世界が赤く染まった日
「同志昭夫、世界が……動いている!」
「え、また!? 今度はどこ!? 宇宙とかじゃないよね!?」
1975年春。
俺は今、東大構内の中庭――ではなく、国際会議の場にいた。
いや、正確には“学生代表”として招かれた、国際青年フォーラム。
場所は東京。テーマは「未来の社会と平和の構築」。
そして俺は――なぜか基調講演を任されていた。
「……俺、ただの転生者なんだけど!?」
「同志の言葉には、世界を変える力がある!」
美咲が拳を握りしめて言う。いつもの赤ハチマキは、今日はスーツの上に巻かれている。
「革命は、国境を越えるんだ!」
「いや、越えすぎてるよ!?」
玲子は冷静に言った。
「あなたの提言、“静かなる共産化”は、各国の若者に影響を与えている。特に北欧と南米」
「それ、ちょっと怖いんだけど!?」
アナは静かに言った。
「任務だから、各国の反応は把握している。……あなたの言葉は、理想として受け入れられている」
「それ、任務超えてない!?」
真由はカメラ片手にニヤニヤしてる。
「スクープ! “革命の星”、ついに世界を赤く染めるかも!」
「その見出し、国連で怒られそう!」
俺は未来知識を持つ転生者。
Wikipediaで読んだだけの知識を元に、昭和の学生運動をまとめ、政治家に助言し、国際問題に口を出し――
気づけば、世界中の若者が俺の言葉に耳を傾けていた。
「……これ、もしかして、世界が“赤く染まる”って、比喩じゃなくなってきてない?」
壇上に立つ。
目の前には、各国の青年代表たち。
通訳を通じて、俺の言葉が世界に届く。
「皆さん。未来は、変えられます。
暴力ではなく、制度で。対立ではなく、対話で。
そして、格差のない社会は、夢ではありません」
拍手が起こる。
歓声が上がる。
そして――SNSもない時代なのに、なぜか“革命の星”の名前が世界に広がっていく。
「同志昭夫、あなたの提言、国際的に採択されたぞ!」
「え、マジで!? 俺、ただの転生者だよ!?」
「それでも、未来を知る者が、今を変えた!」
玲子が静かに言った。
「あなた、もう“預言者”じゃない。“思想家”よ」
「それ、ちょっと重い!」
アナは目を伏せながら言った。
「任務だから……でも、あなたの言葉に、私も動かされた」
真由はカメラを構えながら笑った。
「スクープ! “革命の星”、ついに世界を赤く染めた日!」
こうして俺は、未来知識を使って、世界に“静かな革命”を広げた。
それは、暴力ではなく制度で。思想ではなく、希望で。
そして――
「……俺の昭和ライフ、ついに世界を変えちゃったかも」




