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血に名を与えたこの世界で  作者: 錦 美和
入学式と境界線

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第6話 入学式

『新入生!入場!!』


 入場の合図と共に大歓声の中、虎汰達は鳴地に着いて前へ進む。


 体育館はまるでアリーナのように、下から上までぎっしりと座席が積み上がり、その全席が人で埋まっていた。


 視線が一斉にこちらへ向けられている気がし、虎汰は無意識に背筋を伸ばした。


「っ…!」


 虎汰は緊張のあまり生唾を飲み込んだ。


 自分たちの座る座席の前に着き、数秒ほど待つと再度声が体育館に響く。


『新入生!着席!』


 司会役の女性の声に合わせ、虎汰達は一斉に着席をした。


『それでは、悠久学舎の入学式を執り行います。一同起立!』


 ザッという音と共に、体育館内の全員が起立する。


『校歌斉唱!』


 スピーカーから校歌が流れ始め、虎汰達を除く全員が歌い始める。


 歌詞は血を守り抜くこと、誇りを持つこと、

 そして家系血を疑わず信じ抜くことを歌っていた。


(信じる…か)


 虎汰は校歌を聞きながら少しうつむいた。


 校歌を歌い終わると、全員着席した。


 数秒後、鳴地が前方の壇上へ向かい、マイクの前に立つ。


『それでは、新入生の名前を読み上げます。名前が呼ばれた者は起立するように。雨宮 霖!』

「はい!」


 クラスメイトの名前が次々と読み上げられていき、名前を呼ばれた生徒たちは順々に立ち上がる。


『刀刃 虎汰!』

「はい!」


 虎汰は大きく返事をし、まっすぐに立ち上がった。


 そして最後は隣に座っている療ヶ裂の名前が呼ばれた。


『療ヶりょうがさき 治久はるひさ!』

「はい!」

『以上、14名。』

(…?)


 虎汰はつい先ほどまで、鳴地しか立っていなかったはずの壇上に、見知らぬ老人が立っていたのを見つけた。


 虎汰はずっと鳴地をまっすぐに見ていたから気づかなかったのかと考えもしたが、流石に1人しかいない壇上に人が上がってきたら気づくはずだ。


 だが虎汰は、老人が壇上に立つ瞬間を()()()()()()()()

そこに「現れた」という感覚すら、なかった。


『14名の生徒の入学を、正式に許可いたします。』


 老人は、最初からそこにいたかのような自然さでマイクに手を添え、入学許可を宣言した。


『それでは、続きまして悠久学舎校長よりご挨拶をお願いいたします。』


 司会役の女性は、壇上上に立つ老人に一礼し、下がっていった。


『新入生の諸君、入学おめでとう。

 私は本校の校長を務めているさかいです。どうぞよろしく。』


 虎汰はしゃがれた声に、理由の分からない懐かしさを覚えた。


『君たちは今までこの学校の外で15年間暮らしてきました。

 辛いことや嫌なこと、思い出したくもないようなことを沢山経験して来たでしょう。

 また、楽しく一生忘れられない素敵な経験も沢山して来たでしょう。

 その思い出は胸に刻んだまま、この学校での生活を楽しみ

 またあなた達の貴重な血液を未来永劫はるか先まで残し続けることができるよう、多くの事を学んでください。

 私は君たちを守ります。

それが、この学校にいる間の私の役目です。


 何か悩み事があるならば、直接言いに来てもいい。

 私はいつでも誰でも歓迎するよ。


 それと最後に、毎年のクラス名は私が独断で決めさせてもらっている。

 君達のクラス名は【癸丑みずのとうし

 少し難しい名前だけど、憶えてね。

 以上。』


 校長はぺこりと頭を下げ、大きな拍手の音が体育館中に響き渡った。


 校長は静かに壇上を降りていった。


 その後、療ヶ裂の挨拶や在校生代表の挨拶を終え、式は無事に終了した。


 虎汰達は多くの人からの拍手や歓声を受けながら、鳴地に続いて体育館を後にした。


「みんなお疲れ様ー!」


 鳴地は教室棟の前に着くと、生徒達に振り向いた。


「一旦僕は荷物を取りに職員室へ行ってくるので、みんな先に教室で待っててー!」


 鳴地はそういうと、先に教室棟へ入って行き、生徒たちはバラバラと列を崩しながら教室棟へ入っていった。


 生徒たちは朝いた教室に戻り、自席に戻る者や、人と話す人などで

 教室がガヤガヤと賑やかになっていく。


「つっかれたーーー!」


 雨宮は玻璃田の机の上で腕を伸ばしてべしゃっと潰れている。


「あんなに人がいるなんて聞いてねぇよ…」


 虎汰は玻璃田の机の横で腕を組んでいる。


「あぁ、全校生徒をかき集めてもあの人数にはならないだろう。この学校で働いている人達もいたんだろうな。」


 虎汰達が話をしていると、1人の男が3人に近づいてきた。


「やぁやぁ」

「えっと…療ヶ裂だっけか…さっきはありがとな。」

「全然、顔色はだいぶ良くなったみたいだね。良かった良かった」

「あー!新入生代表の人ー!」


 雨宮は療ヶ裂を見上げながら指をさしている。


「どもども~、新入生代表の人で~す」


 療ヶ裂はヒラヒラと手を振っている。


「それにしても、なんで俺が具合悪そうにしてるって分かったんだ?すぐそばに最初からいたって訳じゃねぇのに…」

「そりゃあ僕、医型だから()()()分かるんだ~。

 君がふらふらし始める前から血流が乱れてたから、あっこれはまずいって思ってね。

 じゃ、一旦は大丈夫だとは思うけど、もしまた具合悪くなるようだったら保健室に行くんだよ~。じゃね~」


 療ヶ裂は眠そうな目をしたままニコッと微笑み、自分の席へ戻っていった。


 ガラガラガラ


 ドアが開き、鳴地が教室に入ってきた。


「はーい!みんなおまたせー!」


 パタパタと鳴地は教壇に上がり生徒を見るが、生徒は全員ドアの方を見ている。


「ん?みんなどうしたの?」


 鳴地が生徒の視線の方を見ると、虎汰達と同い年くらいの青年が立っていた。


「やぁみんな!こんにちは!」


 青年は悠久学舎指定の制服は着ておらず

 白シャツの上にグレーのパーカーを羽織り、その上にはブレザーを着ている。


「誰?」


 虎汰が青年に声をかける。


「誰だなんて酷いなぁ~さっきお話しした校長だよ~」


 校長と名乗る少年は頭の後ろに手を回しながら、まるで悪戯が成功した子供のように笑っていた。


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