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天体観測
露骨な描写がありますので、お気をつけください。
その日は、彼が天体観測に行こうと言った。
郊外の丘陵に行った。
彼は着いた途端、
「あっ!あれ!北極星だよ!」
北に光る星を指した。
「あの星はあぁ見えてすごく輝いてるんだよ。知ってた?」
シリウス、プロキオン、ベテルギウス。
リゲル。カストル。ポルックス。カペラ。アルデバラン。
4月中旬の午前8時。
もう西の空に沈んでしまいそうな、冬の星座を、君は、たくさん教えてくれたんだ。
好きだった。彼のことが。
愛していた。あの日の星座も。
君の一部だと考えて、頑張ったんだよ。
彼は、隣に寝そべって、双子座の神話を教えてくれた。
少し潤んだ私の目を見て、
「心が綺麗なんだね。」
と微笑んだ。
綺麗じゃないよ。
10時から仕事が入っていた。
門限と言って誤魔化し、その場を立ち去った。
今夜は、中年のオヤジ。
どっかの社長だろうか。
おっきいだの、何だの、社交辞令を吐き捨て、行為に至る。
気づいた頃には枕元に諭吉さんが4枚。
4万円の体。
仕事が終わった頃には、もう星はとっくの昔に西の空に消えていた。
頬を、涙が伝った。