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兄、二人。




「白瑠、どうしたのですか? 浮かない顔をして」


 眠い。先ず、思ったのはそれ。

 重たい瞼を上げる。テレビとテーブルが目にはいった。どうやらソファで寝ていたらしい。

 テーブルの上には毅春風組から受け取った報酬の入ったアタッシュケースが置かれていた。


「昨日ねぇ、秀介に会ったんだよぉ」

「相変わらず神出鬼没ですねぇ」

「その時さぁしゅーくんが、つばちゃんの恋人だって言ったんだ」

「秀介君が? はっきりと?」


 何を話しているのだ二人で。

 恐らく笹野さんと白瑠さんはテーブルのところだろう。


「つばちゃんは否定したけど……秀介君はゾッコンって感じだったよ」

「ほーう?」


 笹野さんの笑う声が楽しげだ。ああ、もう。秀介のバカヤロー。

 あたしは起き上がった。すぐに二人はあたしに気付く。


「にゃほーつばちゃんおはよーう」

「おはようございます、椿さん」

「……おはようございます、お二人とも」


 うーんと背伸びして息を吐く。


「あたしいつ寝ちゃいました?」

「帰ってくるなり、ソファに倒れて報告してから眠りましたよ。“あのクソじじぃが刀なんか振ってくるから”とか“大の大人が銃で応戦とかばっかじゃねぇの”とか“クラッチャーはなんでノープランなんだよアホたれ”と言ってました」

「…………」

「つーちゃんって眠くなると口が悪くなるのかなぁ?」


 さらりとコーヒーを飲みながら笹野さんは言った。

 ニコニコ。白瑠さんが笑顔。

 笑顔なのになんか怖い。


「えっと……本当に覚えがないッス」

「白瑠、どうやら酒を飲ませて潰せば記憶が飛ぶタイプみたいですよ」

「わーい! やりたい放題だねぇ!」

「ごめんなさいっ!!」


 笑顔で何言ってんだこいつら!!


「さて、出掛けますよ」


 操の危機を感じて背凭れに隠れていれば笹野さんが顔を出して言った。


「え? どこに?」

「昨日話しましたが、忘れちゃったのですか?」

「覚えてません……」

「スパイを殺した分の金を使うっていったじゃあん」


 覚えてないことをいいことにからかっているかもしれないと警戒していれば、白瑠さんも顔を出して笑って言った。

 アタッシュケースを見てみる。そう言えば、余分に依頼され殺すことになったんだっけ。それで予定よりお金が。


「何して?」


「だから、行きますよ」と笹野さんに急かされてテーブルにつかされた。

 朝食を食えとのこと。

 食べ始めれば、髪をいじられた。櫛で髪をとかされている。誰かと思えば、白瑠さんだった。


「何してるんです? 白瑠さん」

「髪整えてんの」

「何故……?」

「椿さん、服はこれに着替えてくださいね」


 え……。なんかすごい着々と準備されちゃってるんですけど。

 あれ? もしかしなくても、待たせちゃってます? あたし待ちだったのか?

 こうしちゃいられん!

 あたしは早く噛んで飲み込んだ。急ぎすぎて喉を詰まらせた。そうしたら、素早く笹野さんが飲み物をくれた。

「ありがとうございます」と飲んでからお礼を言う。食べ終えた皿を重ね持って台所に向かったら、白瑠さんが「俺がやるから、歯磨き」と皿を取り上げて片付けてくれた。

 あたしは言われた通り洗面所に行こうとしたら「ついでに着替えてください」と笹野さんに服を押し付けられる。

 なんだこの慌ただしさは。

 なんか。なんかあたし。

 手のかかる娘か妹みたいだぞ、あたし。

 バタバタと服を着替えてから顔を洗い歯磨き。片手に歯ブラシ、もう片方でワンピースの紐を結ぼうとしたが無理難題だ。

 何故背中に紐タイプのワンピースなんだ。

 顔を下げて見てみれば、これはこれは清潔そうなワンピだった。淡い桜の花弁がスカートに薄く散らばっている白いワンピース。

 あれ。これ着てどこいくんだっけ。

 疑問になって、不意にフリーズした。

 そもそも“あたし”のままで出掛けるなんてあり得ない。警察やニュースであたしの顔を覚えている人に見付かったら……。

 鏡を見たままボケーとしていたら白瑠さんが入ってきた。


「着替え終わった?」


 確認しながら言って、白瑠さんは後ろの紐を結んでくれた。

 おっと。早く準備をしなくては。

 思考をやめて歯磨きに専念していると、白瑠さんがこの前買ったヘアスプレーに手を伸ばした。

 シューと噎せる匂いが蔓延する。

 ごほっ。思わず咳き込む。

 白瑠さんは構わず、あたしの髪を整えた。スプレーの効果で髪はストレートに仕上がった。

 歯磨きも終えたら、スカートを捲られ思わず白瑠さんの頭を叩く。

 バシッといい音が響いた。

 白瑠さんの頭の中は……。あえて言わないでおこう。


「痛いなぁ……」

「どこ触ってるんですか!?」

「ベルトをつけるんだよぉ」


 白瑠さんの手にはまた違うナイフと黒のホルダーが合った。

 自分でつけます! と取り上げると「無理だと思うよ」と言われたが無視。

 スカートを捲りギリギリの太ももにつけようとしたが、どうも上手くベルトをつけれない。なんでつけれないんだ。

 むぅ、と口を尖らせながら足を上げてみながらつけようと試みた。

 しゃがんでいた白瑠さんがスカートの中身を見ようと首を傾けたため、また叩く。

やっとつけれた。


「こんなのつけさせるなら、もっと隠しやすい服にすればいいのに」

「万が一ですよ」


 あたしに返答をしたのは、笹野さんだった。

 あたしの手をとり、アクセサリーをつける。あたしの部屋から取ってきたのか……。

 センスは悪くない。ワンピースに合う。

 笹野さん、女性に間違いなくモテるな。


「万が一が起きる場所に向かうの……?」

「いいえ。何事も予想外はおきますからね」


 危険な場所に向かうわけではないようだ。じゃあ何処に行く気なんだろう。

 悶々と考えてみる。

 清潔ワンピースを着て行く場所。

 白瑠さんはいつもの襟つき白いシャツ。手首にはアクセサリーがじゃらじゃら。黒いズボン。いつもと似た格好。

 笹野さんは黒いジャケットに白いシャツにジーンズ。

 どこにいくんだ……。

 訊いても、この際知らなくてもいいじゃん的なことを返される。

 納得いかない顔をしても白瑠さんに背中を押されて玄関へ。


「わぁー、幸樹ー、サイズが合わないよぉ」

「ああ、私の妹は足が小さいですからねぇ」

「すみませんねぇ足がでかくて」


 あたしはLだもん。

 笹野さんの妹さんの靴を出されたが一目で履けないとわかった。

 白く可愛いリボンのついた可愛いサンダルだが無理なものは無理だ。


「仕方ないですね、買いに行きましょうか」

「へ? うわっ!?」

「だねぇ」


 玄関で座っていた身体が浮いた。

 白瑠さんに抱え上げられた。

 そのまま笹野さんのあとに続いて白瑠さんに運ばれていく。

 何故。降ろせ。

 そのまま笹野さんのシルバーのクラウンに乗り込んだ。

「あのぉ…素足なんですが…」と言ったが無視された。

 クラウンが走り出す。

 もうされるがままだ。沈黙していれば、車の密室の中で香る匂いに気付く。

 香水だ。

 白瑠さんと笹野さんではない。

 何処から香るのかと鼻を利かせる。

 前に乗り出して、後部座席から助手席に移る。

 笹野さんと白瑠さんが小首を傾げた。そんなの気にもせず、シートベルトをしながら匂いを吸い込む。

 白瑠さんは香水をつけないが笹野さんの香水じゃない。きつめの香りがする。時間が経って薄くなったが、それでもキツイ香水だ。あたしが好かないキツイ香水。

 キツイ香水をつける女性って、どんな基準で選んでいるのだろう。嗅覚が可笑しいのか? 理解しがたい。


「あの、笹野さん」

「はい?」

「彼女いますか」

「いませんよ。今は募集中ですが……」


 彼女はいない。

 じゃあこの香水の匂いはなんだ。誰の物なんだ。

 顎に指を添えて考えていれば、笹野さんがチラリと視線を向けて「それが?」と訊いてきた。


「いや……別に……。不意に思っただけです……」


 あたしは目を窓の外に向ける。もう住宅街を抜けていた。

 ふと、椅子を掴んでいた手に何かが触れる。覗いてみると何か光るものがぶら下がっていた。指で摘まんでみれば、何かがわかった。

 ピアスだ。

 女物。男はつけないだろうデザインのピアス。

 唸るのは堪え、眉間の下に親指をぐりぐり押し付ける。

 恋人はいない。しかし、香水の匂いと女物のピアス。

 考えられることは一つ。

 全く。男と言う生物は。

 笹野さんは違うと思っていたのに。

 なんか気持ち悪くなった。あたしはシートベルトを外して、後部座席に戻る。

 白瑠さんと距離を取って、座り、シートベルトをした。


「落ち着きのない娘ですね」


 笹野さんがミラー越しに笑う。あたしは唇を尖らせて腕を組んだ。

 真剣に出ていくことを考えるべきかもしれない。


「あれれ? 拗ねちゃったよ、幸樹」

「どうしたんです? 椿さん」

「何でもないです」


 白瑠さんが身を乗り出し、笹野さんが首を傾げるが、あたしはきっぱりと言う。


「私怒らせるようなこと、言いましたか?」


 笹野さんが不安げに訊いた。ちょっとチクリと罪悪感。あたしは弱々しく何でもないと言った。


「椿さん……」

「言わないとわからないよぉ」


 何でもないと言っているのに。全くも男と言う奴は。


「何でもないってば!」

「怒ってるじゃないですか」

「怒ってません!」

「怒ってるよーぉそれ」

「椿さん」


 うーっ!! 苛々する!

 貧乏揺すりをしてしまいそうだが、正座をしている為それはできない。

 ナイフに手を伸ばすのを堪えて、助手席に向けてピアスを投げた。

 ボトリと落ちたピアスを見て、悟ったのか白瑠さんは笑い声を上げる。


「にゃはははっ! なに? なに? つーちゃん、幸樹の彼女みたぁいに浮気の証拠見付けたり!? うひゃっ! “これ誰のピアスなの?”だってぇー幸樹ぃ」


 助手席に貼り付いたまま愉快そうに笑って白瑠さんは、笹野さんに代わりに質問した。

 笹野さんは「ああ……」と心当たりがあるような声を洩らす。


「助手席に香水の匂いがします。匂いとピアスの持ち主が一緒とは限りませんが……彼女、いないんでしょ?」


 あたしは鏡越しに笹野さんを睨み付ける。笹野さんは苦笑した。


「わぁ! つばちゃん探偵みたい!」


 ほんとだぁ、と白瑠さんは匂いを嗅いだ。あたしは無視する。

 笹野さんはピアスを拾い、こう言った。


「夏木さんのですね。仕方ありません、私だって男ですよ」


 確か夏木と言う看護婦がいた気がする。看護婦に手を出したのか? 笹野先生!

 しかもさらりと自白をしやがった。


「正直に答えちゃうんですか? 言い訳とか嘘とか言わないんですか!」


 思わず身を乗り出して運転席に顔を出す。


「おや。言い訳や嘘を言って欲しいのですか?」


 笹野さんは意地悪に微笑んであたしを少しだけ見上げた。

 意地悪なのに、綺麗。ずるい。

 あたしは席に引っ込み、大きな息を吐き、腕を強く組んだ。


「あーりゃりゃっ」


 白瑠さんも椅子に座った。

 その白瑠さんにシートベルトをしてくださいときつい口調で注意する。


「なんですか、椿さん。私が貴女しかいないと言って宥めなきゃ機嫌を直してくれないのですか?」


 笹野さんは運転しながら言った。あたしは沈黙を返す。


「それとも貴女しか抱きません、ですか?」


 顔がひきつる。


「もうやめてください!」

「ふふ、軽いジョークなのに」

「ジョークなのにねぇー?」


 笹野さんと、白瑠さんまであたしを笑った。くそぉう、毎日セクハラを受けるのかあたし!

 女の子なんだぞ! あたし!

 あんまり女だと主張しないから違和感あるけど、警察に駆け込むぞ! 殺人犯だとバレる前に捕まえてもらうからな! 強姦未遂で!



 クラウンは駐車場に停め、一つの店に入った。

 あたしが入ったことのないような綺麗な店。ピカピカの床に、輝く靴が並んでいた。高そう。

 それに見とれてる場合ではなかった。

 笹野さんに抱えられて店に入ったのだ。クラウンを降りてからずっとそう。

 恥ずかしすぎて顔が上げられない。


「彼女に似合う靴を」


 白の腰掛けにあたしを降ろして笹野さんは店員さんに一言言った。

 なんだしょら。

 綺麗な女の店員さんは頷いて靴を探しに向かった。

 白瑠さんはあたしの隣に腰掛けて、顔を上げたあたしに眼鏡をかける。伊達眼鏡だ。

「似合う似合う」と白瑠さんは髪を指で撫でた。

 すると店員さんが一足の靴を持ってきてくれた。それを履かせてくれる。

 バニラ色のパンプスだ。

 おお、可愛い。


「だめ。違うのにして」


 店員がどうですかと訊く前に、白瑠さんが一蹴した。

 すぐに店員さんは他の靴を探しに行く。今度は違う店員さんと一緒に幾つか箱を持って来た。

 また履かせてもらったが、その度に笹野さんや白瑠さんが首を振る。

 どれならいいんだ。どれもこのワンピに似合うのに。

 店員さんは流石に苦笑。顔がひきつっている。任せられないと思ったのか白瑠さん達は店の中を品定めし始めた。

 おいおい。靴ひとつくらい妥協しろ。

 あたしは小さく店員さんに謝った。


「素敵なお兄様ですね」

「えっ?」


 靴を箱に詰めていた店員さんがいきなり言ったから、思わず間抜けな声を上げた。


「あ……恋人でしたか?」


 あたしの反応に慌てたように店員さんが訊く。

 いや、どっちでもない。

 まぁ、どちらかだと思うのが妥当なのだろう。


「私の妹ですよ」


 そう言ったのは、笹野さんだった。まさかと驚く。


「俺の彼女だよ」


 一足手に持った白瑠さんが笑顔で言った。その白瑠さんを笹野さんが小突く。


「私達の可愛い妹です」


 笹野さんは訂正させた。それから白瑠さんの持ってきた一足の靴を却下する。

「なんだよぉ」と店員さんがいなくなってから白瑠さんが口を尖らせた。


「私が椿さんの兄なら、白瑠が恋人なんて認めませんよ」


 たしかに。

 白瑠さんの素性を知ってて妹と付き合うことを認める兄は最低だろう。

 だがあたしが、この二人の妹なんて無理があるだろう。二人は美形と言う共通があるが、あたしは美形ではない。

 大体、笹野さんが妹と嘘をつくなんて意外だった。妹を亡くした事実があるし、あたしなんかがその。妹の代わりとは言わないが。笹野さんの妹だなんて。

 あたしは笹野さんを見上げてみた。顎に指を当てて品定めをしている。

 あたしの視線に気付いて笹野さんが向いた。あたしはさっと顔を下げる。


「……。まだ怒っているのですか?」


 しゃがんで笹野さんはあたしを見上げた。うっ。あたしは顔を逸らす。

 店員さんが持ってきた靴を今度は笹野さんがあたしに履かせた。

 サンダルで紐を絡み付けるタイプだ。


「ん?」


 笹野さんはにっこり微笑んで、訊いてくる。

 あたしが妹でいいの?

 なんて、訊けるわけない。


「……これがいいです」


 あたしはそう呟き声で言った。

 笹野さんはまた微笑んで頷く。それから店員さんに会計を済ませた。

 もう片方は白瑠さんが履かせてくれて、立ち上がる。

「んじゃあ行こう!」と白瑠さんに手を引かれて店を出た。

 店を出た白瑠さんは通りを見回してから駐車場と逆方向に歩き出した。


「え。白瑠さん? 駐車場はあっちじゃあ……」

「お店に行くんだよ。ここ東京だしいい服買えるよぉ」

「は!? 服!? 何それ!?」


 まさかと大声を出す。


「洋服を買うのですよ。家では咲の服を着てもいいですが、仕事やその他に着てほしくないですし、白瑠の服ばかりでは不便でしょう?」


 笹野さんが、一歩後ろの位置で答えてくれる。ここで初めて笹野さんの妹の名を知った。……咲。


「服ならこの前買いました!」


 白瑠さんの手を払おうとしたが、無理だった。畜生バカ力め。


「たった五着の安物じゃん! パーカーとかだしぃーつばちゃん女の子なんだからセクシーかキュートなのを着ようよ!」

「指名手配同然なのに……着るかっ!」


 敬語を吹き飛ばしてしまったのは、手を払うので精一杯だからだ。踏み留まってみるが買ったばかりのサンダルが壊れそうなので断念。腕を振っても通じない。

 切り落とすしかない!

 思考がとんでもない方へいき、スカートの上からナイフに触れれば、笑顔で店を探していた白瑠さんが振り返った為、バッと手をあげた。


「見ーっけた! こっちこっち!」


 探していた店を見付けたらしい。そのまま歩いていく。あたしを引いたまま。


「ちょっと白瑠さん! どんだけ使う気ですか!? 衝動買いばかりしないでください!」

「え? たった50万だよ」

「たったの……………………。50万って……アレですか? 今持っている金ですか全財産ですか」

「今日使おうと思っている金」


 さらりと顔色変えず、白瑠さんは言った。あたしはぐりんっと笹野さんを振り返る。


「笹野さん笹野さん笹野さんっ!!!! この人を止めてください!!」

「いいじゃないですかそのくらい」

「そのくらい!? そのくらいを無駄に使うんですよ!? 募金しなさい!!」


 なんだこの人達! 金銭感覚まで狂ってやがる!!


「この前使った金とこのサンダルも、昨日の報酬から差し引いてください!」

「んー? いいよそんなのぉ」

「私達の仲で金の貸し借りはありませんよ。金なんて仕事をすれば入るのですから」


 軽く考えている二人。

 駄目だ。あたしついていけない。


「そりゃあ……! 一回が相当の報酬みたいですが……あたしは嫌なんです! 買うなら自分の報酬で買いますから!!」


 アタッシュケースの中身を見たが、万札がぎっしりだった。分け前は聞いていないが、殺ったのは白瑠さんだし少ないはずだが、買いたいものは自分で選んで買う。

 はっきり言えば白瑠さんが止まった。やっと解放されると思ったが、白瑠さんの表情が変わる。


「……………………」

「………………うっ」


 じっと見下ろされる。

 見下ろされるのは、身長差のせい。

 じっと。と言うより、うるうるとした涙目で泣きそうなしょぼくれた表情。捨てられた仔犬に見つめられたような感じだ。


「……俺……妹……いないから……こうゆうの、初めてなのに……」


 涙声で白瑠さんが言う。


「だめなのぉ……?」


 すがるような声。弱々しいことを言う者を、こんな可愛げな弱々しい小動物に、首を横に振れない。

 あたし、可愛いのに弱いんです。


「……わかりました……どうぞ……」

「ほんと? 今日だけお兄ちゃんって呼んでくれる?」

「…………。は、く……白瑠、お兄ちゃん……」


 精一杯。慣れない言葉で呼んでみた。

 顔が微かにひきつるが、白瑠さんの反応からして上手く笑えたかもしれない。


「んひゃー! じゃあいっぱい買おうねぇー!」


 白瑠さんはコロッと笑って、一人でスタスタ歩いていった。

 のせられてしまった。

 ガクリとあたしは額にを押さえる。逃亡しようか。


「私のことは幸樹にぃでいいですよ?」

「…………。妹さんにも、そう呼ばれていたんですか?」

「まさか。お兄さんと呼ばれてましたよ」


 笹野さんが横に立って言うから、そう訊いてみたらサラリと否定された。


「あたし長女だったので、兄ができたみたいで嬉しいです」


 肩を竦めてあたしは小さく言う。

 笹野さんの妹云々は流石に図々しい為、それは言わず(というか言葉が見付からない)本音を言った。

 本音だ。兄はずっと欲しいと思っていた。

 優しい美形な兄。嬉しい。

 だけどそれは包容力のある人物が欲しかっただけにすぎない。

 長女だから。

 母にも優しく包まれた記憶のないあたし。温もりを欲しがっていたバカだから。

 だから、そう口にするのはなんだか重く感じた。

 嬉しいのは事実。

 でも、自分がずるい。


「私も、また、妹ができて嬉しいですよ」


 笹野さんは穏やかな微笑を向けて、あたしの頭を撫でた。大きくて温かい掌。

 先に歩む笹野さんに咄嗟に言おうとした。言おうとして口を閉じる。


 咲さんの代わりにはなれない。


 そんなことを口にしようとした。

 違う。駄目だそんなの。

 あたしは咲さんの代わりじゃない。

 あたしは咲さんの居場所を奪ってはならない。

 なんであたしは咲さんの居場所に位置にいるんだ?いてはならない。

 咲さんの仇を討った優しい兄の笹野さんの、妹だなんて。

 そんなの駄目だ。

 死人に対する罪悪感? それはない。殺した相手にも抱かないのだから。

 それとも荷が重いから? それかもしれない。なんだか、嫌なんだ。


「椿さん?」


 いつまでも動かないあたしを振り返る笹野さん。視界が歪むのを感じて、あたしは背中を向ける。

 バカ。泣くんじゃない。


「椿さん?」


 違う。あたしは。なんだ?この嫌な気分は。

 気持ち悪い。

 クラリと意識が揺らいでよろめく。


「椿さん、椿さん!」


 襲いかかる吐き気に耐えきれず、足から力が抜けて、意識が途切れた。



 欠けていた。

 生まれてからずっと欠けていた。

 家庭も欠けていたし、片親の愛情も受けたかもしれないが愛なんて解らない。

 弟や妹とは片親が違うだけで拗ねていた。喧嘩する度「本当のお姉ちゃんじゃない」と吐き捨てられ傷付いても文句は言えず泣くこともしなかった。

 唯一の居場所で明るく振る舞える学校でも支障がでて、友人に八つ当たり。陰口ばかりの女の子達。信用できなくて、人間不信。

 一歩下がって小さな輪の中で満足していた。たまに温もりが欲しくなり、淋しくて、泣いたりしていたが。

それでも。それでも。

 一歩下がっていた。




 なのに、どうして。

 いつの間にか、温もりがあるんだ。


「目が覚めましたか?椿さん」


 殺人を犯したのに。


「つーばちゃん大丈夫?」


 大勢の人間の血を浴びていたのに。


「ストレスで倒れちゃっただけですよ。気分は?椿さん」


 どうしてあたしは温もりを手に入れているのだろう。

 どうしてあたしを心配して見つめてくれる人がいるのだろう。

 酷く、それは理解できないことだった。


「…………」


 ベンチで笹野さんの膝の上にあたしは寝てて、白瑠さんが顔を覗いて頭を撫でてくれる。

 いつも凍えていたのに、温かい。

 温かい場所にいる。

 温かい人に優しくされている。

 喉が痛い。視界が滲む。

 眼鏡が外されているからあたしは掌で目を隠した。


 あたしは知ってる。

 温かい場所なんて、長続きしなくて、すぐに消えてなくなる。それでまた凍える。

 それを知っているから、温かい場所にいたくない。

 だってすぐに凍える。

 失望が苦しい。

 だから。だから。だから。

 嫌なんだよ。


 そうかだからか。なんて今更気付く。

 秀介に言ったのもそう。

 やっぱり自分を守る為だ。

 自虐的で自傷的なのに、自分を守るのに精一杯。

 痛いから、苦しむから、離れてほしい。

 一歩下がっているのに、近付いてくる。

 ずかずかと近付いてくる。

 笹野さんや白瑠さんも。特に秀介が、近寄るんだ。

 それが、怖い。痛い。


「大丈夫……」


 温かい場所から冷たい場所に突き落とされるなら、殺してくれ。


「お兄ちゃん」


 自虐的なんだ。

 あたしは起き上がって笑いかけた。


「じゃあ買い物行こうか!」


 白瑠さんがはにかんで笑い、あたしの左手を掴んで立たせた。


「無理しないでくださいね。さぁ、行きましょう」


 笹野さんがあたしの右手を握って歩き出す。二人に手を引かれていく。

 ズキズキ、と痛い。

 胸の奥。ずっと奥。

 失くなる恐怖に怯えてる。

 あたしはそれを振り払い、ギュウッと二人の腕に抱き付いた。


「妹としてわがままきいてもらいますよっ!」

「喜んでっ!」

「お手柔らかに」


 そう言ったのだが。

 笹野さんにその言葉を返したい。

 若い女性やカップルが行き来するビルの中で、店を幾つもまわり、服を何着か購入。

 もう数えきれない程だ。

 白瑠さんにせがまれ、幾つも試着。あたしが気に入った服は勿論、白瑠さんや笹野さんが気に入った服も必然的に購入。あたしの服だ。


「うひゃひゃっつーちゃん可愛い可愛いっ!」

「椿さん、次はこれ着てください」


 着せ替え人形か。

 そうは思ってないと思うが。(あたしがそう思いたい)

 白瑠さんの反応はシスコンだぞ。

 流石に何度も着替えるのは疲れた。

 時には際どいミニスカや露出の多いシャツだとかがあった為、ヒヤヒヤさせられた。

 もしかしたら今現在、あたしは妹プレイと言う名のセクハラを受けているのかもしれない。

 疲れたのを口実にベンチで休憩。

 レシートを見させて欲しいと言ったが、目の前でゴミ箱に捨てられた。畜生。いいもん。値札があるもん。

 ふくれながらも渡されたジュースを飲む。

 そう言えば今、いくらくらい使ったのだろうか。

 チラリと白瑠さんが持つ紙袋を見た。推測は10万なのだが……。


「あの、白瑠さん。今日、50万使うとか言ってましたが、まさか全部あたしに注ぎ込む気じゃないですよね?」

「え? そうだよ」


 あたかも当たり前じゃん、みたいな口振りで白瑠さんは言った。


「50万も服いりませんよ!!」

「何も服だけとは言ってないよぉ」


 あたしの反発に口を尖らせ「ほら、あれとか」と白瑠さんは笑顔で立ち上がり視線の先にあるアクセサリー店に入っていった。

「アクセサリーなら買ったじゃないですか!たくさん!」とあたしは追い掛けて白瑠さんの腕を掴む。


「俺の好みのものばっかじゃん。もっと女の子らしいの」

「ピンクの花なんて趣味じゃありませんよ」

「ピンクの花が女の子らしいとは限りません。赤いリボンとか」


 いつの間にか笹野さんが背後に立ち、あたしにリボンをつけやがった。カチューシャ風に。

 目の前に鏡があった為、もろ赤いリボンを頭に垂らした自分を目撃。気持ち悪くなった。

 素早くそれを取ったら、今度は黒い物体が頭につけられる。


「うにゃー! 可愛い可愛いっ!」


 つけた犯人が大騒ぎ。

 あたしはあまりのことに硬直。

 頭につけられたのは、猫耳のカチューシャだ。こんなものを置くなんて! 何考えてんだこの店!

 直ぐに外し白瑠さんが届かない遠くにやる。黒髪に馴染むから黒い耳が似合う、とかよく安ちゃんに言われたっけ。女友達と騒ぐのは別にいいのだが……。


「やめてくださいっ!」

「えー可愛いのにぃー。あっ、藍くんに頼まない? 藍ならいっぱい持ってるでしょー」

「やめてくださいよ、白瑠。彼女を彼の趣味に巻き込んではいけません」

「えーぇ、絶対可愛いのにぃ。椿ちゃんはナースより制服だと思うよ、うん、猫耳付きがいいねっ」


 笑顔でアブノーマルなことを言う白瑠さんに悪寒を感じて身を引くあたし。

 アブノーマルシスコン。この場合シスコンは関係ないかも。


「やめてください、貴方まで。彼の話をしたら出てきますよ、もうやめましょう。…椿さんも怯えてますし」


 笹野さんは本当に嫌そうに肩を竦めて、あたしを視界に捉える。

「えーなんでー?」と白瑠さんは首を傾げる。おちょくってんのか。

 アブノーマル発言は終わり、アクセサリーを買ってもらい、そのビルをあとにした。

 もう空は夕陽に染められている。かなりの時間、振り回されていたようだ。

 今日のお出掛けはこれで終わりかと思ったが、どうやらまだあるらしい。

 あたしはくたくただ。

 初仕事のあとだと言うのに、鬼か。鬼兄か。

 ぐったりと後部座席に項垂れていれば、目的地に着いたらしい。

 降りて、見てみた。停止。それから顔をひきつらせる。


「え……と?」

「予約した笹野のです」


 あたしの声が、まるで聴こえていない笹野さんは店に入っていった。白瑠さんがあたしの背中を押す。

 来たのは、予約しなくては入れなさそうな高級イタリアンレストランだった。どうやら夕食はここで食べるらしい。

 何も言えないまま、促され店内へ。無論、高級レストランは初めてだ。

 テーブルにつき、一息つく。


「聞いてませんよ……こんな高い店に来るなんて」

「昨夜、言ったはずなんですけどねぇ」


 忘れたって言ったじゃん!


「そんな顔をしないでください。椿さんの初仕事を無事終えた祝いと思って、堪能してください」


 向かいに座る笹野さんは気品のある微笑でそう言った。


「そんなのマックで十分ですよ……。大体、仕留めたのは白瑠さんだし」

「お兄ちゃん、でしょ。そーなんだよなぁ、でもあの場合仕方なかったじゃん」


 右隣にいる白瑠さんはそう言った。別に責めている訳じゃない。ただ、結果的にそうなったのだからあたしの初仕事祝いをここでやる必要はない、と言っているのだ。


「素直に喜んでくれない妹ですねぇ」

「……わぁい、嬉しい」


 来てしまったものは仕方ないと言うこと。ついてきたあたしもあたし。

 棒読みだが、言ってみる。


「お酒は飲みますか? 椿さん」

「え? 嫌だな、未成年ですよあたし」


 読めないメニューを眺めていれば、笹野さんがそんなことを言うからおどけてみせる。

 嘘だと見抜かれたらしい。笹野さんは微笑んで待っている。


「笹野さんにお任せします……甘めで」

「ではカクテルにしましょうか」

「つばちゃん飲めるんだぁ? いっけない子ー」

「飲ませるお兄ちゃんも同罪です。去年からたまに飲んでます……ちょこちょこと友人と。未成年に喫煙者がいるようにお酒を飲む人もいるんです」


 とか笑いかけた白瑠さんに言い訳してみる。


「喫煙者よりは周りに迷惑かけてないでしょう?」

「酔い潰れなければ、の話ですね。喫煙はしたことないと?」

「…………全ては好奇心に負けて」


 笹野さんに微笑みられて、俯きながら白状。


「え? 吸ったのぉ? うわぁつーちゃんが煙草をパカパカなんて見たくなぁい」


 白瑠さんが驚き一杯で苦々しい顔であたしを見た。


「もう吸ってません! 一度や二度ですし! 今は嫌いだから!」


 言うんじゃなかった。若気のいたりってやつさ!!

「お酒だって毎日じゃないし」とぐちぐち言うと白瑠さんに笑われ、頭を撫でられる。


「うひゃひゃ、ムキにならなくていーよぉ。それくらいが健全なんだよ」


 むぅ、としていたが白瑠さんがあまりにもゴシゴシと撫でるから振り払う。

 こうゆう大人がいるから未成年の飲酒や喫煙が絶えないんですよ。

 笹野さんに注文を任せて、あたしは店内を見回す。落ち着いた綺麗な白い壁に装飾に高そうな絵が飾られている。店内は小さなシャンデリアが照らしていた。

 他の客はドレスやスーツ姿。かろうじであたしは馴染んでいた。良かった。


「椿さん、明日から夜は早めに帰ってきますが…注意を一つ覚えてください」


 料理を待つ間に笹野さんが口を開く。


「なんです?」

「訪問者が来ても、扉は開かない方がいいですよ」


「訪問者、ですか?」と目を丸めて首を傾げる。


「無視をしてください、例え何度も呼び鈴を鳴らされても。しつこさに耐えきれず扉を開けたら、セールスマンが立っていても扉を直ぐに閉めてください。どんなに人が良さそうでも無視して鍵を閉めチェーンをかけてくださいね」


 なんだろう。その具体的な忠告は。

「よくわかりませんが……注意します」と曖昧に頷くことにした。

 とにかく訪問者は無視すればいいのだろう。簡単だ。

 そこで飲み物が運ばれた。あとから料理も置かれる。ガーリックトーストとパスタ。


「それじゃあ、愛しき妹の椿ちゃんの初仕事無事完了を祝して」


 なんか嫌だな白瑠さんに言われると。とか心の中で呟きつつもカクテルの入ったグラスを持つ。

 あたしのカクテルはなんだか赤い色と白色。何かは知らないが可愛い。白瑠さんと笹野さんは白ワインらしい。


「かんぱぁーい」

「乾杯」

「……乾杯」


 三人のグラスが、重なり弾く音を奏でた。それは不快でもあり、素敵な鈴の音みたいないい音だ。

 二人を真似て、一口飲む。

 甘い味から、喉に苦味が通っていく。

 それをテーブルに置いて、控えめに食べ始める。

 なんだか緊張してしまう。

 あたしと違い、白瑠さんはいつも通りバクリと平らげていった。


「それで椿さん。初仕事の感想は?」


 笹野さんが話題を振る。


「作戦がなくて無茶苦茶だなぁと思いました」

「俺の悪口?」


 だらぁんとフォークを加えたままの白瑠さんが眉毛を垂らす。「いえ、感想です」と言ってみる。


「そう言えば“クラッチャーはなんでノープランなんだ”とか愚痴ってましたね」


 朝の会話ででた言葉だ。

 確か“アホたれ”がついていた気がする。そして白瑠さんが怖い笑顔だった気がする。

 恐る恐る白瑠さんに視線を戻す。白瑠さんはワインを飲み干していた。

「………今朝のは冗談ですよね」と笹野さんに言う。

「朝?」一瞬なんのことかわからない様子だったが笹野さんは思い出したのか笑う。


「酔い潰すって話ですか? 冗談ですよ。椿さんが潰れない限り」


 後半嫌なことを呟かれた。

 また白瑠さんを見てみる。

 ……笑顔だった。

 ニヤニヤとあたしを見ている。嗚呼、悪寒が。

 大丈夫。酔い潰れない。眠くない限り。それに今、今日はいい切り札がある。

 兄妹だもん。それをフル活用してやる。

 ……アブノーマルに走られたら、終わりなのだが。


「あれ、笹野先生ではないですか」


 不意に笹野さんが男の一人に話し掛けられた。先生、と呼んだなら病院関係の人間。

 あたしは顔を伏せた。伏せたより、伏せられた。

 頭には白瑠さんの手。

 白瑠さんに顔を伏せさせられた。

 そのまま黙ったまま白瑠さんに手を引かれて、その場を離れる。


「こんばんは、田中先生に松山先生」

「こんばんは。おや、お連れのお嬢さんは?」

「私の妹です」


 笹野さんはそう知り合いに答えた。また、妹と言った。

 しかも、知り合いに。


「ふぅ。危なかったねぇ?」

「…………」


 トイレの前で立ち尽くす。あたしの思考は笹野さんの方に向いていた。

 どうして調べればバレてしまうような嘘を言うのだろうか。知り合いの兄妹ならばバレないのに。何故なんだ。


「椿ちゃん? また気分悪くなった?」


 視界が遮られたあたしの顔の前で、白瑠さんが手を振って顔を覗いた。


「いえ……別に。考え事を。どうします? 戻るに戻れないですね」


 静かに我に返り、白瑠さんにこれからどうするかを訊いた。


「バレたら始末」

「……笹野さんの立場を考えましょうよ」

「冗談だよ。あの客は帰るとこだったからいなくなるよ」


 何気見ているではないか。白瑠さんは店内を確認してから「ほらっ帰った。戻ろう」とあたしを手招きした。

 あたしはその手を掴んで引き留める。


「白瑠さん」

「んにゃ?」

「初仕事。どうでした?」

「どうって?」

「上手くやれましたか? これから役に立てると思いましたか?」

「思ったよぉー?」


 本当だろうか。

 疑いの目を向ければ白瑠さんは笑顔のまま答えた。


「確実にターゲットのいる部屋を当てて、ボディーガードを押し退けてターゲットと二人きりになったのはいい感じだ。速やかに始末してその場を去れば上出来。そうだな、次は幸樹と仕事しようか? 大企業辺りにしよう、もっと大きいステージで作戦を立ててやってみようか」


 白瑠さんは真面目なのかいい加減なのかわからない解答で頷いた。

 半分半分か。

 始末出来なかったのが減点。

 後半は興味深い。笹野さんと、そして作戦付き。まさにミッションみたいなイメージが浮かぶ。

 だが、その前に言わなくてはならない。


「前に言ったように、あたしが使えないと思ったのなら」


 温かい場所から冷たい場所へ突き落とすのならば、いっそ。


「殺してくださいね」



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