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預言者扱いされた件

「同志昭夫、今日の演説、期待しているぞ!」


「いや、俺、まだ“同志”って呼ばれることに慣れてないんだけど……」


東大構内でのビラ配りも3日目。俺はすっかり“学生運動の新星”扱いされていた。

未来知識を持ってるだけの転生者なのに、なぜかカリスマ枠。昭和、ノリが軽すぎる。


「同志、今日のテーマは“政治の腐敗”だ!」


「え、それ俺が言ったやつじゃん。昨日の雑談で」


「その言葉に皆が感銘を受けた! “未来を見通す男”と呼ばれている!」


「いや、それただのWikipedia情報なんだけど!?」


昨日、俺が「このままじゃ政界は派閥争いで腐るぞ」と言ったら、なぜか周囲がざわついた。

「この男、未来が見えている……!」って、完全に預言者扱い。


「同志昭夫、次は経済について語ってくれ!」


「えーと……これから高度経済成長が来るよ」


「な、なんだって!? それは本当か!?」


「いや、俺が言うのもなんだけど、たぶん本当」


「すごい……この男、未来を知っている……!」


「だからWikipediaだってば!」


俺の発言がどんどん神格化されていく。

「預言者昭夫」「革命の目」「未来の声」――なんか、どんどん中二病っぽくなってないか?


「同志、次はエネルギー政策について語ってくれ!」


「え、そこまで!? 俺、文系だよ!?」


「だが、未来を知る者ならば語れるはず!」


「いや、未来知識って言っても、俺、再生可能エネルギーの仕組みとか知らないから!」


「それでも語ってくれ!」


「……太陽光、すごいよ」


「おおおおおおお!!」


なんだこのノリ。昭和の学生、テンション高すぎる。


そのとき、玲子が現れた。官僚の娘で、冷静沈着なタイプ。俺とはまだ面識が浅い。


「あなたが……“預言者”ね」


「いや、違うから! ただの未来人だから!」


「未来人!?」


「……しまった」


完全に口が滑った。玲子の目が鋭くなる。


「あなた、何者?」


「えーと……転生者?」


「……なるほど。論理的には破綻しているけど、面白い仮説ね」


「仮説って言われた!」


玲子は俺をじっと見つめた。警戒してるのか、興味を持ってるのか、よくわからない。


「あなたの“未来知識”、少し検証させてもらうわ」


「え、テストされるの!?」


「当然よ。預言者を名乗るなら、証明してもらわないと」


「いや、名乗ってないから!」


こうして俺は、未来知識を証明する羽目になった。

昭和の学生たちの前で、Wikipedia記憶を頼りに語る俺。

そして、玲子の冷静なツッコミが炸裂する。


「その情報、出典は?」


「Wikipedia!」


「信頼性に欠けるわね」


「令和ではみんな使ってるんだよ!」


「令和って何よ」


「……未来」


「やっぱり未来人じゃない!」


こうして俺は、昭和の学生たちに「預言者」として崇められ、玲子には「危険人物」としてマークされることになった。


「……俺の昭和ライフ、ますます面倒くさくなってきたな」

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