告白未遂ラッシュ
「同志昭夫! 今日の演説は“恋愛と革命の両立”だ!」
「またそれ!? 昨日も“世界平和と恋愛”だったよね!?」
東大構内の中庭。俺は今日も“革命の星”として壇上に立っていた。
でも、今日の空気は――なんか、甘い。いや、酸っぱい? いや、重い?
「昭夫くん、今日のネクタイ、私が選んだんだよ〜」
真由がカメラ片手に俺の首元を指差す。
「え、いつの間に!? 俺、朝は美咲に渡されたやつだったはず――」
「同志! それは私が用意した“革命仕様”だ!」
美咲が拳を握りしめて叫ぶ。赤ハチマキがいつもよりキツめ。
「……なんか、俺の首元で戦争起きてない?」
玲子は資料を抱えながら、冷静に言った。
「ネクタイの選定は、外交的メッセージにもなる。私が添削した原稿に合わせるべきだったわ」
「え、原稿とネクタイって連動するの!?」
アナは喫茶店の隅から静かに言った。
「任務だから、服装の意味も分析している。あなたの“赤”は、ソ連的には好印象」
「それ、完全に政治利用じゃん!」
俺は未来知識を持つ転生者。
でも今、俺が直面しているのは――恋愛の嵐だった。
「昭夫くん、ちょっとだけ話したいことがあるんだけど……」
真由が俺の袖を引っ張る。目が、なんかキラキラしてる。
「え、今!? 演説前なんだけど!?」
「スクープ! “革命の星”、ついに告白されるかも!」
「自分でスクープすんな!」
美咲がそれを見て、ビラを握りしめながら叫ぶ。
「同志! 私も話がある! 革命の前に、心の整理を!」
「それ、完全に告白フラグじゃん!」
玲子はため息をつきながら、俺に資料を差し出す。
「……この資料、あなたに渡したかっただけ。別に、特別な意味はないけど」
「出た、“別に”!」
アナは静かに立ち上がる。
「任務だから、あなたに伝えたいことがある。……個人的に」
「それ、完全にデレじゃん!」
俺は壇上に立ちながら、ヒロインたちに囲まれていた。
美咲は情熱で、真由は好奇心で、玲子は論理で、アナは任務で――それぞれの“好き”が、俺に向かってくる。
「……これ、告白未遂ラッシュじゃない?」
「同志! 私の気持ちは、同志として――」
「昭夫くん、ちょっとだけ“好きかも”って思ってて――」
「あなたは……論理的には未熟。でも、面白い。……別に」
「任務だから……でも、あなたに惹かれている」
俺は恋愛に鈍感なはずだった。
でも、さすがにこれは気づく。
「……俺の昭和ライフ、恋の革命が始まってる気がする」




