鳴葉宅:乱心「姉」乱心「姫」
『雇用法』では、主人と契約を交わした家令は肉体関係にあってはならない、と記してあるらしい。
…なんでこんな話をしたかと言うと、鳴葉さんと空音さんが可愛すぎるからだ。 いや失礼、理由になってなかったな。
まぁ簡単に説明すると、あの後、空音さんが「今日は飲まないから…」と言って、メイド服で酒場に来て、ウェイトレスをしてくれている。
そして酔ってすっかりキャラが崩壊した鳴葉さんが、「私もっ」と言って、やけにスカートの短いメイド服にその場で生着替えをしはじめた。
俺はなんとか耐えきったが、男性連のうち何人かは鼻血を吹いて気絶してしまった。 まぁ俺も鼻血は見事に吹いたが。 鼻血を吹かなかったのは多分シェンド位だろう。
まぁなんていうか、二人のメイドさんから数人が殺害された訳だが…って、さっき『雇用法』について話したが、鳴葉さんも空音さんもメイド服着てるだけで俺の家令じゃなくね? っていうことは襲っても… くふふ…
なんて、ニヤニヤしていると
「シュウ…? なにかよからぬ事を考えてるな? えい…っ」
顔は見えないが、ひどく妖艶な鳴葉さんの声と共に、べろりと温かいモノが首を這う。
これは…と、横目にその生暖かい、真っ赤なモノが、赤く火照った鳴葉さんの、口からべろりと出ている事を確認した俺は、鼻血を吹き出し、
遂に貧血で倒れた。
――――――――――――
「…此処は?」
まだ頭が痛い…
取り合えず周りを見渡す。俺の横たわる白いベッド、白いカーテン、木の丸イスが一つ、晴れ空と雪の積もった木の写る窓が二枚。一晩で積もったんだな。他にあるのは… コクコクと首を垂れて眠っているユーくらいか。
…起こすべきかな?
気持ち良さそうに眠っている女の子を無理矢理起こすのは気が引けるけど…
「おい、ユー? 起きろってば」
起きない。 ん~
ツンツン
ほっぺを突っついてみた。 柔らかくて気持ちいいな… ツンツン…
起きない。
しょうがない… しょうがないから別の場所をツンツンしてみるか… くふふ…例えばこの平らな胸とか… スカートの下の… くふふ… では早速…
「んんっ… ん~?」
スカートの下に指を伸ばしたところで、ユーが起きてしまった。 固まる俺。
「わっ… シュ…シュウにぃ? にゃ…なにしてるの…? 手…私の…」
バレた。
「いやっ…これは…」
弁解のしようがない。
「シュウにぃ… にゃぁ…私と…エ…エッチなことしたいの…?」
姫はご乱心か。
「いいよ」
いやマズイだろ
「ベッドもあるし…」
ワンピースを肩から外し始めるユー マズイだろ いや、でも… いやいや、やっぱりダメだ!
「と、ところで!誰がここまで運んでくれたんだ?」
話を反らす方向でいくぞっ
「あっ、うん、空音さんだよ~、まぁ酔っぱらって無かったの空音さんだけだったからにゃぁ」
無事成功。 ユーがバカでよかった。
「そーいえば鳴葉さんからも伝言貰ってたんだ、えっとねー、『こんどは吐くまで飲ませる』…がんばれ~ がんばれ~」
ワンピースを肩に戻しながら複雑な、苦笑いの表情を浮かべるユー 嗚呼、鳴葉さん酒が回ると凄いからな… 生きて帰れるか心配だぜ
「わ、わかった…わかったぜ畜生… ところでお前昨日まで『碧のお姉さん』とか『紅いお姉さん』とかだったのにいつ名前覚えたんだ?」
「さっき」
…あっさりしてんなぁ…まぁいいや。
「シュ…シュウ! 昨日はなにやら不祥事をしてしまった様ですまなかった。 私は酒が回ると己を忘れるのでな… 実にすまなかった。」
バンッと勢いよくドアが開き、声が聞こえる。
そこにはダッフルコートを着た鳴葉さんと、笑顔でこちらを見ているいつもの服の上にポンチョを羽織った空音さんがいた。
まぁ鼻血を出して倒れたのは遺憾だったが… あれはあれで貴重な体験をさせて頂いた。
「はぁ…別にいいですよ。いや、それよりも、俺は服もってきてるんでいいんですけど、ユーに買い物連れてってやってくれませんか?」
「いいわよ。と言いたいところだけど、私と空音は明後日の重大な依頼の処理があるので急がなければいけませんので…」
え~、むぅ とユー まぁしょうがないか…
「なら仕方ないですね。」
「まぁまぁ、ユーちゃんの服は空音の貸してあげるから~。あ、ちなみに明後日の依頼にはシュウとユーちゃんにも参加してもらうから~。」
と空音さん。 って…マジで?
「うへ…マジですか? 俺まだギルドの登録してないんですけど… それにユーに空音さんの服って… やっぱりいいです。」
だって萌えるじゃん? ちっちゃい娘にぶかぶかのTシャツ一枚。 ぐふふ…
「登録は空音がしといたから~」
と空音さん。 って…勝手にかよ。
「え、そんな勝手に」
「じゃあ時間だからいくわね。また後程、あとで迎えに来るわ。」
また話を遮って部屋を出ていく鳴葉さん。
「さ、ユーちゃん、着替えいこっか~ あ、シャツまたあとで~」
ユーと手を繋いで部屋を出ていく空音さん
ガチャン
「はぁ… 俺一人かよ。」
しょうがない…もう一回寝るか…
寂しさが身に染みるなか…俺は眠りについた