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血に名を与えたこの世界で  作者: 錦 美和
境界線の内側

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第14話 食え、胸を張って

『悠久学舎~悠久学舎~、お降りの方は忘れ物にご注意ください。』


 電車のドアが開き、乗客たちが降りていく。

その流れに乗り、6人もホームへと足を踏み出した。


「いやー!こんな時間でも人は多いんっすねー!」


 粉粒がキョロキョロしながら、行きかう人を見ている。


「じゃ、じゃあ…朝ごはん食べに行こっか…!」


 6人は駅舎から食堂へ移動し、券売機に並ぶ。

 朝7時30分と早い時間ではあるが、食堂はそれなりに人がおり、賑やかである。


「お!有奈っち!健造っち!パン食べ放題あるっすよ!すげぇーっすねぇー!」


 粉粒は券売機上にあるメニューを指差し、酵全と菌誠に話しかける。


「おぉ!それはいい!腹が満たされんと授業も集中できんからな!!」

「ど、どんな味かな…楽しみだね…!」


 3人がワイワイと話しているのを見ながら、注文を終えた錫成が朝食を受け取った虎汰へ話しかける。


「なぁなぁ刀刃、お前ってもしかしてパンって」

「食ったことない」

「またかよ!!」


 錫成の大声に、周囲が少しだけこちらを見た。

 虎汰は視線を避けるように、湯気の立つ味噌汁へ目を落とした。


 6人はそれぞれ注文した朝食を受け取り、席に座った。


「じゃあ、あたしらはパン取ってくるっす!先食べてていいっすからねー!」


 粉粒、酵全、菌誠、錫成はパンが積みあがっている食堂中央に向かって歩いて行った。


「お前は食わねぇのか?パン。」


 虎汰は焼鮭定食を食べながら玻璃田に質問をした。


「今日は和食の気分だったからな。ダメか?」


 玻璃田も虎汰と同じ焼鮭定食を食べている。


「ダメじゃねぇけど…。なんか…ありがとな。」

「何がだ?」


「うーん…おいしいっすけどねぇ…」

「うーん…。」

「オレは好かんな!!ガッハッハ」

「えぇ?!俺結構美味いと思ってんだけど、あんまりなのか…?」


 パンを取りに行った4人はそれぞれ取ってきたパンと、注文したおかずを食べている。


「刀刃、食ってみるか?パン。」


 錫成は持ってきたパンを1つ虎汰へ差し出すと、3人がそれを見て制止した


「ま、まって…!」

「待つっすーーー!」

「待て!!!」

「な…なんだよ…」


 錫成は突然制止され、驚いている。


「と、刀刃君はパン食べたことないんだよね…」

「お…おう。というかパンだけじゃなくて和食以外全般…」

「じゃあ初めてのパンはもっと美味しいの食べるべきっす!!」

「え…えぇ…」

「オレらが最高のパンを焼いて持ってきてやる!何遠慮するな!」

「いや…俺食べられないかもしれな…」

「俺も美味いパン食べてぇー!」


 笑い声を重ねながら、6人は朝食を食べ進めていった。

 虎汰はパンを食べさせられるのか…と少々げんなりしていた。


「そ…それじゃあ明日の朝、私達パン焼いてくるから、また朝7時エントランス集合でも良いかな…?エントランスより少し行ったところに、日本庭園を見ながらちょっとした飲食ができるような、テーブルと椅子が並んだスペースがあったから…」

「マジか!やったー!じゃあ、じゃあ俺みんなに1個ずつ錫グラス作って持ってってやるよ!最高なんだぜ錫グラス!」

「なら俺は硝子のピッチャーを持っていこう。いいものを作っていくと約束する。」


虎汰は、5人のやり取りを黙って見つめていた。

輪の中にいるのに、どこか一歩引いた自分がいる気がした。


「虎汰っちは死ぬほどあたし達が作ったパンを食べるっすよ!」


 粉粒はガッツポーズを虎汰に見せながら、まぶしい程の笑顔を向けている。


「俺は……何も作れねぇし」


 虎汰は両手の指を絡め、視線を落とした。


「食うだけってのも、なんか情けねぇだろ」

「もしかして何か作らねばならんと気負いしているのか?

 人それぞれ血液型それぞれ!刀刃が活躍すべき場所はここではない別の場所というだけだ!お前には口を使って、俺らが作ったパンを食べるという重大任務があるのだから胸を張って来い!!」


 菌誠が虎汰の背中を思いっきりバァンと音が食堂中に響き渡る程の威力でぶっ叩いた。


「いっっっっでえぇぇええ!」


 虎汰は前に吹っ飛び、涙目で背中をさすってる。

 だが、どこかほっとしたような表情もしていた。


 話が盛り上がる中、食器を片した玻璃田が戻ってきた。


「もういい時間だ、お前ら盛り上がりすぎて遅刻するなよ。俺は先に行っている。」


 じゃあなと言い残し、玻璃田は一足先に教室へ戻っていった。


「玻璃田の奴はえーな。まだ授業まで30分以上あるのに」


 錫成は食堂を出ていく玻璃田の背中を見送った。


 残った5人は刀刃の食べたことが無い食べ物や、各々の家系血の事

 これからの学校生活について話し込んでいた。


「…。やべぇ!もうすぐ授業始まる時間じゃん!」


 気づけば食堂の人もまばらになっていた。

 朝の喧騒は、いつの間にか静まりつつある。


 錫成はハッと気づき、食堂にある時計を見ると、既に8時55分を指していた。


「まずいまずいまずいまずい!1限目って確か…」


 全員バタバタと立ち上がり、食器を片して教室棟へ走り始める。


「おめぇら初日から俺の授業に遅刻するとは言い度胸してんじゃねぇか。」


 錫成達が教室のドアを開けると、全身真っ黒に赤いロングコートを羽織った層縁が立っていた。


 5人は全力疾走をしたため、全身から汗をかき

 菌誠以外は肩で息をしている。


 層縁は5人の頭を手に持っている書類で勢いよく叩いていった。


「今日のところはこれで許してやる。次があると思うんじゃねぇぞ。」


 層縁はくるりと向きを変えて教壇へ戻っていった。

 一番前のドア側の席に座る玻璃田が大きくため息をついている。


「遅刻した馬鹿共もいたが、授業を始める。昨日岩城がお前らに話しかけた時にちょいと邪魔させてもらったが、改めて自己紹介しておく。俺の名は層縁。血液型は地型だ。」


 層縁はイライラとしながら腕を組んでいる。


「俺が担当するのは歴史だ。」


 層縁は教室を見渡した。


「お前らの血液型の歴史について教えてやる。」



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