口伝採録
採録者:木山
採録地:天至地区および周辺
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[調査概要]
天至地区における口頭伝承の採録を目的とした現地調査。
地区内の公民館、および山際の集落数か所を訪問。
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[地域住民A(女性)]
このへんは昔はテニヤギって言っとったな。
うちの親もそう言っとったよ。
天至になったのは戦後じゃないかな。
正式にそう決まって、みんな合わせたように思う。
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[地域住民B(男性)]
天至の由来はわからん。
役場がそう決めたんじゃないか。
役場は地名を変えたがるからなあ。
私なんかが若い時分は、お年寄りには嫌そうな顔をする人もあった。
テニヤギって言うとだね。
いや、なぜかは教えてくれんかった
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[地域住民C(女性)]
そういえば、私の子供のころに、祖母が言ってたな。
祖母はね、昔の宮司さんのお嫁さんですよ。
昔語りの類だろうが、今の人はあまり知らないだろう。
昔は、ここらでよく人がいなくなってな。山へ入って戻らん人間が。
親が探しに行って、親ごと戻らんこともあった。
帰ってきた人間には、私らは会ったことがないなあ。
沼があったんだよ、山のほうに。まさま沼、って呼んでいたかな。
今は枯れたのか、埋まったのか、どこへ行ったのかも知らんが。
ただ、沼へ行くには、やり方があったらしい。
分かれ道で、左のほうへ、と祖母は言っていた。
そうしないと、何もないとか、そういうことらしい。
それで、沼の神さまに願をかける人間がいて、それが、めったに帰ってこない。
話だよ。沼の神さまなんて、なんのことか、さっぱり分からんけども。
ああ、これを渡しますよ。願掛けから戻るためのお守りだよ。
私は、いくらでも宮司さんからもらえるから、どうぞ。差し上げますから、どうぞ。
(1回目調査終了)
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[再調査概要]
前回調査を補完するための再調査。
前回同様、地区内の公民館、および山際の集落数か所を訪問。
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[地域住民D(男性)]
テニヤギなんて、知らん。初めて聞いた。
この辺は、天至だから。もともと、そうだから。
とっとと切り上げて、帰りなさい。
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[地域住民E(男性)]
何を調べている。テニヤギは地名じゃない。
気安く口にするな。何を考えているんだ。
地名を調べたいなら、役所か図書館に行けばいいだろうが。
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二十XX年五月十日




