無力な二人
樹は教会で祈っていた。
自分を裏切り続ける神にすら、縋りたかった。
『俺は、無力だなぁ…。』
バタン。
扉が開く。
朝日を背後に浴びたその姿は、樹には神の使者のように見えた。
美咲だった。
『いっちゃん…本当にこの村を滅ぼすの…?』
二人は幼い頃によく遊んだ村の広場に来ていた。
かつての自分たちくらいの子供がまばらに遊んでいる。
『…………。』
樹は答えずに美咲を結界に閉じ込めた。
『た、助けっ…』
美咲の目の前で、まだ熟していない魂が狩り取られていく。
(力が、欲しい…。)
美咲は、地獄絵図のような血の海を見つめながら願う事しかできなかった。
(助けて…誰か助けて)
樹は自分を護る為に鴉になった。
そして生まれた村を殲滅しようとしている。
母はこの土地を護る為に巫女に戻って地獄に赴いた。
(鴉…許さない…許すものか!!)
自分にも母と同じ血が流れている筈なのに、どうしてこんなにも無力なんだろう
…。
『鴉ぅうう!!あんたたちを決して許すものかぁあああ!!』
呪われたその名を大声で叫んでいた。
こんな地獄で、鴉の呪いにどれほどの脅威があろうか。
否、既に充分過ぎるほどに呪われているのだ。
美咲の力が周囲に漏れ出す。
結界が熔けていく。
美咲は(破滅型怪力)に俊足で威力を足した一撃を樹に浴びせる。
隙だらけだった樹は吹き飛ばされて壁に激突する。
(いっちゃんか、村かを選べというなら…)
『私はこの村の、巫女なのよ…。』




