政治家に未来を語った件
「君、面白いことを言うね」
そう言ったのは、某若手政治家――仮に“Y議員”としておこう。
俺は今、喫茶店の奥の席で、スーツ姿の男と向かい合っていた。
昭和の喫茶店、タバコの煙がモクモクしてる。コーヒーは苦い。BGMはジャズ。
そして俺は――未来の話をしていた。
「このまま派閥政治が進むと、政界は腐敗します。国民の信頼も失われます」
「ほう……それは、どこで学んだ?」
「Wikipediaです」
「……ウィキ、何?」
「いや、未来の図書館みたいなもんです」
「図書館か。君、なかなか博識だな」
「いや、ネットで読んだだけなんですけど」
「ネット?」
「……未来の新聞です」
「なるほど。未来の新聞か。面白い」
Y議員は、俺の話を真剣に聞いていた。
俺は未来知識を持つ転生者。昭和の政治がどうなるか、だいたい知ってる。
腐敗、派閥、金権政治――そして、国民の政治不信。
「君の話、興味深い。だが、証拠はあるのか?」
「証拠は……俺です」
「君が証拠?」
「はい。俺、未来から来ました」
「……なるほど。面白い仮説だ」
「仮説って言われた!」
Y議員は笑った。だが、その目は真剣だった。
「君の話、信じるかどうかは別として、参考にはなる。未来を見据えた政治――それは、我々が忘れがちな視点だ」
「ありがとうございます。俺、ただの転生者ですけど」
「転生者か。君、なかなか面白い肩書きを持ってるな」
「他にも“革命の目”とか“預言者”とか言われてます」
「宗教か?」
「違います!」
俺は、昭和の政治に少しだけ種を蒔いた。
未来知識を使って、腐敗の予兆を伝え、改革のヒントを与えた。
それが、どこまで影響するかはわからない。でも――
「君、また話を聞かせてくれ。未来のことを」
「はい。Wikipediaに載ってる範囲なら」
「ウィキペディア、か。覚えておこう」
こうして俺は、昭和の若手政治家に未来を語った。
歴史が、少しだけ動いた瞬間だった。
「……俺の昭和ライフ、政治にまで手を出し始めたな」




