第7話 堺校長という男
校長だと名乗る青年が現れ、教室は一気にざわついた。
「校長どうされたんですか?!」
突然現れた青年に鳴地はオドオドしている。
「やぁなるちぃ!ちょっと改めてご挨拶もかねてさ~おじゃましてもいいかな?」
青年は笑顔で教壇に立った。
「やぁ!改めまして!私は校長をやってる堺と言います!よろしくねー!」
校長は前にピースを出しておちゃらけており、
生徒たちはその場で固まっている。
「と、とりあえずみんな自分の席に座ってもらおうかな!」
鳴地の掛け声に生徒たちは自席に座った。
「ゴホン…えーっと入学式お疲れさまでした!そして入学おめでとう!」
シンと静まり返る教室で1人の少女が手をあげた。
「あ…あのぉ…」
「はい!酵全さん!」
校長は悩むこともなく、女子生徒の名前を呼んだ。
当てられた少女はスッと立ちあがる。
「あの…失礼なお話だと思うんですが…その…先ほど入学式でお話された校長先生とは似ても似つかないと言いますか…年齢から何まで違う気が…」
酵全はもじもじと両手の人差し指を顔の前でぐるぐると回している。
「あぁ!そうだよね!えっへへ、毎年新入生に驚かれるのに学習しない私が悪いね」
「なっ…?!」
「この姿なら信用してもらえるかな?」
虎汰が瞬きをした瞬間、教壇に立っていた青年が体育館で見た老人の姿に変わっていた。
――理解が、追いつかなかった。
「君たちはもう悠久学舎へ入学したんだ。
目で見たものは時に信じ、時に疑わなくてはならないよ。
そして気になることができたならば友人に、先輩に、そして先生に聞きなさい。
酵全さん、よい気づき、そしてちゃんと声に出せたことはとても素晴らしい。」
しゃがれた声で話していたかと思えば、次の瞬間老人の姿は青年の姿に戻っていた。
「さぁさぁ!なんでも質問ござれコーナー始めるよ!校長先生に聞きたいことがある人ー!」
校長は教卓の上に座り、足をプラプラとさせながら、右手を高々と上げている。
「はい。」
「はい!玻璃田君!」
「先ほどから姿を変えられたりしている限り、朱式術を使用されているのかと思いますが、今まで生きてきて人体そのものに影響を及ぼす朱式術というのを見たことがありません。
先生の血液型は何なのでしょうか?」
「おっ、いい質問だねぇ」
校長は教卓から飛び降り、玻璃田に近づいた。
「私の存在そのものが秘匿対象になるので、学校外では聞いたことすらない血液型かと思います。
私の血液型は境界型です。
なぜこの血液型が秘匿なのかというと、私の家系以外には、存在し得ない血液型だからね。」
「はい。」
「はいどうぞ刀刃君!」
校長はくるりと向きを変え、虎汰を見ながら指をさした。
「血液型は、俺なら刀型、雨宮なら呪術型のように、この地球上全ての人類が何かしらの血液型を持っています。
そこからさらに銘家の血筋を持つ者は、細分化された血液型【家系血】を持っています。
原則として、銘家の血は大枠の血液型から派生するものであり、大枠の血そのものが銘家以外存在しない、という例を生まれてこの方15年一度も聞いたことがありません。
また、限られすぎる血液型は希少性の高さや、輸血の困難さから長い歴史を持てないとも聞いております。
失礼ですが、校長は本当に【境界型】という血液型なのでしょうか。」
「いいね、いい質問だ。だが生まれて15年ぽっちで世の中を見るのは甘いね。」
気づくと校長は虎汰のそばに立ち、指先を虎汰の額に当てている。
触れられた瞬間、背中に冷たいものが走った。
「この世は秘密でいっぱいさ。今まで君たちが知ってきた知識なんて、全体の1,2%にも満たない。」
校長は虎汰のおでこをピンっと弾いた。
「私の血液型が境界型というのは本当だ。先ほどからずっと朱式術を見せているだろう。」
校長は笑顔で軽やかに教室を練り歩く。
「そして君たちは私の朱式術でこの校舎へ入ってきただろう。」
にやりとした顔で校長は生徒の方を振り向いた。
虎汰たちは、何もない平野から突然校舎が現れた光景を思い出す。
「で、でも校長先生!」
雨宮が手を上げる。
「朱式術は自身の血が及ぶ範囲でしか発動しないはずで…あの時は近くに校長先生いなかった!!」
「いい質問だねぇー!ま、そこら辺はこれからちゃーんと授業で教えてもらえるから、それはお楽しみってことにしとこうかな!」
校長はニコニコ笑顔で雨宮を見ながら教卓で頬杖をついている。
「それじゃあ、まぁこの辺で私はお暇とさせていただこうかな。あんまり長居しすぎてもなるちぃに怒られちゃうしね!」
校長は両手を頭の後ろに当ててヘラヘラと笑っている。
「じゃあ後はなるちぃよろしくね!みんなもまた私と話したくなったらいつでも連絡ちょーだいね!支給してるスマートフォンの連絡帳に校長で入ってるからー!じゃーねー!」
校長はスタスタと教室を出ていった。
「はぁ…」
鳴地は嵐が去っていった教室で大きくため息をついた。
「みんな突然すぎて驚いたよね、いやぁまさか教室に直接来るなんて思わなくてね…。
それじゃあ気を取り直して!支給品を配ります!」
鳴地は大きな箱をいくつか運び入れ、1つずつ取り出し配り始める。
「各自配られたものは死ぬまで使うものだから、無くさないように!」
生徒たちは支給品リストと配られたものを照らし合わせる。
「全員手に渡ったかな?
そしたらまずはスマートフォンの裏に書いてある名前に間違いがないかを確認して、起動してみよう!」
生徒は全員スマートフォンをひっくり返し、自身の名前が記載されているのを確認し、電源ボタンを長押しした。
「先生起動しないよー!」
雨宮がスマホを頭上に上げ、ブンブンと振っている。
「そのスマートフォンは特殊でね、持ち主の血を感知しないと起動しないんだ。使う術は印血で大丈夫だよ」
教室のあちこちから印血を唱える声が聞こえる。
「印血。」
虎汰はスマートフォンの電源ボタンを押しながら術を唱えると、起動音と共に画面が明るくなった。
「よし!みんな起動したみたいだね。
そのスマートフォンは学生証や食堂で支払うお金、寮の鍵諸々生活するうえで必要な機能ほとんど入っているから、無くしたり壊したりしないよう大切に使うんだよ。」
鳴地はバタバタと支給品の入っていた箱を片しながら説明を続ける。
「そうしたら今日はこれで終わり!授業は明日からだからしっかり休むようにね!これからみんなの寮へ案内するよー!」
「寮だぁーーー!!」
雨宮の声が教室に響いた。




