表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

2 明かされた組織の裏事情

 リンとガイが海の幸を心置きなく堪能していると、不意にテーブルに影が落ちた。


「よう、双子ども。相変わらず細ぇな、ちゃんと食ってるのか?」


 見上げると、黄金の鬣を思わせる金髪を揺らした美丈夫が、太陽のような眩しい笑顔で二人を覗き込んできた。


「レオン!」


 ガイが嬉しそうに尻尾を振る横で、リンが嫌そうに身を捩る。


「狭ぇよ、こっち座んな」


「おまえの方がガイより更に細いからな。こっちの方が空いてんだよ。嫌ならもっと鍛えろ」


 悪びれもせず、リンの横に陣取ると、テーブルの上の料理にも遠慮なく手を伸ばす。挙げ句には通りかかった店員にオーダーの追加までしている。


 その掌の武骨な傷跡の数々が、レオンが歴戦の拳士であることを物語っていた。


「勝手に追加すんな、何なんだよ。レオンのおごり?」


 邪険に見えるが、どこかレオンを慕う空気が滲み出ているリンが、「奢れ」と言わんばかりにメニューを手に取る。


「仕方ねぇな、全部だしてやるよ。ま、経費で落ちるからな」


「マジで!?」と、喜んだのもつかの間、聞き捨てならない、レオンの言葉にリンとガイが食いついた。


「……経費だと? 待て、いま経費と言ったか!?」


 アクアパッツァの魚の骨を口から吐き出し、リンが詰め寄る。


「俺らなんて、こないだのドラゴン討伐旅費すら『私的なピクニック』扱いで全額自腹だぞ! 悪徳骨董屋の算盤(そろばん)はどうなってんだ!」


「ずるくない?エレオノーラ様とオスカーの不当な差別だー」


 ガイが不貞腐れると、レオンが合点がいったと、手を打った。


「あぁ!俺とお前らじゃ、金の出所が違うわ」


 初耳だ。


 首をかしげる二人に、レオンが改めて語ったのは組織の意外な裏事情であった。実に7年もの間、すっかり説明し忘れてたらしい。雑な組織である。


「俺とオスカーの雇い主は、嬢ちゃん(エレオノーラ)じゃなくて、ヴァランシエール侯爵である、嬢ちゃんの母親のイゾルデ様なんだよ。俺らは嬢ちゃんの補佐ってとこだ」


天球の灯(スフィア・ランタン)』はエレオノーラの私的な組織である。侯爵であるイゾルデが、娘の趣味を黙認しているにすぎない。


「ええ!じゃあ、レオンだけギルドであんまり見かけないのはそのせいってこと?」


「まぁ、イゾルデ様の命令が優先ってこったな」


 飄々と肩をすくめるレオンに二人は目を丸くした。


「そっちだと食ったもんも、経費で落ちるのか?そっちの方が良いじゃん」


 リンが不満げに鼻をならすと、レオンは苦笑する。


「イゾルデ様は嬢ちゃんの三倍は恐ろしい方だぜ?」


 リンとガイが顔を見合わせる。


 ……アレの、三倍。


 沈痛な面持ちでまだ見ぬエレオノーラの母、イゾルデに二人は戦慄する。


「…やっぱ、今のままで良いわ」


「同感。アレより怖いの想像したくないよ」


 その様子にレオンは豪快に笑った。


「嬢ちゃんだってイゾルデ様に比べたら子猫みたいなもんだ。お前ら全員、まだまだ修行中ってことだよ」


 二人も薄々おかしいとは思っていたのだ。オスカーはともかく、レオンのエレオノーラに対する態度は、あまりにも軽すぎると。


 まさか、雇用関係がなかったとは。


「だとしても、『嬢ちゃん』は、ねぇんじゃねえの?」


「それは、ほら。初めて会ったときは、嬢ちゃんもまだ十歳くらいだったからなぁ」


 今更、変えられないなと、レオンはあっけらかんとしたものだった。


「つうわけで、俺がここに居るのは侯爵家からの命令ってこった、分かるか?」


 急に低くなったレオンの声に、思わず二人は息を飲む。賑やかな店内で、この場所にだけわずかな緊張が走った。


 しかし、すぐにその緊張をかき消すようにレオンは二人の頭をかき混ぜた。


「ま、お前らの仕事は俺の『お手伝い』だけどな」


 こうして、リンとガイはレオンに連れられて、この港町を治めるネーレイド子爵の邸宅を訪ねるのだった。


 それは、ネーレイド子爵から侯爵へともたらされた、ある厄介な事件の入り口でもあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ