3 ちゃんと伝わる
出会いと別れの季節が来た。政宗も潮江学園を卒業し、心に決めていた土佐高校に入学する。
高知県立土佐高等学校と書かれた銘板の前に立つその後ろ姿は随分とたくましくなっていた。中学から身長は8cmほど伸び、無造作に伸びた黒髪は寝癖がついたままなのか前髪部分が眉上で少し割れている。
体はたくましくなったがまだ高校生らしいだらしなさも残っている。ただ凛々しく力強い眉毛は小さい頃から変わっていないようだ。
クラスに行き自分の席を探す。見つけた席の後ろには見覚えのある人物がバックから筆箱を出している途中だった。
「あ!滝侍源!!俺のこと覚えてる!?」
クラス中が一斉に政宗の方を見る。
「覚えてるから静かにしろ!」
人差し指を顔の前にあて静かにするよう促すその声は可愛らしい顔に似合わず低くめの声をしている。
背は政宗とほぼ同じくらいで、金髪の頭は今風のアイドルのようだ。
「すまん!滝はてっきり県外の強豪行ってると思ってた!」
「曽我の方こそ」
「あー!ちゃんと名前も覚えてる!」
「だから、覚えてるって言うたやんけ!」
滝は完全に呆れている。
そもそもこの二人がなぜこんなに仲良さげな感じかというと、県内ではお互い一番対戦した回数が多く、三年になってからの決勝戦では必ず大将同士で戦っていたからである。
それぞれが自分の席に腰を下ろす。くるりと椅子を滝の方に向けて再び話し始める。
「やっぱりさ羽生監督のこと聞いてここにきたんだよな!?」
「そうだよ。あの人を剣道界で知らない者はいない。筑前高校で監督してた頃はインターハイ団体戦と春の選抜に毎年出場。そのうち何度か優勝もしてる。県外の強豪に行けば全国制覇は簡単かもしれない。でも俺は地元、高知県代表として全国制覇したい。ここ数年県内で全国に行った高校で大きな成績を残した学校はいない。今のままじゃ高知の人間が全国制覇するのなんか夢のまた夢だった。けど羽生監督がいればきっと強い奴も集まるし自分も強くなれるそう思ってきたんだ」
「滝...お前!俺お前のこと見直した!」
目をうるっとさせ滝の肩を掴みながら言う。
「ちょっと、キモいってば!そいう曽我はどうなんだよ」
肩に置かれた手を離しながら聞く。
「俺は誰にもできないことがしたい!今はここの剣道部も完全無名だろ?でもさ無名の学校でそれも一年生だけで全国制覇したら超カッコよくない!?」
「お前一年の間に全国制覇狙ってんの!?俺はてっきり高校の三年間の間にと思ってたんだけど」
「それじゃ遅いんだよ!お前、佐野大和って人知ってる?」
「もちろん。天才剣士って呼ばれてた人だろ?」
「うん。今佐野先輩は三年生だから高校の間に戦えるのはこの一年しかない。俺あの人に勝ちたいんだ」
政宗のまっすぐな目は人を惹きつけるらしい。
「欲張りだね。一年間で全国制覇もしたいし、天才剣士にも勝ちたい...。でも俺は今までこういう奴と強くなってきた。その戦、参加させてよ」
「ああああああ!俺お前みたいな男の子好き!」
パアッと顔つきが明るくなり笑顔で滝の手を握る。
「ちょっと距離置きたいな...。」
だいぶ気持ち悪がっている様子が表情からよく読み取れる。
それから数日後、入部手続きを済ませた政宗と滝が剣道場を訪れると3人のメンバーがすでに集まっていた。




