巫女の務め
『見つけた、親玉ぁ!』
美咲の脚は空を斬り鴉の王の脳天を撃った。
美咲が唯一、缶詰ではなく十数年かけて自力で身に付けたのは俊足。
その速さは、光にさえ並ぶ。
『痛いぞ小娘。』
『あんたがしたことの方が痛々しいわよ。』
鴉の王は不気味に笑う。
『お前も、この世界の支持者か。愚かしい。』
美咲は拳銃を片手に一丁ずつ構えた。
(絶対的射撃)
(破滅型怪力)
その2つは、美咲が缶詰で憑依させた能力。
回復の機会を与えない程に、正確で迅速に撃つ。それには射撃の反動に耐えられ
るだけの力が必要だった。
『皆を不幸にするなら、今、ここで死ね!!』
美咲は引き金を引いた。鴉の王は滅茶苦茶に撃たれる。
周囲が火薬の臭いと煙に覆われ美咲は引き金から指を上げる。
『傲るな小娘。』
鴉の王は煙に紛れて美咲の背後に立った。無傷で。
『なっ!?』
『実力の伴わぬ正義感は身を滅ぼすぞ。現世の者に私が討てるものか。』
鴉の王が操る黒い影が美咲を締め上げる。
『痛っ!!』
『案ずるな、お前は殺さない。イツキにも、お前の母親にも、人質として使える
うちはな。せいぜい役に立て。』
美咲は腕に力を込めた。
(人質なんて冗談じゃない。)
『幼い頃から、何の為の修行か分からない事を沢山させられたわ。』
『なんだ急に?』
『巫女として生まれたことを疎んだ時もあった。でもね。』
美咲の身体が光に包まれていく。
『私は、この村が好きなのよ。お母さんやお父さん、友達や…いっちゃんの居る
、この村が好きなのよ…。』
美咲の身体を覆った光が、影を割いていく。
鴉の王の拘束が弛んだ隙に、美咲は俊足を使って逃げ出した。
『巫女の血を引く者か…いつの時代も厄介な。』
黒い影が美咲を追う。
美咲の母は美咲を庇うように鴉の前に立ち塞がった。
初めて見る巫女装束。
その姿は、美咲が初めて見る歴代最強の巫女の姿だった。
『神様の加護を受けた魂…ここらが使い処かしらねぇ』
『お母さん?!危ないよ、逃げて!!』
母は美咲を見つめて首を横に降る。
『私が逃げたら、美咲たちに未来はないじゃない。大人が汚した世界は大人がカ
タを付けるべきなのよ。美咲は胸を張って、生きたいって言えばいいの。』
母は霊力を込めた札を四方に飛ばす。
『散ッ!!』
美咲の母は鴉の王を誘う。
『哀れな魂…一緒に地獄に墜ちましょうか。』
美咲は声を荒げる。
『お母さん?! 何言ってるの?!』
『美咲…強く生きなさい。貴方もいつか、命を懸けなきゃいけない日がくるわ…。』
空間が裂けて地獄の扉が開く。
焔をまとった風が美咲の頬を撫でる。
『熱い…』
美咲の母は鴉の王を象る核を持って、その扉をくぐった。
『お母さんッ!!』




