第16話 疑う癖
「じゃあ虎汰君また後でねー!」
雨宮と丹朱は女子更衣室へ、虎汰と絹織は男子更衣室へ向かう。
「なぁなぁ虎汰君、霖ちゃんとは仲ええの?」
絹織はニヤニヤとしながら虎汰に質問をする。
「雨宮か?いや、別に…。」
「またまた、冷たいこと言うてぇ~。」
このこの~と虎汰を肘で突っつく。
「だからそんなんじゃ…」
ガラガラガラ
更衣室のドアを開けると、先に着替え始めていた生徒達で賑わっている。
「お、刀刃遅かったな!あー…歓迎会で先輩のとこにいた…絹織だっけ?」
錫成が更衣室に入ってきた刀刃と絹織を見つけて話しかけてきた。
「錫成君やんな、俺は絹織。よろしゅーな!」
「あれ、俺お前に自己紹介したっけ?」
「スマホに入ってるクラスの連絡先見て覚えてん」
「えぇ~すっげぇなお前…おう!俺は錫成!よろしくなー!」
錫成は絹織と握手をした。
虎汰と絹織は更衣室の空いているスペースで制服を脱ぎ始める。
絹織がワイシャツを脱いだのを横目で見る。
細身でありながら、無駄のない筋肉がついていた。
「お前…鍛えてんのか?」
「やー!そんなまじまじと見んといてやー!恥ずかしいなぁもー。」
絹織は恥ずかしがりながら、そそくさと体操着を着た。
「そんな恥ずかしがるもんじゃないだろ…むしろかっけぇっていうか…」
「ほんま?虎汰君に、そー言われると嬉しいなぁ。ありがとう」
虎汰は自身の筋肉がほとんどない体を見て、お腹をぺちんと叩いた。
「だいじょぶやって虎汰君!大人になったら程よく筋肉つくて!」
「笑ってんじゃねぇよ!うるせぇな!!」
虎汰は耳を赤くし、ワイシャツを絹織に投げつけるようにして体操着に着替えた。
2人は着替え終わり、更衣室を出て雨宮と丹朱を待っていると
絹織が虎汰に話しかけてきた。
「霖ちゃんとは学校来る前から知り合いやったん?」
「しつけぇな…」
「ええやんかええやんかー恋バナしよやー」
「そういうお前は丹朱とずっと一緒にいるじゃねぇか。お前らこそ付き合ってんじゃねぇのか?」
「えー、そー見えるー?」
絹織が頭をポリポリとかきながらニヤニヤとしていると
遠くから丹朱が叫びながら猛ダッシュで近づいてきた。
「きっしょいこと言わんといて虎汰君!!」
「そんな怒んなって~」
相変わらず絹織はヘラヘラとしている。
「そもそも、うちら家系血を持つ人間同士が付き合うなんてありえへんやろ?!」
丹朱は虎汰に笑顔を向けながら、絹織にヘッドロックをかましている。
「いででででギブ…ギブギブ…」
4人は話しながら体育館へ向かう。
「へぇ~霖ちゃんがたまたま虎汰君を見つけたんかいな」
絹織は虎汰と雨宮の話を聞きながらほぉほぉと頷いている。
「そう!入学式の日に学校目指して歩いてたら、たまたま虎汰君が傘さして歩いてるの見つけたの!」
「でも、霖ちゃんは呪術型で虎汰君は刀型やろ?血液型全然ちゃうやん!学区とか遠そうやけどな」
丹朱が天井を見ながらうーんと考えている。
「うん!虎汰君のとこまですっごく歩いたよ!」
「なんでそない遠い虎汰君のとこまで歩いて行ったん?」
丹朱がずいっと雨宮に近づいた。
「それがね…普通に学校までの道のりで迷子になっちゃったんだよね…」
雨宮はどや顔をしている。
「ぷっ…あっはははは!おもろい子やなぁ~!そーかそーか、迷子なったんかいな!」
絹織は大きな声を出しながら笑っている。
「迷子なんか、なるわけないやろ。」
さっきまで笑っていた絹織は突然怖い顔をして雨宮に近づいた。
「えっ…」
雨宮は急に怖い顔になった絹織を見て表情が固まる。
「入学通知書に書いてある通り、ちゃーんと来れば迷うことなんてまず無い。
……なんで迷ったんや。」
絹織は雨宮に近づき、壁際へ寄せた。
「な、なんでって…」
「あ、雨宮は入学通知書を見てねぇ!」
じりじりと壁際に追い詰められた雨宮と絹織の前に虎汰が飛び出した。
「雨宮は入学通知書を見せてもらえなかったって言ってたんだ。な!雨宮!」
「う、うん…!親が見せてくれなくて…」
虎汰に庇われた雨宮はしどろもどろになりながらも、入学通知書を見せてもらえなかったことを絹織に説明する。
「だから仕方ねぇだろ!
急にそんな顔して、雨宮に詰め寄んなよ!」
虎汰が絹織に言い返すと、少しの沈黙が流れた。
「そっか!ならしゃーないな!逆によぉ学校に来れたなぁ」
絹織は虎汰の話を聞いて、パッと表情が変わり
笑顔で雨宮の頭をポンポンと撫でた。
「えらい怖がらせてしもたね。ごめんな霖ちゃん。僕、人を疑う癖があってなぁ」
「あんた急に霖ちゃん追い込んで何したいねん!!
霖ちゃんごめんな…怖かったよな…」
「ちりちゃんそない謝る必要ないやろ~」
「うるさいわ!!絹織にはうちからガツーン言うとくから!
う、うちら先行っとくわ!ほんまごめん!ゆっくり体育館来てな!先生にはうちから言うとくからーー!」
丹朱は絹織の背中を押しながら走って体育館へ行ってしまった。
「大丈夫か雨宮?」
虎汰は絹織と丹朱が走っていくのを見た後、壁際で呆然としている雨宮に振り返った。
「こ…怖かったぁ…」
雨宮はずるずるとへたり込んだ。
「丹朱が先生には言っといてくれるらしいから、俺らはゆっくり行こうぜ。
水買ってくるからちょっと待ってろ。」
虎汰は廊下に雨宮を残し、近くの自動販売機を探しに校舎から出た。




