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昭和が終わり、未来が始まる

「……昭和って、こんなに濃かったっけ?」


1975年の春。

俺は、東京の下町にある古びた喫茶店で、いつものブレンドを啜りながら、ぼんやりと空を見上げていた。

黒電話はまだ現役。テレビも健在。だけど、街の空気は、どこか変わっていた。


「同志昭夫、次の演説、準備できてるか?」

美咲が笑顔で駆け寄ってくる。赤ハチマキは、今や“平和の象徴”になっていた。

彼女の情熱は、革命を越えて、俺の心にまで届いていた。


「昭夫くん、次はラジオ出演だよ〜。恋愛相談コーナーもあるかも!」

真由がカメラ片手にニヤニヤしてる。スクープは、もう俺の日常だ。

彼女の好奇心は、いつしか俺への好意に変わっていた。


「あなた、そろそろ“思想家”としての自覚を持ちなさい」

玲子が資料を差し出す。ツンデレは、今日も安定運転。

彼女の論理は、俺の感情を揺さぶる不思議な力を持っていた。


「任務だから……と言い続けてきた。でも、今は違う。私は、あなたと未来を選びたい」

アナが静かに微笑む。スパイのデレは、破壊力が高すぎる。

彼女の沈黙の中に、確かな愛情があった。


俺は、未来知識を持つ転生者。

昭和に来て、学生運動に巻き込まれ、カリスマになり、世界を動かし――

そして、4人のヒロインに好意を寄せられている。


「……俺、誰を選べばいいんだ?」


選べない。

選びたくない。

でも、選ばなきゃいけない。


それが、恋ってやつらしい。


「同志、次の演説は“未来の選択”だ!」

「スクープ! “革命の星”、人生の岐路に立つかも!」

「あなた、少しは自覚しなさい。モテてるわよ」

「任務だから……でも、今だけは応援する」


俺は壇上に立つ。

目の前には、学生たち。

仲間たち。

そして、ヒロインたち。


「……俺の人生、なんでこうなった」


でも、後悔はない。

昭和という時代に転生して、俺は初めて“誰かに必要とされる”感覚を知った。

誰かを信じること。

誰かを好きになること。

それは、未来知識にも載っていない、俺だけの“革命”だった。


そして――


時は流れ、昭和が終わり、平成が始まり、令和へと続く。


俺は、年を重ねた。

かつての“革命の星”は、今や“昭和の語り部”として、若者たちに語りかける。


「昔な、黒電話ってのがあってな……」

「えー、マジっすか!? スマホないんすか!?」


「Wikipediaで読んだだけなんだけど」

「それ、今の俺らと変わんないじゃないすか!」


笑い声が響く。

昭和の記憶は、今も誰かの心に残っている。


そして、あの4人は――


美咲は、教育者として若者に情熱を伝えている。

玲子は、政策アドバイザーとして冷静に社会を支えている。

アナは、国際機関で平和のために働いている。

真由は、ジャーナリストとして世界を飛び回っている。


そして俺は――


「……まあ、せっかく転生したし。もうちょっと、この人生、楽しんでみるか」


昭和の空の下、仲間たちとともに。

そして、まだ見ぬ未来へ――

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