まりだ。
今年も充実した一年になるよう、頑張っていこう!