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幻獣ぱれっと!  作者: 橘 猫音
旅立ち(顔見世的なとかいっちゃダメ)
12/26

クリスマス:生命樹の屋下にて

「うわ…でっか… これが生命樹ですか…」


愛用の小型ナイフに、鳴葉さんから「洗礼だ」と渡された小型銃を持った俺の前には、木々が立ち並ぶ森の中心部、周りの木々に紛れて佇む深緑の葉を広げ、所々に、うっすら光る、豊満に成長した木の実の実る、雪の積もった木があった。


まぁなんというか…紛れてといっても周りにあるのは葉の落ちた木ばかり、普段は保護色になるだろう深緑の葉も、雪の積もった今では逆に目立つ。


全然紛れられてない…寧ろ目立っているという、なんともアホらしい木なのだが。


「さて、依頼までの時間は…後10分もないですね。」


生命樹が精霊化を始めるのはクリスマス(12月25日)の午前0時かららしい。


結界の弱まるその間、禁断の果実を、悪魔や境獣から守らなければいけない。


「さて、皆、戦闘配備に着きなさい。」


ローブ姿に先に珠の着いたデフォルトな魔法使いや、巨大なハンマーを持つ重戦士、自分の身の丈程の剣、小刀のような剣、様々な剣もつ剣士たち。


あげくには死神やマシンナーズ、ロリコンまでいるのだから悪魔の軍勢相手にもそうそう負けないだろう。


死神? そう言えば…


「なぁシェイド、お前死神なんだろ?悪魔とか友達じゃねーのかよ。」


「ふざけるな、悪魔は下界の住民だろう。死神は神だ、天界の住民だぞ?一緒にするなクズが。」


さいですか… 真面目に怒られてしまった。


「おっ、にゃぁ、北西から紫色のコウモリ羽のデフォルト悪魔発見だよ~」


ユーの緊張感の無い声が生命樹の上から聞こえる。


どうやら畏れ多くも生命樹の上に登ったらしい。


「ユー、数はいかほどか?」


鳴葉さんの声、


「ん~よく見えないけど~、50くら… あ…全滅したみたい…」


ちょっと引き気味のユーの声 怯えているようにも聞こえる…って、全滅!?


「全滅!?…ユー?なにがあったのですか?」


50体の悪魔を一掃って…


「ぁー… えっとね~ 森が爆発したの。上の方には紅いドラゴン。」


あっちゃあ…と鳴葉さん。 なにがあったんだ…


「マイスィル(水系呪文マイスの第三段階)を使えるものは今すぐ消火に向かいなさい。私もカラクリム(魔法を無効化する呪文)で空音を連れ戻しにいくわ。」


成る程… 邪道竜王空音… どうやら森ごと悪魔を焼き払ったのは紅竜に化けた空音さんらしい。 森を燃やすとは…なんというか…


数メートル先に見える、森の燃える光りが消えた。どうやら消火に成功したらしい。


ほぼ同時に、空を旋回していた空音さん(紅いドラゴン)が空中でバタバタ動いて、墜落していく。


よく見えないが、翼に棒のような物が刺さっていた。 あらかた察するに魔法矢だろう。 鳴葉さん…射ったんだな。


ズドーンという大きな音が聞こえた後、暫く場が凍り付く。


20秒もすると


「もー 痛いじゃん! むー…射つこと無いじゃん~、友達でしょー!」


とちょっと怒った様子の明るい声。空音さんの声だな。


「当たり前でしょ…悪魔蹴散らすのに森を燃やすバカがどこにいるのよ。」


鳴葉さん…そこにいる空音さんは「森を燃やすバカ」ですよ。


言い合いを空音さんと鳴葉さんが姿を見せると、意味もなく盛り上がり始める仲間たち。


「大丈夫ですか?羽に穴開いちゃったんじゃ、今回の戦闘には参加できませんね。」


と一応気を使って言う俺。ちょっと安心したのは秘密だ。微笑んで手を降りながら空音さん。


「やだな~ こんなの全然大丈夫だよ~ 予防接種とおんなじくらいだよ~?」


と言って指を差した先の翼には、予防接種の針程の穴が3つ開いていた。確かに大丈夫そうだ… ていうことは鳴葉さんは戦闘に参加するのか… 大丈夫かな…


そんな事を考えていると


パスン


何処からか音がしたとほぼ同時に、後ろにいた剣士の男の腕に木で出来た矢が刺さった。


ぐぉぉっ!! と上がる声、立て続けに何処からか鳴るヒュンという音、ぐぁっ!!という悲鳴。


誰かが口を開く


「おっ…俺たちは射たれてるぞ!!」


そう叫んだ男の背中にも、矢が刺さった。


「戦闘配備!! 闘盾士(バトルシールダー)は固まって構えなさい!!」


男の悲鳴とほぼ同時に鳴葉さんの声。


「救護班は負傷者を救」


そこまで言い、鳴葉さんが地面を蹴り、後ろに移動する。


カスンッ 音がした先は、鳴葉さんの足元、ほんの10センチ先のところに矢が刺さっていた?


「救護班は負傷者の回復を最優先に行いなさい!!」


ここまで言い切ると、鳴葉さんは弓を素早く構え、矢を掴むように何もない空中を掴み、後ろに引いた。


放つ方向を矢の飛んできた方向に定め、手を離した先には、うっすら光の尾を引く魔法矢が飛んでいた。


カンッと音を立てて太い幹のに魔法矢が刺さる。


音に反応したように、カサカサッと枝が揺れ、水色の髪をたなびかせて、影が飛び移る。


「水色の髪…弓…察するに『レアージュ(悪魔のなかでも弓を使うのに長けている悪魔、傷を癒したり、悪化させたりする能力を持つ)』ね。 私に矢先を向けるとはいい度胸ね。私が追撃に向かうわ。」


そう言うと鳴葉さんは地面を蹴り上げ、碧色の翼で羽ばたき、「レアージュ」を追いかけて言った。


暫く沈黙が続く。


「まぁ…姉さん(あねさん)なら大丈夫だろ。」


と誰かが口を開く。


そうだな。 大丈夫だよな! どっと声が上がる。


緊張が溶けて、皆が話を始める。


「皆」


いつもとは違う、真面目な声の、生命樹の上で望遠鏡で眺めているユーから声がかかる。


話声が止まり、沈黙がくる。


「私達ものんびりはしてられないみたいだよ。」


静まっていた場がざわりとする。


冷静に口を開いたユーの次に放った言葉は


「北北西の方角、90メートルほど先に悪魔の一団を発見。敵数は220ほど、こちらに侵攻中だよ。」


ギルドの仕切り役、鳴葉さんが居ない今、攻め込まれたら、録な闘いが出来ない。


ざわざわと慌てる場、最初に北北西の森の方角に立ったのは


「純白の鎌」を構えた「死神」と


「純白の名機」に乗る「天才」だった。


「第三機構小隊!」「第五重兵装小隊!」


「特例、『空音』『シュウ』『ユー』は迎撃に向かう! 行くぞ!!」


二人の声が重なる。


どうやら俺は、二人の隊長(ガキ)に引っ張られて、悪魔の迎撃に向かうようだ。


浮遊して空中を滑るように移動する「死神」


前傾姿勢で地面を蹴りながら進む「天才」


二人を追いかけるように走り出した第三機構小隊と第五重兵装小隊、その群れに混ざり、俺とユー、空音さんは悪魔迎撃に向かった。

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