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血に名を与えたこの世界で  作者: 錦 美和
境界線の内側

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第19話 血力の形

「りょ……療ヶ裂!」


 虎汰は、いつの間にか背後に立っていた療ヶ裂を見て目を見開いた。


「やぁ、こたちー。うまくいったっぽいねぇ~」


 療ヶ裂は眠そうな目をしながらニコニコと笑っている。

 朱式術を使い続けている錫成と、すでに血力の流れを読み終えていた玻璃田も、療ヶ裂を見てぽかんとしていた。


「あ、自己紹介まだだったっけ。」


 療ヶ裂は大きな手を自身の後頭部に当てて撫でている。


「療ヶ裂だろ?知ってるよ。優等生ってやつだろー?」


 錫成はニヤニヤとしながら療ヶ裂を見ている。


「あっはっは、優等生で~す」


 療ヶ裂はヘラヘラとしている。


「刀刃は血力の源が見れたのか?」


 玻璃田は腕を組みながら虎汰に質問をする。


「あ、あぁ……時間かかって悪ぃな。療ヶ裂のおかげで、なんとかなった」


 虎汰は人差し指で頬をポリポリとかきながら苦笑いをしている。


「まぁしょうがないよ、似ているとはいえ血液型がカンカンとは違うからね」


 療ヶ裂は親指で錫成を指差した。


「じゃあ次は自分の体でやってみよっか。

 カンカンの血流を読ませたのは理由があってね。

 最初から自分の血を読むと、

 印血の集中と血流の集中がぶつかるんだ。

 だからまずは“他人の血”で流れを覚える。」


 虎汰は療ヶ裂に言われるがまま左手首に右手の人差し指と中指を当てて、術を唱える。


「印血」


 じわっと指先が充血し始め、ゆっくりと血が滴り始める。

 先ほど錫成の血力を見つけた容量と同じように自身の血力を見つけ、徐々に脈から血流をたどっていくと、自身の血力も肝臓から生成されていた。


 だが――違う。


 錫成の血力は、じわりと滲む靄のようだった。

 ピンと張られた糸。真っ直ぐに、鋭く伸びていた。

 虎汰は印血を止め、目をゆっくりと開いた。


「血液型が違うと血力の流れ方が違うんだ。だから自身の流れをちゃーんと見ないとダメなんだ。

 ちなみに家系血でも血力の流れは個人個人で変わってくるけど、それは自身で極めてもらう領域だから

 まずは大枠の血液型ごとに流れが変わる印血で流れを読み取ったって感じだね~

 だからカンカンとはりぼーは、お互い見あえれば大丈夫って感じ~

 ……あ、カンカンまだ血力の流れ見れてないっけ」


 療ヶ裂は玻璃田に術を唱えるように伝え、錫成が玻璃田の腕に指を当てて血力の流れを読み取り始めた。


 自身の血力の流れを読み取り終えた虎汰は、何かを掴めたような感覚があり、じっと掌を見つめていた。


「はいはいみんなちゅうもーく!」


 鳴地はパンパンと手を叩きながら生徒の注目を集める。


「みんな自分の血液型の流れは読めるようになったかなー?」


 生徒たちは皆うんうんと首を縦に振っている。


「そうしたら、さっき古室君からあった質問について回答するんだけど…」


鳴地は再度ホワイトボードに絵を描く。


「この世には似た血液型というのがあります。

何をもって似ているかとするんだけれど、今回は血力が生まれる内臓が同じ人で宝然さんと刀刃君はそれぞれ地型と精製型のチームに入ってもらいました。」


鳴地は人の絵を描き、足と腹部に丸を書いた。


「地型と石型の人は足から、精製型と刀型の人は肝臓から血力が作られます。

この他にも同じ場所から血力が作られる血液型は複数あって、これについてはまた今度授業でやるからね!」


鳴地は笑顔でペンのキャップを閉めた。


「そうしたら今日の授業最後の仕上げ!印血を無詠唱で使えるようになろー!

 みんなスマートフォンを出して~」


 生徒たちは自身のポケットからスマートフォンを取り出し始める。


「それじゃあここからは個人戦!スマートフォンを起動できた人から帰れるから、開けたら僕を呼んでね~」


 生徒たちはスマートフォンの起動ボタンに親指を当て、無言でじっと起動しようと印血を唱える。


 虎汰は目を閉じた。

 肝臓から生まれる血力。

 それを――

 先ほど見た“糸”の形のまま、指先へ流す。

 指先がじんわりと温かくなり、虎汰は目を開いた。


「……起動してねぇ」


 手に持ったスマートフォンの画面は真っ暗なまま。


 じんわりと温かくなった指先からも、一滴の血すら落ちていなかった。


 がっくりとする虎汰の横で錫成が声をあげた。


「起動したーーー!」


 錫成は、開いたスマートフォンを虎汰と玻璃田に突きつけた。


「すごいな。」


 玻璃田は表情は崩していないが、驚いているような声色をしている。


「お!早いね錫成君!」


 錫成の声を聞いた鳴地が近づいてきた。


「先生!これでいいっしょ!」


 錫成は鳴地を見上げてニカッと笑っている。


「もちろん!そしたら錫成君は着替えて帰って大丈夫だよ!」


 鳴地は右手の指でオッケーをしている。


「うーん…ちなみに残って2人をサポートすんのってダメかな…?」


 錫成の質問に鳴地は優しく微笑んだ。


「それは全然かまわないよ」

「よっしゃー!玻璃田、刀刃!俺がコツ教えてやるからがんばろーぜー!」


 錫成は鳴地に背を向け、玻璃田と虎汰に駆け寄っていった。


 鳴地はその姿を見てにっこりとほほ笑み、他チームの様子を見に行った。


「霖。体に力いっぱい。抜くべき。」


 蠱邑は、顔を赤くしながらスマートフォンの起動ボタンを力強く押している雨宮にアドバイスをしている。


「んぐぐぐぐぐぐぐぐ…んわぁああ!全然起動しないよーーーー!」


 座っていた雨宮は、バンザイをしながら後ろへ倒れた。


「呪術型の血力、喉から作られる。」


 蠱邑は喉を人差し指でさしている。


「分かってるけど難しいよぉ~…」


 雨宮はべそべそとしながら蠱邑に抱きついている。


「力の流れ思い出す。喉から指先。霖、指先しか考えてないからダメなる。」


 蠱邑は抱き着いてきた雨宮のおでこをピンっと指ではじいた。


「あいだぁっ」


 雨宮はのけぞり、指ではじかれたおでこをさすっている。


「もう一度我の血流見るべき。見せる。」


 蠱邑は雨宮の腕を掴み、自身の手首に当てようとする。


「もう大丈夫!大丈夫だよ蠱邑ちゃん!!」


 雨宮は半べそをかきながら拒むが、蠱邑の力が強く、雨宮の指が蠱邑の手首に触れた。

 その瞬間、通常の脈とは違う虫が全身を這うような感覚が雨宮の指先から全身へ走った。


「血力の流れ見るとかそういう次元じゃないよぉ…」


 雨宮は泣きながら蠱邑の腕に指先を固定され続けている。


「呪術型の血液型、きもい。仕方なし。」


 蠱邑は無表情のまま、雨宮に触れさせている手でサムズアップをしている。


「やだぁぁーー!!」


「ほい!先生これでええんよな!」


 体育館の端では、すでにスマートフォンを起動していた丹朱が鳴地に画面を見せていた。


「流石に簡単にできちゃうよね」


 鳴地は少し困った表情で笑っている。


「そんなことないで?!いくら家業を小さい頃から手伝ってたとはいえ流石に無詠唱っちゅーのはなぁ…」


 丹朱は腕を組みながら眉間にしわを寄せている。


「あ、いやそういうことじゃ…」

「ま、僕らはクリアしたんで先帰らせてもらいますわ。行こか、ちりちゃん」

「え?!あ、まってや絹織!」


 先に体育館を出ていった絹織を追いかけるように、丹朱はパタパタと走って体育館を後にした。


「あいつらもう終わったのか…」


 虎汰は、体育館を出ていった絹織と丹朱の後姿を見つめていた


「刀刃集中集中!!」

「わ、わりぃ」


 錫成が手を鳴らし、虎汰の視線を戻す。


「いいか?!こう、ぐわーーってなって

 ごぉおーー!だ!!」

「全然分かんねぇよ…」

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