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現世にて
美咲は樹に力を送っていた。
ギリギリ生命を保てるほどの霊力を必死で送り続けた。
『私…皆のいる村じゃなきゃ、命なんて懸けられないよ。』
美咲は涙を拭うこともせずに一身に祈った。
(いっちゃん…死なないで…お母さん…帰ってきて…お願い…。)
樹の生命力が、徐々に弱まっていく。
『死なせるものか!』
自分に言い聞かせるように吐き捨て美咲は力を込める。
『…さき。』
樹の口が僅かに動く。
『…みさき、いきて…。』
そう言うと樹は満足そうに微笑んで、その肉体の心臓の動きを止めた。
『嫌ぁあああああああああ!!!!!!!!』
樹の肉体は、現世から消失した。
美咲はそれから暫く誰とも会わずに引きこもるようになった。
そして1年後。
母からの手紙を見つける。
日付を見たら、それは母が地獄へ赴いた日だった。
恐らく母は地獄に堕ちることを覚悟していたのだろう。
手紙といっても、文章はなく、
幼い頃の神嶋樹と美咲が二人で楽しそうに笑っている写真だった。
『美咲、生きて。』
それは母からの言霊だった。
『いっちゃんと、同じ事言うんだね…。』




