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運動の中心人物になった件

「同志昭夫、演説の準備はできているか!」


「え、今日も俺!? 昨日もやったよね!? 一昨日も!」


「同志の言葉には力がある! 八百屋のおじさん、また泣いてたぞ!」


「それ、玉ねぎのせいだってば!」


俺は今、東大構内の中庭に立っている。

目の前には学生たちの人だかり。横には赤ハチマキの美咲。後ろには冷静沈着な玲子。

そして俺は――なぜか壇上にいる。


「……俺、いつからこんなポジションになったんだ?」


未来知識をちょっと漏らしただけなのに、気づけば“学生運動のカリスマ”扱い。

「預言者」「議長」「革命の目」――肩書きがどんどん増えていく。

次は何?「昭和の救世主」?


「同志昭夫、今日のテーマは“教育の未来”だ!」


「えーと……ゆとり教育はやめたほうがいいよ」


「な、なんだって!? それは何年先の話だ!?」


「たぶん40年後くらい……って、誰かメモ取ってる!?」


学生たちは俺の言葉を真剣に聞いている。

いや、俺の知識、ほぼWikipediaとネットニュースの記憶なんだけど!?

それを“革命の指針”として受け取る昭和の学生たち、純粋すぎる。


「同志昭夫、次は“経済格差”について語ってくれ!」


「えーと……これから高度経済成長が来るけど、地方は取り残されるから注意ね」


「すごい……この男、未来を見ている……!」


「だからWikipediaだってば!」


そのとき、真由が現れた。新聞記者志望の女子学生。カメラ片手にニヤニヤしてる。


「スクープ! “革命の預言者”、今日も未来を語る!」


「やめて! その見出し、週刊誌っぽいから!」


「でも、注目度は抜群だよ? 同志昭夫、今や学内のスターだもん!」


「スターって……俺、転生者だよ!? 昨日まで社畜だったんだよ!?」


「そのギャップがいいのかも!」


「ギャップ萌えで革命起こすな!」


真由は俺にぐいぐい近づいてくる。

美咲がそれを見て、ちょっとムッとしてる。

玲子は冷静に観察してるけど、目がちょっと鋭い。


「……なんか、恋愛フラグが立ち始めてないか?」


俺は恋愛に鈍感なはずなのに、さすがに気づき始めている。

でも、今はそれどころじゃない。壇上で演説中だ。


「同志昭夫、最後に一言!」


「えーと……未来は、変えられる。たぶん」


「おおおおおお!!」


拍手が起こる。歓声が上がる。

俺は、完全に“運動の中心人物”になってしまった。


「……俺の昭和ライフ、もう引き返せない気がする」

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