第1話 血液型占い最下位の日
「お前みたいな半端モンの護衛を、15年やったんだ!!!褒めろよ!!!」
「ッッッッ!!!!!」
青年は目覚まし時計が鳴るより30秒ほど早く飛び起きた。
「クソッ…」
青年は片手を額に当て、深呼吸をして呼吸を整える。
着物は寝汗でぐしょぐしょだ。
ジリリリリリ
時刻は朝4時。
窓の外はまだ暗く、けたたましい目覚まし時計の音が静かな部屋に鳴り響いている。
バンッと青年は目覚まし時計を勢いよく止め、ぐしょぐしょの着物を脱ぎ、畳まれたワイシャツと制服の真っ黒なズボンを手に取り、風呂場へ向かう。
ガラガラガラ
風呂場へ着いた青年は、軽く汗を流し身支度を整える。
ドライヤーで髪を乾かし、ピカピカのワイシャツとズボンを履き、食堂へと向かう。
「おはよう、母さん。」
「おはよう、虎汰君。
あんまりよく眠れなかった?」
青年の名前は虎汰。
本日高校へ入学する15歳の青年だ。
食堂には母親が先に着席しており、少し下がったところには綺麗な着物を召した侍女が正座をして畳の上に座っていた。
「幸さんもおはよう。」
「おはようございます。虎汰さん。」
侍女は虎汰へ優しく微笑んだ。
「朝からレバーのしぐれ煮だなんて豪華だね。」
「そりゃあそうよ!今日は虎汰くんの入学式なんだから!
式中に貧血で倒れたりしたら大変だからね!
腕を振るったわよ~」
「誰が?」
「さっちゃん!」
母親は後ろで正座をしている侍女を指差し、笑っている。
虎汰はふっと笑い、着席すると、手元にあったテレビのリモコンを手に取り、テレビの電源を付けた。
『今日の血液型占い~!』
テレビからは毎朝やっている血液型占いが流れている。
「あぁ!今日の天気予報見るの忘れちゃった!」
血液型占いを見た母親は、血液型占いの前にやっている天気予報を見るのを忘れたことを思い出した。
「昨日の夕刊には晴れとありましたよ」
侍女がこそっと母親に耳打ちする。
「本当?!よかったわね虎汰君!晴れですって!」
ニコニコと母親は笑いながら手を合わせる。
「いただきます」
2人はなんてことない会話を交わしていると
テレビでは血液型占いの終盤に差し掛かっていた。
『そして本日の最下位は~~~刀型の人~~!』
「家が最下位?!やんなっちゃう!!せっかくの門出なのに!」
母親はほっぺをパンパンに膨らまし、怒りながらテレビを消した。
「気にしたら負けよ!虎汰君!」
朝食を食べ終えた母親は、空いた食器を手に取り立ち上がった。
「ま…まぁ…占いなんてそんな当たるもんじゃないし…」
虎汰も食べ終え、自身の食器を手に取って立ち上がる。
「食器は洗っておきますので、お2人は薙さんのお部屋にお向かいください。」
幸が着物の袖をひもで縛り、2人を台所からぐいぐいと背中を押しながら追い出した。
「あ!そうね!幸さんありがとう!」
母親は虎汰の手を握って自室に向かった。
2人は母親の部屋に着き、障子を開ける。
中に入った母親は、大きな桐ダンスから一枚の黒い布を出し、虎汰の前で大きく広げた。
「じゃじゃーん!こちら虎汰君専用のマントでーす!
詰襟制服の上に着てね!」
虎汰は広げられたマントをキラキラとした目で見ている。
マントの襟もとには、虎汰の家”刀刃家”の家紋が入っていた。
「母さん、これって…」
「家の家紋!日本刀の入った家紋ってかっこいいわよねぇ
家から出た、ちゃんとした銘家の子ですよっていう証でもあるから、大切にしてね」
母はマントを虎汰へ渡し、虎汰は受け取ったマントの家紋を指で撫でた。
「うん…。」
虎汰はどこか曇った表情で返事をした。
ボーンボーンボーン…
母親の部屋にある壁掛け時計から大きな音が鳴っている。
時刻は6時をさしていた。
「いけない!今日は始業式で早くいかなくちゃ行けないのよね…!自分の部屋に戻って制服持ってきなさい!玄関で待ってるから!」
母親は自室から虎汰を出し、最後の支度をするように言った。
虎汰は自分の部屋の障子を開け、ハンガーにかけていた詰襟制服を手に取った。
鏡の前に立ち、詰襟制服を着たがどうにもしっくりこない。
「似合わねぇ…」
先ほど母親からもらったマントを詰襟制服の上から羽織り
よしっとつぶやき廊下へ足を向けた。
障子を閉める前に、15年間居続けた自分の部屋を目に焼き付けるため振り返った。
目線の先にある机の上には腕輪が2本、重なるように置かれていた。
内側が2本とも擦り切れている。
「どうしてなんだよ…」
虎汰はポツリとつぶやき障子を閉めた。
玄関に着くと、母親と幸が笑顔で虎汰を待っていた。
「わぁー!やっぱり似合うわぁ!虎汰君かっこいいよー!」
母親はキャーっと歓声をあげながら小さく拍手をしている。
「ありがとう…」
虎汰は少し照れながら頭をポリポリとかく。
「それじゃあ、行ってくるね。」
玄関の戸に手をかけながら、母親と幸に最後の挨拶をする。
「頑張ってね虎汰君!」
「応援しています虎汰さん」
母親と幸は虎汰に笑顔を向け、声援を送った。
ガラガラガラ
虎汰は戸を開け新たな一歩を踏み出そうとしたが
ザァァァァァ
外はとんでもない土砂降りだった。
土砂降りの外を見つめ、3秒ほど固まった。
「テレビの血液型占いが最下位とか言うからだわ!天気予報も間違ってるし!酷いわっ!!」
母親の怒りの声を背中で受け、ハッと我に返った虎汰は、一度戸を閉めた。
玄関の戸棚から1本の雨傘を取り出す。
「ま…まぁ…怪我したとかそういうんじゃないし…」
虎汰は少し落ち込みながらも、「運が悪いのはきっとこの雨だけだ」と自分に言い聞かせた。
「なんだか出鼻をくじかれちゃったけど…改めて行ってきます」
口元だけうっすらとほほ笑み、改めて戸を開けた。
「あ!父さんによろしくね!」
母親の声は土砂降りにかき消され、虎汰は聞こえぬまま外へ出て戸を閉めた。
「あれ!?聞こえなかったかな?聞こえなかったかな幸さん!?」
オロオロとしながら玄関から出ようとする。
「だめですよ薙さん。」
幸が母親の腕をガシッと掴んだ。
「はっ…そ、そうね…今日の午前中は虎汰君達以外、外に出ちゃいけない》》んだったわ…
父さんによろしく言っておいて欲しかったのになぁ…」
母親は少ししょんぼりとしながら、閉じた玄関の戸を見つめていた。
「あの血液型占い毎朝やってるけど、刀型結構最下位が多い気がすんだよな…」
虎汰は大きな番傘をさし、足元にあった小石を蹴った。
「にしても全然やまねぇな…」
ふと雨雲に視線を向け、黒々しい空を見上げる。
「ん…?」
うっすらと鼻に着いた臭いに気が付いた。
「この臭い…普通の雨じゃねぇ…」
ザァザァと振り続ける雨に手を伸ばし、少しばかり濡らした指先を顔に近づけた。
「この色…雨なのにうっすらと赤みを帯びてる…
もしかしてこの雨って朱式――」
「だーいせーいかーーーい!!」
虎汰は全部を言いきる前に、後ろから大きな声と共に体当たりされた。
予期せぬ体当たりに思いっきり地面に転がり、マントがぐしょぐしょに濡れた。
「さいっっっあくだ…」
大きくため息をつきながら立ち上がる。
真っ黒なマントに着いた手で雨をはじき、飛んで行った番傘を拾い上げた。
「なんなんだお前。」
虎汰は露骨にイライラとしながら、体当たりして来た少女に話しかけた。
「私、雨宮!雨宮霖!」
雨の中で少女は笑っていた。
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