統一組織案をぶち上げた日
「同志昭夫! 各派閥がまた揉めている!」
「え、昨日は“革命の目”って呼ばれてたのに、今日は“調整役”なの?」
東大構内の一角。学生運動の各グループが、またしても言い争っていた。
「直接行動派」「理論重視派」「文化革命派」――名前だけはカッコいいが、やってることはただの口喧嘩。
「このままじゃ、運動が分裂する!」
美咲が焦っていた。彼女は情熱で突き進むタイプだが、組織運営にはちょっと不向き。
俺は未来知識を持つ転生者。昭和の学生運動が、後にどうなるかを知っている。
「……このままだと、運動は内ゲバで崩壊するぞ」
「な、なんだって!?」
「いや、Wikipediaに書いてあっただけだけど」
「同志昭夫の言葉は、未来の警鐘だ!」
「だからWikipediaだってば!」
俺は考えた。どうすれば、この混乱を防げるか。
そして、思いついた。
「統一組織を作ろう」
「え?」
「各派閥をまとめる“連合体”を作って、意見を調整する。議長制で、定期的に方針を決める。暴力は禁止、議論重視。名前は……“学生統一協議会”とかどう?」
「すごい……それ、未来の政治みたいだ!」
「まあ、令和の自治会の仕組みをちょっとパクっただけだけど」
「同志昭夫、やはり預言者……!」
「いや、だから違うって!」
学生たちはざわついた。
「それなら、俺たちも参加できる!」「意見が通るなら、暴力はいらない!」
空気が変わった。混乱していた運動が、少しずつまとまり始める。
「同志昭夫、あなたが議長を!」
「え、俺が!?」
「当然だ! この案を出したのは同志だ!」
「いや、俺、ただの転生者なんだけど!?」
「転生者議長、誕生だ!」
「なんか、肩書きがどんどん増えてないか!?」
そのとき、玲子が現れた。腕を組み、冷静な目で俺を見ている。
「……あなた、ただの預言者じゃないわね」
「いや、預言者じゃないってば!」
「この統一案、現実的よ。だけど、なぜそんな発想が?」
「えーと……未来の自治会制度を参考にしました」
「未来の……なるほど。あなた、やっぱり面白いわ」
「それ、褒めてる?」
玲子は俺に一歩近づいた。警戒はしているが、興味も持っている。
この人、ツンデレの気配がする。いや、まだ“ツン”しか出てないけど。
「この案、私も協力するわ。父の知人に、教育関係者がいる。制度化の助言をもらえるかもしれない」
「え、マジで? それ、官僚ルートじゃん!」
「別に……あなたのためじゃない。運動のためよ」
「出た、“別に”!」
こうして俺は、学生運動の分裂を防ぐために「統一組織案」をぶち上げ、なぜか議長にされ、玲子の協力まで得ることになった。
「……俺の昭和ライフ、革命の中心になってきたな」