玲子との初対立
「この案、甘すぎるわ」
開口一番、玲子が言った。
東大構内の一室。俺が提案した“学生統一協議会”の初会合。議長席に座る俺の前で、玲子は腕を組み、冷静な目で俺を見ていた。
「甘いって……どこが?」
「暴力禁止? 議論重視? 理想論よ。現実の運動は、そんな綺麗事じゃ動かない」
「いや、俺、未来から来たんだけど。暴力で崩壊するの、知ってるから」
「未来人設定、まだ信じてないから」
「え、そこから!?」
玲子は官僚の娘。論理と現実主義の塊みたいな人だ。
俺の“未来知識”には興味を持ってるが、全面的には信用していない。ツンデレの“ツン”が全開。
「あなたの案、理想的すぎるの。現場の混乱を収めるには、もっと強い統制が必要よ」
「いや、それやると“内ゲバ”になるって。未来で実証済み」
「出典は?」
「Wikipedia!」
「信頼性に欠けるわね」
「令和ではみんな使ってるんだよ!」
「令和って何よ」
「……未来」
「やっぱり未来人じゃない!」
このやり取り、デジャヴ感あるな。
「玲子さん、俺は運動を続けるために、分裂を防ぎたいだけなんだ」
「私もよ。でも、方法論が違うの」
「じゃあ、どうするの?」
「まずは、思想の統一。異なる派閥は排除する」
「それ、革命じゃなくて粛清じゃん!」
「現実的な選択よ」
「いや、怖いから!」
玲子の冷静な提案に、周囲の学生たちはざわついた。
「思想統一って……」「それはちょっと……」
美咲が立ち上がる。
「同志昭夫の案に賛成だ! 我々は、暴力ではなく言葉で戦うべきだ!」
「美咲さん……!」
「同志の言葉には、未来がある!」
「それ、またWikipediaだけど!」
玲子は美咲を一瞥し、ため息をついた。
「情熱だけでは、運動は続かないわ」
「論理だけでも、人は動かない!」
「……なるほど。あなたたち、意外といいコンビね」
「え、褒めてる?」
「別に……」
出た、“別に”!
こうして俺は、玲子との初対立を経験した。
思想の違い、方法論の違い――でも、互いに運動を良くしたいという思いは同じだった。
「……俺の昭和ライフ、論戦まで始まったか」