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王の回想
鴉の王は玉座に着き、天空を見上げた。始まりは何億年も前に遡る。
神嶋樹の先祖は、その村の長だった。
奇しくも彼と同じ、イツキという名前を持っていた。
それは、王がまだ力なき者だった頃。
若き村長は、王にとって唯一無二の親友だった。
やがて時間の波は激流に乗り、二人の関係は歪みを生じだす。
イツキは幼き王を庇った罪で投獄される。
(呪われろ、愚かな人間たち。呪われろ。呪われろ。)
王の精神を闇が侵食する。
イツキもまた、閉ざされた牢獄の中でもがき苦しんでいた。
鴉と呼ばれる死神を、人々は錯乱するほどに畏れていたのだ。
やがてイツキは 王を欺き、弓矢でその胸を射る。
嵌められた事に気付いた頃、王は既に死んでいた。
「美しい…。」
王の目に映っていたのは、血を溶かしたかのように赤く染まった海。
王の精神は、酷く渇いていた。
欲しい物は、生涯の盟友。




