俺の人生、なんでこうなった
「同志昭夫、世界が赤く染まったぞ!」
「いや、それ俺のせいじゃないよね!? ……いや、ちょっとはあるかも!?」
1975年。
俺は今、国際青年フォーラムの閉会式に立っている。
“革命の星”として、世界中の若者に語りかけた俺。
未来知識を使って、昭和の学生運動をまとめ、政治家に助言し、国際問題に介入し――
気づけば、世界の社会制度が“静かに”変わっていた。
「……俺、ただの転生者だったはずなんだけど?」
美咲が拳を握りしめて言う。
「同志! あなたの言葉が、世界を変えたんだ! そして、私の心も!」
「それ、革命より重い!」
玲子は冷静に言った。
「あなたの論理は未熟。でも、発想は鋭かった。……だから、惹かれたのよ」
「それ、ツンデレの最終形態じゃない!?」
アナは静かに言った。
「任務だから……と言い続けてきた。でも、今は違う。私は、あなたと未来を選びたい」
「それ、完全に告白じゃん!」
真由はカメラを構えながら笑った。
「スクープ! “革命の星”、ついに恋の決着かも!」
「その見出し、俺の人生のまとめになってない!?」
俺は未来知識を持つ転生者。
昭和に来て、学生運動に巻き込まれ、カリスマになり、世界を動かし――
そして、4人のヒロインに好意を寄せられている。
「……俺、誰を選べばいいんだ?」
美咲は情熱で一直線。
玲子は論理でツンデレ。
アナは任務と恋の葛藤。
真由は好奇心からの急接近。
「……これ、選べるわけないだろ!」
そのとき、4人が同時に言った。
「昭夫、好きだ!」
「え、今!? 同時に!? しかも名前呼び!?」
俺は壇上で固まった。
世界を変えるより、恋の選択のほうが難しい。
Wikipediaにも載ってない。
未来知識も役に立たない。
「……俺の人生、なんでこうなった」
拍手が起こる。
歓声が上がる。
そして、俺は――笑った。
「まあ、せっかく転生したし。もうちょっと、この昭和ライフ、楽しんでみるか」
美咲が笑う。
玲子が目をそらす。
アナが静かに頷く。
真由がカメラを下ろす。
そして、俺は歩き出す。
未来を知る者として、昭和を生きる者として。
恋と革命の、その先へ。




