外交官じゃないんだけど!?
「同志昭夫、外務省から連絡が来たぞ!」
「え、なんで!? 俺、学生だよ!? しかも転生者だよ!?」
東大構内の中庭。俺は今日も“革命の星”として演説を求められていた。
でも今日は、なんか空気が違う。
美咲がビラを配きながらソワソワしてるし、玲子は資料を抱えて真顔で歩いてる。
アナは喫茶店の隅で、いつも以上に真剣な顔でメモを取ってる。
「同志、外務省が“非公式に意見を聞きたい”って言ってる!」
「それ、俺がWikipediaで読んだだけの知識って知ってる!?」
「でも、キューバ危機もチリも、あなたの予言で動いた!」
「いや、予言じゃなくて、予習だから!」
玲子が静かに言った。
「外務省の若手が、あなたの話に興味を持ってる。国際情勢の先読みができる学生として」
「それ、完全に外交官扱いじゃん!」
「別に……あなたのためじゃない。国益のためよ」
「また“別に”!」
真由がカメラ片手にニヤニヤしてる。
「スクープ! “革命の星”、ついに外交デビューかも!」
「やめて! その見出し、国会に貼られそう!」
アナは静かに言った。
「任務だから、外務省の動きは把握している。あなたの情報は、確かに価値がある」
「それ、スパイ視点で言われると怖い!」
「でも……あなたが動くなら、私も動く」
「え、今のちょっとデレ入ってない!?」
「……任務だから」
「やっぱりか!」
そして俺は、外務省の若手官僚と“非公式懇談”という名の面談をすることになった。
場所は都内の喫茶店。昭和の外交、意外とカジュアル。
「武井さん、最近の国際情勢について、学生の視点からご意見を」
「えーと……ベトナム戦争は泥沼化するので、早期撤退が望ましいです」
「なるほど。根拠は?」
「Wikipediaです」
「……ウィキ、何ですか?」
「未来の百科事典です」
「未来……?」
「えーと、転生者なんです」
「……なるほど。面白い仮説ですね」
「また“仮説”って言われた!」
こうして俺は、外交官でもないのに国際情勢について語ることになった。
しかも、外務省の人たちが真剣にメモを取ってる。
俺の昭和ライフ、どこまで行くんだ。
「……俺、外交官じゃないんだけど!?」




