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仮初の帰還

 ルール1、それを見ても他人に話してはいけない。

 ルール2、もし冗談でもその名前を呼べば次は自分が標的にされる。

 ルール3、災いはいつだって突然だ。



 美咲(みさき)が幼い頃に村で出会った少年から聞かされた「死神大三原則」である。その少年は美咲にそれを話したが為に連れて行かれてしまった。だから美咲はこの話を誰かにしようなどとは到底思えなかった。そして10年の月日が流れ、その少年が美咲のもとへ帰ってきた。

 

 真っ黒な長袖のシャツ、真っ黒なジーンズ。全身黒の出で立ちに美咲は少し気後れしながらも、彼の人間だった頃の名前を呼ぶ。

「いっちゃん!」

 神嶋樹かみしま いつき

 それが彼の、人間としての名前だった。

「…あ、美咲か。」

 幼い頃から樹はどこかぼ~っとしている少年だった。

「いっちゃんが居ない間にこの村も随分変わったんだよ。自動販売機だってできたし!」

 自動販売機といっても、勿論ただのドリンクが売られてるわけではない。この村の人間は色々な能力を自分の体に憑依させて使うことができる。その能力は憑依させる側の人間の力にもよるが大体2つか3つくらいまでだ。そして、その能力が今では缶詰にされて、自動販売機で売られているのだ。

「便利になったなぁ…。」

 まぁ修行しないと憑依させても使えないから、村人以外の人間から見ればただの食品缶詰の自動販売機なのだが。美咲は樹をまじまじと見る。

「どうかしたか?」

 彼の真っ黒な服は、奴らの目印なのだろうという事はすぐに分かった。そして手の甲に押されている焼印が、奴らに付けられたものであろうことも。

「…帰って来れて、本当に良かった。」

「泣くなよ。…戻れなくなるだろ。」

 その言葉に美咲は胸が張り裂けそうになった。

「ずっとこの村にいるんじゃないの?!」

「…それは出来ない。」

 美咲は樹を縋るように見つめた。

「ここはもう、俺の世界じゃない…。」

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