同志と呼ばれて照れた日
「同志昭夫! 今日も一緒にビラ配りだ!」
「……あのさ、美咲さん。そろそろ“同志”って呼び方、やめない?」
「なにを言ってるんだ同志! 同志は同志だ!」
「いや、語彙力どうした!?」
朝の東大構内。俺は今日も赤ハチマキの美咲と並んで、ビラ配りに勤しんでいた。
未来知識を持つ転生者として、学生運動の中心人物になってしまった俺。
そして美咲は、俺を“同志”と呼び、毎日隣にいる。
「……なんか、最近距離近くない?」
「同志だからな!」
「いや、物理的な距離の話!」
美咲は俺の腕をぐいっと引っ張る。
「同志、こっちの通りも回るぞ!」
「え、まだ回るの!? 俺、昨日から足が棒なんだけど!?」
「革命に疲労は関係ない!」
「いや、関係あるよ! 人間だもん!」
美咲はとにかく一直線。情熱で突き進むタイプ。
でも最近、なんか俺を見る目がちょっと違う気がする。
「……美咲さん、俺のこと、どう思ってる?」
「同志だ!」
「いや、そうじゃなくて!」
「同志として、信頼している!」
「それはわかってるけど!」
「同志として、尊敬している!」
「それもわかってるけど!」
「同志として……好きだ!」
「えっ!?」
「……あ、いや、同志として、だぞ!? 同志として!」
「“として”の圧がすごい!」
美咲は顔を真っ赤にして、ビラを配るふりをしながら目をそらした。
俺は恋愛に鈍感なはずなのに、さすがにこれは気づく。
「……もしかして、美咲さん、俺に……?」
「同志! 次の演説の準備だ!」
「話そらした!」
そのとき、真由が現れた。カメラ片手にニヤニヤしてる。
「スクープ! “同志ラブ”急接近かも!」
「やめて! その見出し、週刊誌っぽいから!」
「でも、いい感じだよ? 美咲ちゃん、目がハートだったし!」
「ハートって、昭和にあるの!?」
「あるよ! 恋は時代を超えるんだから!」
「名言っぽいけど、軽い!」
美咲は真由の言葉にさらに赤くなり、俺の袖を引っ張った。
「同志……私は、同志を信じてる。ずっと、ずっとだ!」
「……ありがとう。俺も、美咲のこと、信頼してるよ」
「同志として?」
「……うん、同志として」
「“として”の圧、返された!」
こうして俺は、美咲との距離が少しだけ縮まった。
“同志”という言葉の裏に、少しずつ恋が混ざり始めている。
「……俺の昭和ライフ、ラブコメモードに突入か?」